7月1日(日曜)~7月7日(土曜)の週は、9本の劇場映画を観ました。6月公開の映画作品は、週末が5回あったこともあって、とても多く100本近くに登りました。先週観た作品は結構秀作でした。

 

・ルイ14世の死(仏・葡・西) ⇒1975年スペイン・カタルーニャ州生まれのアルベルト・セラ監督(兼脚本)が「ライオンは今夜死ぬ」(2017)のフランス人ヌーベルバーグ俳優・ジャン=ピエール・レオ(74歳)を起用して製作したユニークな作品 フランス太陽王と呼ばれるルイ14世について綴った側近らの回想録・日記を基に、ルイ14世(1638~1715)が死に至る1715年8月の数週間だけに焦点を当てる 糖尿病が原因で心不整脈と左足の壊疽を発症 撮影はフランス南東部にある、20年前に火事により廃墟となっていた城に5週間をかけて制作したセットにて行われた 当然電気照明のない時代の話なので、暗い照明で映像は薄暗い 原題は"La mort de Louis XIV"(仏)="The death of Louis XIV"で、邦題どおり
・いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち(伊) ⇒イタリア製のクライム・ドタバタ・コメディ 「いつだってやめられる 7人の危ない教授たち」(2014)の続編 前作では犯罪者になったが、今回は警察のおとり捜査に協力させられる 原題は"Smetto quando voglio: Masterclass"(伊)="I stop when I want: Masterclass"=「いつでも止められる:マスタークラス」 マスタークラスとは親方級・上級・指導者級のことか
・猫は抱くもの ⇒大山淳子の同名原作小説(2015)を沢尻エリカ主演で映画化 猫を擬人化し、かなりの部分が舞台の演技で進行していくというユニークな試みをしている ロケ地は、神奈川県秦野市、静岡県御殿場市など
320_38 ▼焼肉ドラゴン ⇒1957年7月生まれで兵庫県姫路市出身の鄭義信(チョン・ウィシン/てい よしのぶ)の初監督映画作品 鄭は在日3世の劇作家・脚本家・演出家で、本作は2008年に日韓で公演された彼の作による同名演劇作品の映画化 演劇は、大阪万博の頃在日の普通の人々がどう暮らしていたかに正面から取り組み、日韓で公演され好評を得、その後三演までされた 舞台の場所は、万博等の開発により消滅していった集落の一つである、大阪国際空港(伊丹空港)と猪名川に挟まれた大阪府伊丹市中村地区としている 映画も演劇の内容を忠実に倣っているようだ 物語は昭和44年(1969年)春から始まり、昭和45年(1970年)の大阪万博を経て、翌年昭和46年(1976年)春に集落取り壊しのため家族全員が引越し、旅立つまでの2年間を描く ラストシーンでは在日1世の親父は再婚の妻と(死んだその長男の遺骨と)ともに戦中から27年間住んだ土地を離れ、長女は北朝鮮へまた次女は韓国へそれぞれ伴侶とともに渡り、そして三女は日本人と結婚し日本に残る 家族がバラバラになるという、在日という不安定な立場を象徴するような終わり方ではあるが、国境を越えた新しい国際的な家族像をも前向きに示しているようにも思う 本作ロケ撮影は上記猪名川沿いの伊丹市中村地区、尼崎市立文化財収蔵庫など、大阪府・兵庫県で行われた模様 セット撮影はどこで行われたか不明 本作がそうかどうかは分からないが、地理的な関係もあり元々在日の人々は韓国済州島出身が多かったようだ 1948年4月3日から1954年にかけて米軍管理下の南朝鮮(大韓民国)の体制派が済州島民約6万人を粛清・虐殺したという「済州島四・三事件」により、20万人以上の島民が在日の済州島出身者を頼って日本に脱出したとも言われる これらの在日コミュニティは主に大阪府にあったようだ また脇役だが、宇野祥平君も頑張っていた
・ウィンチェスター・ハウス アメリカで最も呪われた屋敷(豪・米) ⇒米国カリフォルニア州サンノゼに実在する幽霊屋敷ウィンチェスター・ハウスについて、米国制作の脚本を基にオーストラリアのスピエリック兄弟監督(生まれはドイツの一卵性双生児、脚本も兼ねる)が製作した作品 筆者の私見だがB級ホラー映画作品 ウィンチェスター家は銃の開発・販売で財を成したが、その銃で死んだ者たちの亡霊に悩まされる 亡霊からの指示で主人公サラ・ウィンチェスター(ヘレン・ミレン)は屋敷の部屋を増設し続ける サンフランシスコ大地震が起きた1906年の出来事を描く 一部本物の屋敷でもロケ撮影が行われたようだが、オーストラリア・メルボルンのスタジオに何部屋かのセットを制作して撮影 原題は単に"Winchester"=「ウィンチェスター」

