中国SNSで削除事例を紹介、中台問題や熊本地震がらみも=香港大研究センター | 如月隼人のブログ

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香港大学新聞及伝媒体研究中心(報道とメディア研究センター)はこのほど、中国の代表的SNSである新浪微博(シンラン・ウェイボー)にで2016年に「最も広またが削除されてしまった国際事件の書き込みリスト」10件を発表した。同センターはでフォロワー数が1000以上、または書き込みがしばしば削除されるアカウントを選び、削除状況を観測しつづけている。


「リスト」作成にあたっては、転載(リツイート)が多く、かつ削除された書き込み100件を選び、さらに10件を選んだ。以下の( )内は投稿されてから削除されるまでの時間とリツイート数。

★第1位 パナマ文書(4時間53分、5万2361)
同文書問題では、オフショア金融センターを利用して租税回避行為をしていた法人や関係者氏名が流出した。中国の習近平国家主席を含む各国の政治指導者の名もあったとされる。新浪微博の書き込みはいずれも中国の政治家の具体名を挙げていなかったが、削除された。
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★第2位 杭州G20での厳戒態勢(3時間15分、3万4444)
9月初旬に浙江省杭州で開催されたG20サミットの警戒があまりに厳重で、地下鉄乗車の際に髪の毛の中まで検査するまでした。多くのネット民が、政府は自らのイメージをよくするために市民生活を犠牲にしていると批判した。
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★第3位 テレビドラマ「小龍人」(1時間36分、9309回)
伝説風物語のドラマで、主人公の少年の顔が王毅外交部長(外相)にそっくりと話題になった。 -----------------------
★第4位 ロシア・プーチンン大統領とインド・モディ首相の握手(5時間5分、2万5528)
モディ首相があまりにも力を込めたので、プーチンン大統領が笑顔を維持しつつも痛がっているとした。
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第5位 フィリピンで南シナ海問題めぐり対中抗議行動(5時間40分、2万8383)
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第6位 北朝鮮の金正恩氏を「金3代目の豚」などと揶揄(7時間23分、2万2544回)
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第7位 新浪の会員登録で台湾が外国扱い(14時間11分、2万6166)
「香港(中国)」、「マカオ(中国)」となっているのに対し、台湾の場合には(中国)の部分がないと指摘。
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第8位 熊本地震の祝賀セールを行った商店を紹介(5時間16分、9051)
同商店に対しては、ネット民の間で強い非難が発生した。
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第9位 フェイスブックで「光復大陸」の路線が登場(11時間55分、2万339)
「光復大陸」とは、かつて国民党が唱えた大陸反攻を指す。台湾から広州、厦門(アモイ)、福州、さらに上海、煙台(山東省)、天津にまず上陸とした。
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第10位 台湾人は自らを中国人でなく台湾人と認識(13時間47分、2万2071)
フェイスブックでの台湾人の書き込みを紹介。「何者も個人の帰属意識の選択の自由を侵犯することはできない」、「私は、台湾人だ」などの内容。
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◆解説◆
削除の理由をそれぞれ考えてみると興味深い。パナマ文書については、中国当局が極めて神経質になっていることが分かる。杭州G20でも、当局批判を広めたくないとの意図が伝わる。

政治家についての話題が削除された背景には、中国当局が政府関係者を風刺したり茶化すことが認めていないことがある。全国人民代表大会は2002年、侮辱・誹謗罪(刑法246条)について、通常は親告罪の扱いだが「外交使節を侮辱・誹謗して政治面に悪影響が出た場合」、「国家の指導者を誹謗して悪影響が出た場合」には、告訴がなくても検察は起訴するとの考えを示した。


王毅外相やプーチン大統領、金正恩氏の話題は、自国や外国の政治家を茶化す内容と判断されたと考えられる。特に王毅外相の話題では、自国政治家の権威が揺らぐことを極端に警戒していることがうかがえる。


フィリピンでの対中抗議活動についての投稿は、米CNNからの転載としてデモに参加した1人が「中国南海は中国に属さない」と中国語と英語で掲げたプラカードを示す写真を掲載し、「とてもユーモア感がある」と紹介。ただ、南シナ海を「自国のもの」と声高に主張する中国政府が国外からは「笑いもの」になっているとの情報は、当局にとって容認しがたいのだろう。


熊本地震については、他国の不幸を商売のために利用する「民度の低さ」を示す情報を封印したかったようだ。


選ばれた10件のうち3件は台湾絡みの情報だった。中国は一貫して「中華人民共和国政府だけが中国の正統政府なのであり、台湾は中国の一部」と主張してきた。当局が主張するだけでなく、同主張は国民全体に根づいていると言ってよい。中国にとって最重要の政治問題であるだけに、国民の間で「ひとつの中国」に対する疑念が生じすれば、共産党の権威が大きく損なわれることになる。それだけに当局は、台湾問題についての書き込みに殊の外神経質になっていると理解できる。


なお、「新浪網が台湾を外国扱いしている」との書き込みは、新浪微博を運営する新浪が削除した可能性もある。(編集担当:如月隼人)

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