それじゃあ、さようなら。 | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

脚本・演出と、犬塚信乃役だった千野です。
『南総里見八犬伝の話が(さいごまで)したい!』、無事に終演しました。
そして、これをもって、『南総里見八犬伝』シリーズが全五作にて完結しました。

第1回は2018年(戌年)、ちょうどこの時期でした。
このときは『南総里見八犬伝の話が(ちょっとだけ)したい!』でしたが、正直なところ、シリーズ化して最後までやるかどうかは、まったく未定でした。
好評だったら続きもやろうかな、ぐらいで。
というか、そもそも、最後までやることが現実的に可能なのかどうかもわからずで。
とりあえず1回やってみよう!で始めたのだったと思います。
それが無事に完結までたどり着けました。
これはもう本当に、完全に、様々な形で支えてくださった皆様のおかげです。
すべての皆様に、心より御礼申し上げます。

今回、上演時間が2時間30分となってしまいました。
このシリーズはこれまでずっと2時間でやっていて、私も2時間を超えたくはなかったのですが……。
どうしても、これ以上削ることはできませんでした。
この30分は、物語を完結させるために必要な30分だったと思ってはいるのですが、まぁ、私のわがままです。
長時間の公演にお付き合いくださったことも、改めて御礼申し上げます。

そして、完結の瞬間ですが。
信乃が「さようなら」と言ってみんなの輪に戻っていくというラスト。
これはもう3回目の台本を書いている段階あたりで決まっていました。
そのころから「なんかもう想像しただけで泣いちゃうなぁ!!」なんて思っていたのですが、ずっと温めていたそのラストを、形にすることができて感無量です。

役者としては、ずっと信乃くんと向き合ってきたので、最後となるとさすがに寂しいものがありました。
いかにも主人公みたいなキャラしておいて、発言がちょいちょいズレてるところがいいですよね、彼。
(曳手さんたちの子供たちも作戦に連れて行こうって流れのところ「子供だけ残すのが可哀想だから」じゃなくて「子供だけ残したら怪しまれるから」って言ってるところとか、すごい好きです)
現八とのバディ感も、道節とのダンスも、なんだか全部楽しかったなぁ。
あと、兼役で久しぶりに稲戸さんをやれたのも感慨深かったです。全力でかっこよくしました。

普段あんまりこんなことを思わないんですが……このシリーズをやってよかったなって、素直に思っています。
まぁでも、大きな肩の荷が下りてしまったので、次に背負えるものをみつけないといけませんね。

それじゃあ、さようなら。

2023.11.24 千野裕子