脚本・演出と清原俊蔭役の千野です。
この度もたくさんのご声援と様々な形でのお力添えをありがとうございました。
劇団21年目、今回の題材は『うつほ物語』。
日本最古の長編物語でありながら、今年の共通テストに出題されながら、
一向に話題にならない、とびきり無名な作品を扱ってみました。
(ちなみに『宇津保物語』と表記する人がいますが平仮名でいいです)
実はさかのぼること17年、大学生活最後の公演を行ったときに、大学院の先輩に、
「次は『伊勢物語』かな?」
「で、その次は『うつほ』でしょ!」
と言われたことがあり(その時点では劇団を続けることも決まっていなかった)、
その後すぐに『伊勢物語』は『かすがの』として上演したのに、
そういえば『うつほ』はずーーーーーっとできていないんだよなぁ……、
というのが引っかかり続けていました。
あの時これを言った先輩はたぶんもう覚えてないでしょうけれど、ようやく実現できました。
17年。俊蔭が漂流していた23年には及びませんが、ずいぶんお待たせしたものです。
全20巻(角川ソフィア文庫で6冊分)の大長編。
全部はできないので、いわゆる「俊蔭系」だけをまとめてみました。
実はずっと、いつか『うつほ』をやるならば、
「蔵開」から始めてみたいなぁなんてぼんやり考えていたので、
そこを起点に「俊蔭」を回想に挟んで「楼の上」につなげていく構成というのはすんなり決まりました。
仲忠と俊蔭の〈孝/不孝〉の表裏一体感とか、俊蔭娘をヒロインに据えるとか、
嵯峨院を重要人物として置くとか、そのへんが今回のポイントだったと思うのですが、
近年の台本のなかではわりと苦戦せず書けたかなという体感です。
理由は明白。だって『うつほ』はしょっちゅう授業で学生たちに話してるからね!!
演出としては、ダンスが印象に残った方も多かったかなと思います。
琴を実際に役者が弾くのは至難、しかしフリだけじゃつまらない。
何かパフォーマンス的に……と思った結果、ああなりました。
とはいえちょっといろいろあって、ほとんど俊蔭娘役の正美くんに丸投げという形になってしまい、
役柄同様、大変な苦労をかけてしまいました……!
俊蔭娘が正美くんじゃなかったら不可能だった……本当に感謝です……。
役者としては俊蔭役。
『うつほ物語』をよく知っている人たちからは「千野が俊蔭?!」と驚かれましたが、
(あとなぜか「涼じゃないの?!」とも。なぜ?? ←そもそも涼は出てこなかった)
仲忠と俊蔭を対にして描く構成にしようと思った時点で、
久保田を仲忠で主演させて、私は俊蔭で見守り役みたいな位置にいることにしようと、
自分のなかではわりとはっきり決めて書いていました。
「前半は任せろ、後半は託した!」みたいな感じですね。
俊蔭は仲忠たちリアルチームと波斯国の不思議チーム(森羅万象の皆さん)の境界にいつつ、
作品世界と観客側の現実世界をつなぐ役回りでもあるので、
劇作をしている自分がやるのでちょうどよかったと思いますし、
我ながらなかなかいい橋渡しができたのではないかと思っています。
16歳から没年まで、生身から幽体まで、ほんのり演じ分けるのも楽しかったです!
(演出をやっていると、誰からも自分の役者としての感想をもらえないんで寂しいんですけど……私わりと良かったですよね??)
さてさて、次回は過去作の再演。
もしかしたら劇団内人気はNo.1なのでは?という『聖の帝』に改めて向き合ってみようと思います。
ってこれ書いてて気づいたんですが、私たぶん次回も天才美少年(しかも幽体)ですね??
まぁいいや。ここ最近は希望に向かうお話が多かったですからね、そろそろ……ふふふ。
ちょっと諸々未定ですが、楽しみに待っていてもらえればと思います。
また劇場でお会いしましょう。
2026.7.29 千野裕子