中国語にしては珍しく「字義」をいい加減に扱った言葉かも | 如月隼人のブログ

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日本語も中国語も漢字を使っていますけど
単語に対する感覚はかなり違うと実感しています

1文字で成り立つ単語もありますけど
複数の漢字を使う単語もたくさんあります
というか文字を組み合わせるのだから
複数の漢字を使う単語の方がたくさん作れる


日本語を母語にする人と中国語を母語する人で
どんな感覚が違うかと言えば
その単語を構成する漢字の字義をどれだけ意識するか
日本はどちらかと言えば単語全体の雰囲気で理解する
中国人の場合には字義にこだわる感覚が強い

例えば日本語だったら
「知る人ぞ知る名店」なんて表現が成立する
「知る人ぞ知る」の部分は「知っている人だけが知っている」で
要するに
「知っている人はそれほど多くない」
ことの表現ですね

それはよいとして
問題になるのは「名店」の部分

中国人だったら「名店」というのは「名がある店」
「名がある店」とは「その名が広く知られている店」
なのだから
「知っている人がそれほど多くない、名が広く知られている店」
という表現は矛盾する
と考える
だから
そのような表現はおかしい
と考えるそうです
だったら日本語の「知る人ぞ知る名店」はどう翻訳するのか

例えば「内行的秘店」てな表現が考えられるそうです
「内行」は「玄人」ということですけど
「情報通」てな意味にも使える
「内行的秘店」は要するに
「情報通だけが知っている秘密の店」
ということで
その店のレベルについては直接言及していませんけど
「情報通ならば知っている」
ということでその店のレベルが高いことは推測できるし
「秘密の店」ということは情報に疎い人は知らない店
ということなので
日本語の「知る人ぞ知る名店」に近い表現になるそうです

いかん
また遠回りしてしまった

そんな中国語でも
「字義」をちょいといい加減に扱っているのではないか
と思える例がありました
「引力」と言う言葉です
中国の「引力」に相当する日本語は「重力」です

実は日本語の「重力」もちょっとあいまいな使い方をしていて
地上における「重力」だったら「地上の物体が地球の中心に引っ張られる力」で
例えば地球の自転による遠心力の影響も含めて「重力」と言います

宇宙空間の「太陽と水星の間に働く重力」だったら
「太陽と水星の両方が質量を持つことにより発生する引き合う力」で
要するに「万有引力」のことです

さてさて
日本語で「重力」と言うのは
物体と物体が引き合う力とは
例えば静電気力でも発生するので
「引力」という言葉は字義からして厳密でないと考えるからです
物理学で「質量」を「重さ」と安直に言い換えるのは問題があるんですけど
一応「質量」を示すのに「重」の文字を使って
質量(=重)によって発生した力なのだから「重力」と言うわけです

「万有引力」という言葉ですけど
例えば物体は静電気を帯びていない場合もありますけど
質量は必ずある
だからどんな物体間にも発生する「引力」
ということで「万有引力」と言うわけです

ちなみに「重力」に相当する英語は
“ gravitation ”あるいは“ gravity ”で
「万有引力」は
“ universal gravitation ”です

実は“ universal ”の部分にはさらに本質的に重要な意味があるのですけど
例によってやたら長くなるので今回は割愛します

でもって
“ gravitation ”あるいは“ gravity ”の語源はラテン語の“ gravitas ”に由来するそうで
このラテン語は「重さ」や「重要性」を示すそうで
ということは日本語の「重力」は英語の発想と同じであることになります

さてさて
中国語ではどうして「引力」なんて言葉にしたのか
確証はないのですけど
中国語のもう一つの特徴の「略語連発」なのかもしれない
「万有引力」を略して「引力」としてしまった
それ以外の理由はちょいと思いつかないなあ