いつも通りの感謝を | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

脚本&演出と出演も少々、の千野です。

おかげさまで無事に(!!)、終演いたしました。すべての皆様に感謝いたします。

 

まずは作演ということで。

台本に関しては初演時に語っているので、今回はまぁいいでしょう。

朗読劇にするにあたっていくつか台詞を足していますが、ほとんど初演時のままです。

で、演出的なところでいうと、台本を持ってる姿がカッコいいといいなぁというのと、作品のテーマが「残す」とか「記録」とかなので、現代的な小道具に置き換えると電子になるのかなぁということで、タブレットやスマホを使った朗読劇にしてみました。

電子台本にする、というのが先にあって、色をつけて照明のひとつにする、というのはその後で思いつきました。

「殺戮シーンどうすりゃいいんだ……あ、台本に血が飛べばよくない?」ぐらいの安易な発想です笑

というわけで思いついたのは私ですが、すべては見事にキレイな台本に仕上げてくれた小坪の手柄です。本当にありがとう。

こういうスタイルの公演もなかなか悪くないんじゃないかと思ったので、また何かの機会にやってみたいと思います。

 

配役シャッフルというのも朗読劇ならではの試みでしたが、演出としてもとても楽しかったです。

今回は団員のみの出演だったので、みんな他の役者の手の内がよーくわかってるせいで、役作りに関しては「あの人はこうするだろうから、自分はこうしよう」的な感じでやってくれていたようでした。

なんというか、うちの役者たち、そんないろんなこと考えて芝居してるんだね……!というのがわかって新鮮でした笑。

 

私自身は、20日午後に大鷦鷯、20日夜&21日昼に隼別、21日午後&夜に菟道稚郎子でした。

まずは大鷦鷯……どう考えても向いていない大鷦鷯。自分でもびっくりしているのですが、兄属性の役は初めてでした。

なにしろこれまでやってきた役といえば、在原の五男とか源氏の九郎とか今様狂いの四宮とか、圧倒的弟属性だったもので(あの光る人も、蛍宮とかの兄というより、朱雀院の弟の印象の方が強いし……)。

東くんのような兄感も、吉田さんのような聖性もない千野は、向いていないなら逆にということで、開き直って「聖の帝と呼ばれているだけで、本当はふさわしくない男」でいった次第です。

稚郎子役の小坪に「本当に怖い」と言ってもらえたおかげで方向性が決まりました。ありがとう(2回目)。

 

隼別は実は初演時にやりたかった役なので、念願かなって嬉しかったです。彼はとにかくカッコいいことが仕事。

久保田が好青年でくるので、こちらは得意の「いけすかない弟」をぶつけました。

20日夜は久実子雌鳥と本当に燃え上がりました……舞台上であんな激しい恋をしたのはいつ以来だろうか笑

21日昼の人美雌鳥に対してはもうちょっと理性的になっていて、「このままじゃ絶対マズい……あーもうダメだ」みたいな諦念が強かったかなぁ。悲しかったなぁ。あと20日夜版よりいけすかなさは控えめだったかもしれません。

 

菟道稚郎子は初演でもやっていた役とはいえ、この歳で今さら薄幸美少年ぶれるかちょっと心配でしたが、前髪おろしてあざとく頑張ってみました。

21日午後はもうオリジナルキャストの底力をみせつけてやろうっていう、それだけでしたね笑

しっかり理性飛ばしてぶっ壊れて、我ながらいい仕事したと思っていたのですが……配信を確認したら、マイクが私の声に耐え切れなかったのか音割れしまくってましたね。残念すぎる。

千秋楽は大山守が東さんだったので、オリジナルキャスト版より賢い子にしてしっかり戦ってみました。危険分子に見えていたらいいな。そのため壊れ方としては、賢すぎて考えなくていいことまで考えてしまったという、疑心暗鬼による自己崩壊でした。

 

……と、まぁ、そんな感じで。

 

今回、お客様をお迎えして公演できたのは、本当に運が良かっただけだと思います。

1週間早くても、1週間遅くても無理だったかもしれない。

(まぁ、わりと「何はともあれ、できるならやっちゃうもんね!!」的な劇団ではありますが笑)

それでも、中止や配信のみという選択肢も、たぶんありました。

けれど、この数か月(というか今も)、公演をしたくてもできない劇団さんはいっぱいあって、悔しい思いをしている演劇人がたくさんいて。

そんななかで、「ギリギリできる」という幸運に恵まれた以上は何が何でもやるべきというか、その幸運を自ら手放すのは不実すぎる気がしたんですよねぇ。

他のメンバーがどう思っていたかは分からないのですが、少なくとも、私はそういう気持ちでした。

 

あー……私、時事的なネタが本当に本当に大嫌いなので、こんなこと書くつもりじゃなかったんですけど笑

いや、だって、こういう時だからこそ、サラッと普通にやった方がカッコいいじゃん……。

でもまぁ、歴史に残るだろう、令和2年の6月に公演をやった思い出として、書き留めておきます。そういう話だったし。

 

さて、次回公演は12月27日、ちょっと信じられないくらいの年末ギリギリに、劇団15周年記念公演を行います。

去年、お客様に再演リクエスト投票で決めていただいた、『花にあらず―『松浦宮物語』より―』です。

私自身も大好きな作品なので、またお見せできることになって嬉しいです。

役者としては、稚郎子と対照的に、初演時はちょっと背伸びしてやっていた大人の役でした。

役の年齢にちょっとばかり追いついてきたところなので、大人の男の色気を見せるのが目標です笑

 

また、劇場で、お会いしましょう。

 

2020.07.05 千野裕子