全てを抱えて | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

 吉田です。大変な時期が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。私は公演の収支をまとめています(笑)。

今回の公演も無事に終了しました。ありがとうございました。稽古から当日まで社会情勢に振り回された印象ですが、貴重な体験になりました。

 

 今回は、稽古の時点から、対面もそこそこに自宅からオンラインで読み合わせという形をとっていました。2ヵ月強くらいはこの状態だったと思います。一番大変だったのは電波状況です。稽古から派生した『堤中納言物語』の企画をご覧いただくとわかると思うのですが、自宅が田舎なもので、天候が荒れようものなら途切れ途切れになること数知れず…参加された役者の方々にはご迷惑をおかけしました。まだ全話撮り終えていないので、またご迷惑をかけるかもしれません(笑)

 稽古以外にも、製作では、公演日のギリギリまで劇場を使えるかどうかの目処が立たず、事前準備にも気を使いました。「もしかしたら無観客で配信だけになるかも?」とか「劇場内の安全対策どうしよう?」とか「窓がないけど換気どうしよう?」とか…稽古ごとに課題が次々と…最終的に取れる最善手を尽くしたつもりです。序盤中盤の菟道稚郎子は大王の見ている幻なので、自由に動き回って換気に行っても良いのです(笑)。いち早くこうしたことに気を揉まなくて済むような環境に戻ってほしいものです。

 

 さて、今回の役の方ですが、大山守王子は初演でも演じたので以前の感覚を思い出しながら…という感じです。基本的には弟達に怒り散らすだけなので(笑)。今回は大鷦鷯大王も演じましたので、自分以外の大山守王子も見る機会がありました。「自分の信じたいものしか信じられない」という象徴的な台詞のように、己の信じるものを貫く意思の強さの表現が見どころでしょうか。あと、やはりというかなんというか、対面すると怖かったです。

 大鷦鷯大王は、演じるうえで私は関わる皆を愛していたし、信じていました。その結果、なんだか大変なことになってしまいました。巻き込まれ系大王ですかね(笑)。結末は同じですが、回ごとの配役が違ったのでそれぞれの回で特徴のある内容になったと思います。印象的なのは、小松さんの雌鳥の回は大鷦鷯と隼別とで全然対応が違うので(元々憎まれているのもありますが)隼別にちょっとイラっとしたのと、最後のシーンですね。周りの自分に対する噂話が聞こえると虚無感に襲われるし、優しく寄り添ってくれる八田、傷つくのずっと見届けてくれる八田、と、色々な形の妻と向き合うのはどの回も辛かったです。 菟道稚郎子は、他の誰よりも愛していたと思うのですが、台本の光の反射の効果もあり、怖かった印象が強いかもしれません。大鷦鷯の行動は弟にトラウマを植え付けたのは明らかですが、兄の方もしっかり追い込まれていました。怖い兄弟ばかりでしたね(笑)。

 

 最後になりますが、今回、非常に大変な状況の中で公演を終えることができました。劇場を開いてくださり、用具についても協力いただいた新宿眼科画廊のスタッフの皆様、劇団外部のスタッフの皆様、公演に足を運んでくださった皆様、皆様の協力で無事に終えることができたのだと思います。感謝申し上げますとともに、引き続き体調の管理に留意していただき、今後の公演でもお会いできましたら幸いです。ありがとうございました。