1917年
四川省・汶川瓦寺土司官寨
米国人シドニー・ギャンブル(1890-1968年)撮影
撮影場所は現在
行政区分としてはアバチベット族チャン族自治州汶川県綿虒鎮
「土司」とは清代まで存在した、非漢族民族を統治するために設けた地方官の役職名
中国では科挙制度により、中央王朝の直接支配地では官職の世襲制が消滅し
地方の責任者として中央から派遣される役人らも
自分の出身地に赴任することはなくなった
(出身地方の地元勢力との癒着を警戒した)
たが
周辺民族地域では土着の首領の立場を認め、世襲制も許した
つまり
中央の宮廷は直接支配ではなく間接支配にとどめることで
周辺民族地域の安定を図った
「土司」が置かれたのは主に中国南部の湖南、四川、雲南、貴州、広西
清代になると中国の「版図」はそれ以上に広がったが
モンゴル、新疆、チベットなどでは「土司」もおかず
各地のさらに伝統的な統治システムを存続させた
清代には「土司」を廃止して中央から科挙官僚を派遣する
「改土帰流」が進められた
「土司」の廃止は地元有力者から世襲制の権利を奪い取るので
反乱も発生した
汶川瓦寺土司官寨は明代に設けられた
官寨とは土司の勤務場所である公署と
関係者の住居などで構成される場所
「土司」は軍事力による治安維持を任務としたので
周囲には防御のための壁が築かれた
土司官寨内で撮影されたとすれば
一般庶民より地位が高かった女性の可能性があるが
撮影当時の漢族女性には多かったはずの纏足をした
形跡は見られない
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ギャンブルはまだ10代だった1908年に両親と共に中国旅行をした
そのご1917年から1932年にかけて
キリスト教団体の幹部として中国に3回行き
長期滞在をして中国社会や家庭を調査した