(2022年のFBへの投稿 アメブロには未投稿だったので採録)
FB友達の佐京さんが
本日の夕飯として
「ほうとう」の写真を掲載された
この季節に見たんじゃ
暑さが倍増したように感じてつらいかもしれないけど
本日は涼しくて
湿度を除けば秋みたいな日なので
ことさらおいしそうに見えた
と・こ・ろ・で
「ほうとう」の語源ってなんだ?
言葉の響きからして
大和言葉語とは思えない
でもどんな漢字が当てはまるのか分からない
そこで例によって調べてみました
「餺飥」と書いて
古い中国語で麺のことだそうです
「餺飥」については
「突厥語由来の可能性がある」
との情報もあった
この説明の確度は
かなり高い
というのは
中国語では
だいたい漢代以降に中国に入って来た物の名称を示すのに
音訳語を使っている場合が多い
その場合
1語が複数の漢字でできていて
それぞれの漢字に分解しても意味が分からない
という特徴がある
さらに
植物関係だったら草かんむりを使い
食べ物関係だったら食へんを使って
それ以外の部分で音を表す場合が結構ある
「餺飥」はそんな特徴にピッタリ
「餺」を
学研大漢和字典で調べてみたら
音については「博」と同じ
「飥」の音は
「託」と同じ
てなことが書いている
さてさて
それだけでは「突厥語由来」とは言えないけど
小麦が中国に伝わった経路からして
中央アジアからやってきた言葉であることは
間違いないだろう
東南アジアあたりからやって来たということは
考えにくい
突厥というのはトルコ系民族
というか
突厥と言う語は現代中国語では
「トゥーヂュエ」と読むのだけど
古い中国語では
「トゥックド」みたいな読み方をする
この「トゥックド」とは
トルコを意味する「テュルク」に
トルコ系やモンゴル系諸語で用いられる
複数を示す語尾の「 -d 」をつけた
「テュルクド」の漢字表記という説が
有力
つまり突厥=トルコ人たち
そこで「トルコ語」で麺類を何というのか
自動翻訳で調べたら
「Makarna」と「マカロニ」との関連性に気になったけど
あまり手を広げすぎると収集がつかなくなるので
とりあえずはあきらめることにして
とにかく
「Makarna」は
「餺飥」とは関係なさそうだ
ところで
今普通に「トルコ語」と呼んでいる言葉は
トルコ共和国の標準語なんだけど
中央アジア
あるいは内陸アジアにはトルコ系言語が非常に広く分布している
それ以外にはモンゴル系諸語に分類される言葉が多い
モンゴル語とトルコ語も非常に近く
研究者によっては
モンゴル系諸語とトルコ語系諸語を
別々に分類するのはおかしい
と主張する人もいる
つまり
例えばウランバートルで話されている言葉を「モンゴル語」
イスタンブールで話されている言葉を「トルコ語」と言うなら
ウランバートルからイスタンブールまで移動すると
「ちょっとトルコ語っぽいモンゴル語」を使う民族に
遭遇することになって
さらに西に進むと
「もうちょっとトルコ語っぽいモンゴル語」を使う民族がいて
最後にイスタンブールにつけば
「完全なトルコ語を話す人々が住んでいる」
ということになる
イスタンブールからウランバートルに向かって進めば
それとは逆の状況になる
ということで
モンゴル系諸語とトルコ語系諸語は
二分されるというよりも
グラデがかったような状態で
東はよりモンゴル語っぽくて
西はよりトルコ語っぽい
という状況を重視すべき
という説です
それはさておき
中央アジアあるいは
内陸アジアでは
さらにややこしいことに
インド・ヨーロッパ系の言葉を使う人もいる
代表的なのはイラン人でペルシャ語を使う
それ以外にタジク語なんかもそうだ
それぞれの言語を系統分類するのは
文法構造による
ただ個別の単語は
自由に借用されることも多い
例えばモンゴル語では「本」のことを「ノム」という
これは「決まり」「掟」「習慣」「行動規範」などを表す
ギリシャ語の「ノモス」と同語源
モンゴル語で「本」の意味で「ノム」と言う言葉を使われ始めたのは
比較的新しくて
本来は「仏典」という意味だった
研究者が
モンゴル語「仏典」を表す「ノム」という言葉を調べて
ギリシャ語の「ノモス」と同じ
つまり
元は
インド・ヨーロッパ系の言語からの
借用語と分かったそうです
まあ仏典とは
仏教の考え方や
守らねばならない行いを説いたものだから
意味としても通じ合う
さてさて
同じトルコ系諸語でも
言語によって個別の言葉では
借用語を使っている場合も珍しくない
ということで
同じトルコ語系諸語でも
個別の単語はまるで別な音の語である場合がある
そこで
トルコ系諸語のなかで
やはり重要な
主にトルクメニスタンという国で使われているトルクメン語で
「麺」の事を何というか
調べてみた
「 pasto 」と書いていた
あれれれれ?
これってどう見ても
「パスタ」だ
「パスタ」っていうのは
イタリア語で小麦粉を水で練って作った食べ物の
総称だ
そこで急いで
パスタの語源を調べてみた
これは諸説あるみたいで
ギリシャ語からラテン語に入った語で
さらに古くは
インド・ヨーロッパ語族の
古い言語で使われていた語
という説もあれば
イタリア語が成立してから出来た言葉
という説もある
よく分からないけど
気になったのは
「餺飥」の音との関係
古い中国語では
「pak-tak」てな発音だったようだ
この場合の「k」は軽く発音したはず
とすれば
「pak-tak」と「餺飥」の音は
余りにも似ていないか?
「pak-tak」の元になった語は
インド・ヨーロッパ語族の語から
トルコ系諸語に入ったのかもしれないし
トルコ系諸語から「pak-tak」の元になった語が
インド・ヨーロッパ語族に入ったのかもしれないし
それは分からないけど
「ほうとう」と「パスタ」が同語源である可能性は
あるんじゃないか
ちなみに
奈良時代ぐらいまでの日本語は
「ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ」の音を
「pa・pi・pu・pe・po」
と発音していた
だから「ほうとう」も
現代日本語の表記を使えば
「ポート」
みたいな発音だったはず
ううむ
ううむ
ううむ
ひょっとしたら
「山梨の郷土料理のほうとう」というのは
要するに
「山梨の郷土料理のパスタ」ということと
同じなのかもしれない