ふたつの物語 | 鉄道きさらんど

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いつも列車・バスなど公共交通の事ばっか考えてます。

「〇〇物語」的なタイトルの文庫本を2冊読んだ。

種村直樹『東京ステーションホテル物語』(集英社文庫)99年初版の本が増刷れたので買った。ステーションホテルだけでなく、東京駅をはじめとした東京の鉄道網発展の歴史にまで視野を広げてその長い歴史を語ったもの。このホテルを愛した昭和の文豪たちやかつての従業員の懐かしい昔ばなしだけではなく、平成に入ってからのJR東日本での東京駅駅舎の保存の機運はどう生まれたか、北陸新幹線の工事でのホテルへの影響など近年の話題にも触れており、種村氏が今もご健在なら復原なった東京駅赤レンガ駅舎とホテルをどう書くのだろうか、と思わずにはいられなかった。

徳田耕一『名古屋駅物語』(交通新聞社新書) 名古屋駅開業130周年イヤーに満を持して刊行された本。徳田氏は学者やジャーナリストではないが、ファンとして精力的に「名古屋の電車」にまつわる写真や資料を蓄積しまくってきたのが強みであって、それをいかんなく発揮したことや名古屋駅と名古屋の鉄道を長年愛していることが伝わってくる一冊。官鉄・国鉄・JRだけでなく私鉄・交通局などの話題も幅広く網羅しているので新書としてはかなり内容が濃い。徳さんの私的なエピソードもいっぱいで、コラムでは鉄道や名駅だけでなく周辺の話題、戦後の「駅裏」はバラック街だったこと、(p146p)今のピアゴ中村店(桜通線で名駅から一駅隣の中村区役所駅近く)付近に遊郭があったこと(148p)なども紹介しており名古屋駅周辺の町並みを懐古できる、私たち名古屋人には読み応え十分だろう。ただ、徳田氏が80年に結婚した記念に仕立てた団臨「ウエディングとれいんことぶき号」(新名古屋→岩倉間を7700系で運行)の話(204p)はさすがに蛇足。筆者は16年前の『名鉄パノラマカー』(JTBキャンブックス)で初めて知ったが、徳さんの著書で何度も自慢話のように取り上げられていてちょっと食傷気味だ。ちなみにこの列車には種村氏も宮脇俊三氏等と一緒に乗っていたようで…。(余談だがなぜ岩倉どまりか、というと新婚旅行にで海外に飛ぶためには当時は岩倉から名古屋空港へアクセスするためで、中部空港が生まれたころからある世代にはこのことから説明しないといけない時代がきそうだなと思った。)