 

320_40 ▼アメリカン・アサシン ⇒原題は邦題どおり"American Assassin"=「アメリカの刺客、殺し屋、暗殺者」 米国の著名スパイ・小説家ヴィンス・フリン(1966~2013)の全米ベストセラー小説「ミッチ・ラップ」シリーズのうち、ミッチがなぜCIAスパイになったかを明かす本作と同名の原作小説(和訳版は今年6月に出版)を映画化 ミッチには「メイズ・ランナー」シリーズのディラン・オブライエンを起用し、CIAスパイキャンプの鬼教官スタン・ハーリーに「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014)や「ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密」(2016)のマイケル・キートンを充てた 2人は格闘技、諜報活動、武器訓練などの事前集中訓練を数か月間も受けたようで、さずがに演技のスピードが感じられ、またリアリティ感も高かったと思った 話の舞台は米国ロード・アイランド州プロヴィデンスから始まり、リビア・トリポリ、英国ロンドン、ポーランド・ワルシャワ、トルコ・イスタンブール、ルーマニアそしてイタリア・ローマと変遷する ロケ地は米国、英国、イタリア、マルタ島およびタイのようだ ローマのシーンが多いが、普通は眼にしないような場所が使われている 終盤に海中でプルトニウム爆弾が爆発するが、地中海で展開している空母を中心とする米国第6艦隊がそれにより被害を受ける様をVFXで観せてくれたのはとても目新しかった
320_39 ★ワンダー 君は太陽 ⇒原題は単に"Wonder"=「奇跡、奇蹟、驚異、不思議」か 米国ニューヨーク市に夫、2人の息子、2匹の犬と暮らすR.J.パラシオが初めて書いた同名原作小説(2013)を映画化 処女小説でありながら、いきなりニューヨーク・タイムズ紙ベスト・セラー・リストの第1位を獲得したとのこと 同小説は日本語版もあり、全世界で800万部以上を販売 遺伝子疾患により普通とは大いに異なる顔で生まれ、27回も整形手術を受けた少年オギー(オーガスト・プルマン)が主役 オギーに「ルーム」(2015)のジェイコム・トレンブレイを、その母親にジュリア・ロバーツを、父親に「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソンをそれぞれ起用 オギーが5年生の新学期から初めて登校するところから翌年の終業式までの期間が扱われる 父母そして姉の愛・配慮・支援、学校の協力・正しい指導、イジメられながらもその知性で周りを味方にしていく様子を、一人ひとりに焦点を当てながら丹念に描写 ロケ地はニューヨーク市のマンハッタン区とブルックリン区のコニー・アイランド、それにペンシルベニア州の自然保護区などのようだ 学校名などはすべて架空のものと思われる またミドル・スクールの黒人教諭のprecept(行動・考え方の指針・規範、格言、教訓)に関する授業は印象的で、パラシオの後の著作物のテーマにもなっている すべて少し話が出来過ぎているようにも感じるが…
・母という名の女(墨) ⇒珍しいメキシコ製の作品 カンヌ国際映画祭で評価の高い、メキシコのミッシェル・フランコ監督(兼脚本)の作品 メキシコ・ユカタン半島のリゾート地バジャイルとメキシコ・シティーを舞台に母娘の確執を描く 筆者は娘と孫娘に対する母親の感覚・感情には付いていけないが、ラスト・シーンには何となくホッとした 原題は"Las hijas de Abril"(西)="The daughters of April"=「4月の娘たち」
320_37 ▼ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー ⇒「スター・ウォーズ」シリーズの補足版であるアナザー・ストーリーの第2弾 若き日の無鉄砲なハン・ソロを描き、ノンストップSFスーパー・アクション・ムービー SWファンには申し訳ないが、余りSWシリーズを評価していない筆者にも、本作は筋がしっかりしており、人間味があり、見応えのあるアクションが連続していた 原題は"Solo: A Star Wars Story"=「ソロ:スター・ウォーズ・ストーリー(銀河戦闘物語か)」

