ふうん、こういう作品があったのか~米国オペラ「中国のニクソン」 | 如月隼人のブログ

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こりゃあ知らなかった
米国人作曲家のジョン・クーリッジ・アダムズの作品
オペラ「Nixon in China(中国のニクソン)」
↓ Youtube
Ópera- Nixon in China (John Adams)


ニクソン米国大統領の1972年の中国訪問を題材にした作品で
初演は1987年

まず面白かったのは
「声の配役」

この作業はオペラを書く際の最初の設定なんだけど
それぞれの登場人物に適した性格の声を割り振っていく

「Nixon in China」では
リチャード・ニクソンに「バリトン」
その妻のパット・ニクソンには「ソプラノ」
周恩来には「バリトン」を割り当てた

このあたりまでは分かりやすい

ところが毛沢東は「テナー」
「毛沢東役が高い声?」
と疑問に思うかもしれないけど
テナーはテナーでも「ヘルデン・テナー」という声質を割り振った
つまり「英雄のテナー」
伝統的なオペラで「英雄」を演じるために
いろいろと工夫されてきた声
もちろん「ヘルデン・テナー」の歌手は
英雄を演じる訓練をしっかりとしている

やっぱ「毛沢東は英雄だ」という視点で書かれているわけだ

それから
毛沢東の妻の江青に「コロラトゥーラ・ソプラノ」を割り振っている
「コロラトゥーラ・ソプラノ」というのは
高音を転がすような歌い方が特徴で
「感情(だけに)に突き動かされる女性」
なんかを演じるのにも適しているとされる
代表例がモーツァルトの「魔笛」に登場する夜の女王

リンク先の動画をざっと聴いたのだけど
江青がヒステリックに怒りを爆発させるところで
「コロラトゥーラ」の技巧を使うように書いている

それからバックの踊りでは
毛沢東が訪中中に鑑賞した
革命バレエの「紅色娘子軍」なんかの動きも使っている
要するに当時の雰囲気を出そうとしている

ニクソン一行が毛沢東に面会するシーンなんかでは
当時の会談記録をほぼ忠実に再現しているそうだ


現代作品なんだけど
20世紀以降の作品によくある
「奇抜な音響」は用いていない

作曲する上で
いろいろと斬新な方法は使っているけど
いわゆるクラシック音楽にある程度なじんでいる人なら
普通に聴ける

一方で「とっても美しくて胸を打つメロディ」もないなあ
そういうメロディをかけなかったというよりも
歌に乗せて物語を自然に進めていくことに主眼を置いたのだろう

米国生まれのジャズなんかを多用しているわけじゃないけど
ビッグバンドなんかをちょっとだけ取り入れている
その他にも
音楽を細かく使い分けて
けれども
その部分だけが目立たないように曲を書いているようだ

この作品は初演の当初は賛否両論があり
「こんな作品はすぐに消える」との酷評あったそうだ

でも
それ以降もたびたび上演されて
評価は高まっているそうだ
観衆が普通に馴染める音楽の世界に浸りきるようにして
物語に没入してもらう
という目的はきっちりと果たしている
というころかな

写真はリンク先の動画で
ニクソン、キッシンジャー、毛沢東、周恩来、江青を演じた歌手
まあ
どの歌手がだれを演じたかは分かると思うので
省略