【中国語・音楽用語の基礎知識】~「広板」、「板眼」など | 如月隼人のブログ

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というわけで例によって
昔学んだことを忘れないために
書いたりするわけです

日本で使う音楽用語の多くは
おおむねイタリア語をそのまま使います

あれ
いかがなものか?
と思うんですけどね

日本語じゃないから
いちいち意味を覚えなきゃいけない

今回は音楽の速度を示す用語をご紹介しようと思うのですけど
教科書によっては
1分間にどのぐらいの拍節数(ビートの数)かを
数字て書いていたりします

あれ
いかがなものか?
と思うんですけどね

速度を示す音楽用語って
単に速度を示すだけじゃなくて
雰囲気も表現しています

例えば
ゆっくりとしたテンポの
“ Adagio(アダージオ)と ”
もっとゆっくりとしたテンポの
“ Largo(ラルゴ) ”

“ Largo ”Largoとはイタリア語で「広々した」で
英語の“ Large ”と同系統の語です

だから“ Largo ”は単純に“ Adagio ”よりも遅いんじゃなくて
広々とした感じを念頭に演奏すべきだと思うのですが
どうでしょう
ま 実際には
曲によっていろいろと調整せにゃならんわけですけどね

さてさて
音楽の速度を示す代表的な語を
いくつかご紹介しましょう

まずイタリア語とその本来の意味
日本語の読み方
中国語を書きます
中国語の読み方については カナ表記も添えましょう
ただしカナ読みしても本来の発音とはかなりずれますけどね


Presto(「速く」、「素早く」)
プレスト
急板(ヂーバン)

Allegro(「楽しい」、「陽気な」)
アレグロ
快板(クァイバン)

Andante(「歩く」、「歩みに合わせて」)
アンダンテ
行板(シンバン)

Adagio
アダージョ(「ゆっくりと」、「穏やかに」)
慢板(マンバン)

Largo(「広々とした」、「広大な」)
ラルゴ
广板(グアンバン、広板)

どうでしょうか
中国人は西洋音楽を習う場合でも
とりあえずは丸暗記の必要はありません
漢字を見れば理解できます

まあ
専門的に学ぶならばイタリア語も知っておかねばならないでしょうけど
最初は自国語で理解できる

音楽を演奏する
あるいは歌うという行為は
専門用語を暗記する作業とは
本来ならば別のはずですからね

そんなところで引っかからせるよりも
演奏することや歌うことの楽しさや
練習をして上手になっていく嬉しさを味わってもらうことの方が
少なくとも最初の段階ではずっと大切

思うのですけど
どうでしょう

さてさて
音楽の速度を表す中国語を見ると
どれも
「×板」と書いていますよね

西洋の音楽用語を中国語訳する際には
別の訳語も登場したのですけど
この「×板」のタイプがとてもよく使われます

では「この板」とは何か
実はこれ
伝統音楽の用語です

中国の伝統音楽では
強いビートのことを「板(バン)」
弱いビートのことを「眼(イェン)」と言いました

この用語が最初に定着したのは
劇音楽の世界で
「板」と語を使うのは
強いビートの場所で
拍子木みたいなものを叩いたからみたいですね

でもって
弱いビートを示す語の
「眼」です
中国語の「眼」は
小さい物を示す場合があります
例えば碁盤の目なんかです
まあ
このあたりの語感は
日本語の「目」に似ているかもしれない
弱いビートを「眼」で表すのは
伝統的な楽譜の一種である「工尺譜」の書き方から取ったのかもしれません
「工尺譜」の書き方は音楽の種類なんかで
違ったりするのですけど

基本は漢字一文字で音の高さを表します
でもってリズムを併記するのに
漢字の横に「板」と「眼」を示す記号を書くのですけど
「板」の部分には「×」とか大きな「、」をつけます
「眼」の部分には「・」と書き
「眼」中でもちょっと強い場合には「。」と書いたりします

でもって
「・」という図形を示すのに
中国人の感覚では「眼」という言葉がしっくりくる
と言うわけです

ついでに言えば
曲が進んでいく際のリズムを表す場合には
「一板三眼(イーバン・サンイェン)」とか
「一板一眼(イーバン・イーイェン)」てな用語を使います

「一板三眼」とは要するに強いビートと弱いビートが
「×・・・」「×・・・」「×・・・」「×・・・」
と繰り返されるリズムで
洋楽風に言えば四拍子です

「一板一眼」だったら
「×・」「×・」「×・」「×・」
の繰り返しですから
二拍子です

ということで
中国語では西洋音楽で使う用語も
自国の伝統を利用して
意訳しているのでありました