 

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

6月24日(日曜)~6月30日(土曜)の週は、12本の劇場映画を観ました。最近は鑑賞数が減っていたので頑張りました。

 

・終わった人 ⇒内館牧子の同名原作小説(2015年、文庫本は2018年)の映画化 「リング」(1998)などのホラー作品を多数製作している中田秀夫監督の初コメディ作品らしい 筆者にはひと昔前の話に感じた 最近は情報が行き渡っているので、筆者の周囲の人たちは皆準備をしているように思う 布袋寅泰が作詞作曲し、今井美樹が歌う主題歌「あなたはあなたのままでいい」は映画に合っていていい セット撮影は東映東京撮影所(練馬区東大泉)で行われたようだ ロケ地は東京都内各地と岩手県盛岡市内各地らしいが、桜花のラストシーンは昨年4月に盛岡市高松公園で最初に撮影されたようだ
・女と男の観覧車 ⇒1935年12月生れのウッディ・アレン監督は80歳を過ぎた今も一年一作を続けている 本作は2017年の作品で、当然のように脚本も担当 1950年代の米国ニューヨーク市ブルックリン区の遊園地コニー・アイランドを見事に再現 主演にケイト・ウィンスレットを迎えて、中年女性の揺れる心を描写 ケイト・ウィンスレットは体重が増えすぎで、本作のように余りもてるような気がしない 本作も最近増えているアマゾン・スタジオの作品 原題は"Wonder Wheel"=「不思議な、驚きの観覧車」で観覧車の愛称だと思う
・それから(韓) ⇒韓国のホン・サンス監督の最新作の1つで、脚本も兼ねる 男女関係を扱った白黒作品だが、緊張が続かなかった 原題は"The Day After"=「翌日」
・告白小説、その結末(仏・ベルギー・ポーランド) ⇒原題は"D'après une histoire vraie"(仏)="From a true story"=「ある本当の話から」 仏女流作家デルフィーヌ・ド・ヴィガン(Delphine de Vigan)の映画原題と同名の小説(2015)をロマン・ポランスキー監督が映画化し、共同脚本も務める いろいろと不自然なところも多いのだが、ポランスキー魔術でハラハラ・ドキドキで眼が離せない 原作小説の和訳本は「デルフィーヌの友情(フィクションの楽しみ)」(2017)
・男と女、モントーク岬で(独・仏・アイルランド) ⇒男の妄想に近い作品と感じた 外国人キャストとスタッフが米国ニューヨーク市、ロングアイランドのモントーク岬などで撮影 原題は"Return to Montauk"=「モントーク岬に戻って」

 

