中国史の本に面白いことが書いていた…「太平天国の乱」の真の原因 | 如月隼人のブログ

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宮崎市定(1901-1995年)という東洋史研究者が書いた
「中国史」という本を読んでいる

かなり古い本で
私が手にしている岩波文庫版は2015年の出版だけど
最初の版は1970年代に出たんじゃないかな

ということで
学説として現在も通用するかどうかは分からないのだけど
ずいぶん面白いことを書いている

例えば中国史で繰り返され
一つの王朝の「命取り」にしばしばなった
「農民蜂起」

中国では中華人民共和国の成立以来
虐げられた農民が立ち上がった革命的な出来事
と評価されてきたのだけど

宮崎市定は
農民の主体性を過度に評価するのはおかしい
と主張する

宮崎が重視するのは
運送業者や密売人

農民は自分が居住する地域の外とは
連絡の手段もないし
居住地域外の知識もないし
居住地域外に乗り出そうという発想も乏しい

だから
農民が主体になって大規模な反乱を起こす事は
まず考えられないそうだ

運送業者や密売人なら
他地域の同業者なんかとパイプがあって
情報収集がしやすく
情勢判断もしやすい

宮崎市定によると
太平天国の乱の直接のきっかけは
1840年に始まったアヘン戦争を終結させるため
清が英国と結んだ南京条約

この条約は香港島の英国への割譲を決めたことで有名だが
香港島の割譲が清に大きな影響を与えたわけではない
本当に大きかったのは
上海の開港

清はそれまで広州だけを開港して
西洋列強
特に英国と貿易をしていた

英国の主力商品はもちろんアヘン
アヘンは広州で陸揚げされて
中国各地に運ばれていった

英国としては
広州よりかなり北にある上海まで船で運んだ方が
利益が大きい

当時の中国はアヘンについては妙な状況で
アヘン戦争以前からアヘンを輸入していて
アヘン戦争に敗北したのでアヘンの輸入をとめることは
なおさら出来なくなったのだけど
国内の自国民に対しては
アヘンを禁止していた

つまり中国国内でのアヘンの流通は「密売」ということになる
そして密売ルートがしっかりと成立していた

南京条約が成立したために
英国がアヘンを上海まで運ぶようになったので
上海以南の密売業者は
儲けが激減した

アヘンを運んでいた労働者の
大量失業も発生した
そのために発生した暴動反乱が
太平天国の乱

ちなみに
太平天国のリーダーは
キリスト教の教義についての知識があった洪秀全という人物とされるけど
真の中心人物は楊秀清という人物

楊秀清は実は
アヘンの密売人だった
密売人は自分ではアヘンは吸わない
楊秀清も吸わなかった

ところが洪秀全はアヘン中毒になったそうだ
洪秀全は科挙の試験に失敗して
高熱を出して40日間も床に伏した際に
不思議な夢を見て
自分はイエスの弟であり
神の次男だ
と信じるようになったのだが

宮崎市定は
アヘンを吸った際に見た
幻影との見方をしている

画像は1860年頃に描かれたとされる洪秀全の肖像画