【本】『不実在探偵の推理』を読むと水平思考したくなる | ミステリな日常。

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 先日『不実在探偵の推理』(井上悠宇)を読んだ。

 「不実在探偵」と書いて「アリス・シュレディンガー」と読む。

 大学生の菊理現にだけ見える名探偵。

 彼にしか見えないということは、実在しないということだ。

 実在しない上に、喋ってもくれない。

 どうやって事件を推理していくのだろう。

 あらすじは公式サイトから引用。

 

 「彼女は実在してる。存在が不確かなだけで、ずっと僕の傍にいるんだ」
 大学生の菊理現(くくり・うつつ)が思い出のダイスに触れた途端、長い黒髪に白いワンピースの美しい女性が見えるようになった。
 現にしか見えない彼女はしかし、ずば抜けた推理力を持つ名探偵。
 藍の花を握りしめて死んだ女性、宗教施設で血を流す大きな眼球のオブジェ。
 二人に降りかかるすべての謎は解けている。
 あとは、言葉を持たない「不実在探偵の推理」を推理するだけ。
 水平思考を巡らせて、「はい」か「いいえ」の答えで真実にたどり着け。
 

 という、まさかの水平思考。

「はい」「いいえ」「わからない」「関係ない」の四パターンしか答えてくれないアリスから、正解を導いていかなくてはならない。

 物語は刑事の百鬼(なきり)、烏丸の二人が事件に遭遇し、百鬼の甥で大学生の現に相談に行くという流れ。

 最初、名探偵が何者か知らない烏丸が「その人物は大学の准教授で天才物理学者とか?」なんて質問をしていて思わず笑った。

 わかる。

 名探偵に会いに大学に行くって聞くと、そう尋ねたくなるよね。

 しかもその後、四パターンでの推理という説明を受け「はいはい。そういうタイプの名探偵ね?」と「名探偵のマンネリ回避」で納得していて、納得するの早いな!と突っ込みたくなった。

 烏丸さん、好き。

 

 そんな感じで謎は解けるけど、推理は周りの人がしていくというちょっと変わったミステリだった。

 途中でアリスってもしかして……なんて考えていたけれど、見事にはずした。

 読みながら、私だったらこういう質問を投げかけるのにと何度思ったことか。

 アリスの謎は残ったままなので、続編あるのかな。

 ちなみに、装画は遠田志保さん。

 遠田さんが装画をされているミステリって、私が読んだ中には、はずれなし。

 まさか遠田さんが名探偵では(誤