1917年
四川省・綿虒鎮
米国人シドニー・ギャンブル(1890-1968年)撮影
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撮影場所は現在の行政区画では
四川省アバ・チベット族チャン族自治州汶川県綿虒鎮高店村
画面からは分からないが崩れかけた塔の近くには道が通っていて
かつては飛沙関という関所があった。
言い伝えによると
唐代の絶世の美女として有名な楊貴妃(719-756年)が都に上る際に
この地で宿泊した
すでに夜で
月が周囲を煌々と照らし、夜空一面に星が輝いていた
花の香りも漂っていた
楊貴妃は体を清めたく思い
夜なので覗かれることもないだろうと思い
谷を流れる岷江で水浴びをした
ところが楊貴妃は自分の水浴び姿を見ている者がいるのに気づき
怒って砂をつかんで投げつけた
それ以来
この地では空気が澄んで月が美しく見えることはなくなり
猛烈な風に吹き飛ばされた砂が
人々の体に叩きつけられるようになった……
写真の塔は峠の上に立てられた
「聖母祠」と呼ばれる建物に付属して建てられ
双鎮塔と呼ばれていた
しかしギャンブルが撮影した時期には
破損がかなり進行していた
そして文化大革命期に破壊されて
現在では礎石部分しか残っていない
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ギャンブルはまだ10代だった1908年に両親と共に中国旅行をした
その後、1917年から1932年にかけて
キリスト教団体の幹部として中国に3回行き
長期滞在をして中国社会や家庭を調査した