「中国人」さんからの「またも嘘つき」とのコメントに対する反論 | 如月隼人のブログ

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4月30日に掲載した「台湾が日本に反発強める、中国も同調して日本批判・・・沖ノ鳥島海域で台湾漁船を拿捕(http://ameblo.jp/kisaragisearchina/entry-12155431769.html)」に対して本日(5月4日)午後5時46分、「中国人」さんからコメントをいただきました。私の記述に対する批判でした。「コメント返し」という形で反論してもよいのですが、私が記事を掲載してから、数日が経過してしまいました。

 

ということで、新たにページを立ち上げて反論することにします。まず、「中国人」さんのコメントを再録します。

 

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■またも嘘つき
国連の委員会が日本の大陸棚は沖ノ鳥島が基点という日本の主張を退けたのが事実でしょう。
日本人の解読力の問題で一時自国の主張が認められたと誤認して、笑い話になったのだが、未だにそんな話が?
国連のページーをちゃんと読んだら?後悔してる
誰かと思ったら、爆友会の会長じゃないか。
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そうですねえ。取りつくろっても仕方ないので正直に書いちゃいますが、いきなり「またも嘘つき」と書かれて、かなり「ムカッと」した。ただ、私の記述に間違いがあるなら、「中国人」さんに感謝して、訂正せねばならない。

 

ということで、最も重要と思われる国連の大陸棚限界委員会の発表を読んでみました。「中国人」さんも指摘するように問題は、「日本人の解読力の問題」でした(読解力かな?)。私はとにかく、英語がほとんどできぬ。翻訳ソフトの助けなどを借りて、何とか理解しました。

 

そうそう、背景をご説明しておきます。まず「領海」と「排他的経済水域(EEZ)について。まず「領海」とは基線(つまり自国領土の海岸)から12海里(約22キロメートル)までの海域で、領土と同じに主権を完全に行使できます。

 

EEZは基線から200海里(約370キロメートル)までの海域で、天然資源及び自然エネルギーに関する「主権的権利」、並びに人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋科学調査に関する「管轄権」がおよぶ水域のことを指す。簡単に言えば、他国がこれらの権利を侵害した場合、自国の法律を適用して取り締まれるということです。

 

そしてEEZについては、基線から200海里以上の海域についても、自国の陸地から「大陸棚の自然な延長」と認められるならば、350海里までについては権利、つまり「EEZの設定」が認められることになっています。

 

国連大陸棚委員会は、この「大陸棚の延長」を判定する職能を与えられています。ということで、「中国人さん」の主張にある「国連の委員会が日本の大陸棚は沖ノ鳥島が基点という日本の主張を退けたのが事実」の部分を判断するには、同委員会の声明を読まねばならぬ。ありました。

 

http://www.un.org/Depts/los/clcs_new/submissions_files/jpn08/com_sumrec_jpn_fin.pdf

 

です。

 

問題は2008年11月にさかのぼります。日本政府は南鳥島海域、小笠原海台海域、茂木海山海域、南硫黄島海域、沖大東海嶺南方海域、四国海盆海域及び九州・パラオ海嶺南部海域の7海域について国連大陸棚委員会に対し、大陸棚の延長(つまりEEZの拡大)を求める申請をしました。

 

7海域のうち、沖ノ鳥島を基線に含めているのは九州・パラオ海嶺南部海域(KPR)と四国海盆海域(SKB)でした。

 

国連大陸棚委員会の声明文は62ページに渡る長大なものですが、両海域についての結論部分を抜き出すと以下の通りです。

 

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●5頁 第20項(九州・パラオ海嶺南部海域 について)
 The Commission considered whether it shall take action on the part of the recommendation prepared by the Subcommission in relation to the Southern Kyushu-Palau Ridge Region (KPR) and decided not to do so. The Commission considers that it will not be in a position to take action to make recommendations on the Southern Kyushu-Palau Ridge Region (KPR) until such time as the matters referred to in the notes verbales have been resolved.

「委員会は(日本による)申請文書のうち、九州・パラオ海嶺南部海域(KPR)に関連する部分について、行動をおこすかどうか考慮し、行動はしないことに決定した。委員会はこのKPRについて、口上書が言及している事項が解決する時までは、勧告のための行動を取る立場にはないと判断した」

 

●26頁 第160項( 四国海盆海域 について)
The outer edge of the continental margin as generated from the foot of the continental slope of these continental margin segments by applying the provisions of article 76, paragraph 4, extends beyond the 200 M limits of Japan. On this basis, the Commission recognises the entitlement of Japan to establish continental shelf beyond its 200 M limits in this region .

この大陸縁辺の外縁は、前記の大陸縁辺区分の大陸斜面の麓から生成されており、(国連海洋法)第76条第4項の規定を適用すれば、日本からの200 海里の限界を超えて伸びている。委員会はこのことにより、この海域において日本には、200海里の限界を超えて大陸棚を設定する資格があると認識する。
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私にとって苦手科目である英文で、しかも長文であるので見落としがある可能性はありますが、「沖ノ鳥島が基点であるという日本の主張を退けた」に該当する部分は見当たりません。委員会声明文のその他の部分にも、該当する箇所は――少なくとも、私の貧弱な英語力では――見つけられなかった。

 

ただし、同声明文は、中国と韓国から「沖ノ鳥島を島とする法的根拠がない」との申し立てがあったことは、明記しています。「口上書」とは中韓によるこの「異議申し立て」であると理解できます。

 

ところで、多くの日本人読者にブーイングを浴びる可能性は覚悟して書くのですが、私個人としては沖ノ島が島として認められるかどうかは、かなり微妙とは思っています。ただ、日本の政府当局が自国の国益のために、沖ノ鳥島が島であると主張し、島である条件が喪失しないよう、浸食防止の手段を講じるのは当然と考えます。

 

ついでながら、私が4月30日付の記事で、中国と台湾の馬英九総統を批判した点を要約すると、以下のようになります。

 

1 中国政府に対して
日本政府は沖ノ鳥島について、浸食防止など「島として認められる条件」を失わないような努力をしているが、人工的な埋め立てをして「領土」と主張するような、国際的ルールをないがしろにする行為はしていない。中国は他国と権利問題で対立する岩礁を埋め立てて「自国領」と主張している。これは二枚舌の行為ではないか。

 

2 馬英九総統に対して
中国が沖ノ鳥島を「島ではない」と主張している背景には、太平洋における米国との軍事バランスの問題があるとされる。「沖ノ鳥島は島ではない。したがって日本は周辺海域に権利を行使することはできない」と主張するのは、台湾の“国益”と矛盾するのではないか。

ということです。

 

この2点については、「私の判断」が多分に含まれるのですが、「中国人」さんには、それも含めて「嘘つき」と主張するなら、その根拠もご教示いただきたいところです。(編集担当:如月隼人)