・ガザの美容室(パレスチナ・仏・カタール) ⇒中東イスラエルに隣接したガザのパレスチナ自治区にある美容室 そこに結婚式を控えた女性とその母親、臨月の女性、ヒジャブを絶対に外さない厳格なイスラム教徒女性、薬物中毒の女性などが、まるで人生の縮図のように集う その内屋外で戦闘が始まり、屋内に籠城 誰が誰と戦っているのか分からない混乱に ミサイルか対戦車砲か分からないが、その擬音は凄まじい 今の情況を示しているのだろうか 原題は"Degrade"=「劣化、退化」か
・ALONE アローン(米・西・伊) ⇒ベルベル人が登場するから多分北アフリカ某国の沙漠地帯 そのどこかの地雷原で地雷を踏んでしまい動けなくなった兵士の話 「君の名前で僕を呼んで」(2016)のアーミー・ハマーが主演 地雷原に迷い込む前に結婚式のためにテロリスト狙撃をためらった末の出来事 同僚は地雷で爆死し、自身は左足で地雷を踏んだまま、幾度もの砂嵐に耐えながら52時間、結局は74時間を過ごすことに 死んだ同僚、ベルベル人親子、恋人とのDVも問題など、いろいろな幻影を観る これはありえないだろうという点もいくつかはあったが、エンタメとしては楽しめた 原題は"Mine"=「地雷」
320_36 ★▼カメラを止めるな! ⇒観終えた直後の感想は、実によく出来た作品だということ 冒頭に37分間のワン・カット・ゾンビ映画 これだけでも最近流行りの新しく困難な試み しかしそれからが凄い エンド・クレジットまで出てきてこれで終わりかと思ったら、そのワン・カット作品を創り出すまでのメイキング過程を描写した1時間弱の映像が続く 前半と後半はよくリンクされていて、「なるほど、なるほど」と笑いながらうなづくしかなかった 監督&俳優養成スクール「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾作品らしい 多分低予算ながらこれだけの作品が創られたのは、脚本も担当した上田慎一郎監督の実力だと思う 終映後上田監督と著名脚本家の柏原寛司氏が登場(2枚目の写真) 上田監督のコメントは「ワークショップで3ヶ月間一緒に過ごした気心の知れたキャスト・スタッフと製作できた 0点か200点の作品を創りたかった」 柏原氏のコメントは「とてもいい 脚本がいい 美学校役者の見せ場、スタッフの見せ場がよく考えられている 205点をあげられる 1本目が成功したら、2本目が勝負 同じものではダメ 攻めてくれ」 ロケは茨城県水戸市の浄水場跡で、今は廃工場になっているところらしい 撮影許可交渉は容易ではなかったようだ
Dsc_0379 ・可愛い悪魔 ⇒2015年8月に発生した、妻の不倫相手の国際弁護士を殴り倒し、その陰茎を枝切鋏で切り取ってトイレに流した事件を題材にしている 一部始終を見聞きしている、弁護士事務所の警備員という第三者を登場させて、彼が話を展開させる役割を与えられている
・リミット・オブ・アサシン(米・中) ⇒「幸せの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(2016)他沢山の作品に出演しているイーサン・ホークが主演 組織の蘇生実験で24時間の命を与えられた主人公が、使い捨てにしようとした組織に1人で闘いを挑むスーパー・アクション 原題は"24 Hours to Live"=「24時間の命」 筆者は本作を京都駅近くのイオン・モールのシネコンで鑑賞 広いモールには多くの外国人旅行者の姿が

 

・マッド・ダディ ⇒何かを暗喩するような"Yesterday When I Was Young"の唄で映画は幕を開ける 若さあるいは無限の将来性への嫉妬からか、世の中の親たちが自身の子供たちを抹殺しようとし始める 途中からはノンストップ・アクションに ストーリーは分かるが、人間の本能に近い、子供を守るという意思がくつがえされるのはかなり不気味 原題は"Mom and Dad"=「ママとパパ」
・パンク侍、斬られて候 ⇒まずは作品の破天荒な世界に度肝を抜かれた 芥川賞作家・町田康の同名原作小説を石井岳龍監督、宮藤官九郎脚本で映画化 綾野剛が主演し、豊川悦司、染谷将太、東出昌大、浅野忠信、永瀬正敏ら錚々たる俳優たちが共演 紅一点の美女には北川景子を起用 撮影には京都太秦の東映京都撮影所のスタジオと太秦映画村が主に使われた クロマキー撮影は東京世田谷の東宝スタジオで行われ、VFXで最大3,000人の腹ふり衆と1億匹の猿を合成したようだ 冒頭シーンは京都高尾の谷山林道でロケ撮影され、斬られた老人は原作者の町田康そのものだったらしい

 

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

6月17日(日曜)~6月23日(土曜)の週は、4本の劇場映画を観ました。企業の株主総会出席を縫っての鑑賞でした。

 

320_35 ▼空飛ぶタイヤ ⇒TVドラマ「半沢直樹」で一躍有名になった直木賞作家・池井戸潤の同名原作小説の映画化 意外にも多数ある池井戸作品では初の映画化らしい 筆者は池井戸潤の小説はほぼすべて読んでいるが、文庫本で上下巻900ページもある本作を映画化するのは結構困難だったろうと思う 当然ながら主人公赤松徳郎(長瀬智也)をめぐる様々な日常生活の話題などは省略されている ご存じのとおり池井戸は元三菱銀行(現三菱UFJ銀行)の行員であり、銀行やその融資先の大・中小企業の組織や振舞いについての知識は半端ない 本作でもホープ自動車はM自動車を、またホープ銀行はM銀行を想起させないでもない 池井戸作品の特徴である、企業不正や社会不正に立ち向かう主人公が、企業・社会のからくりに絡み取られもう絶体絶命の状態に追い込まれるが、起死回生の出来事により復活するという基本線は外していない 共演にディーン・フジオカと高橋一生が起用されており、女性観客の視線を気にしているようだ 「戦う戦士(もの)たちに愛を込めて」という主題歌をサザンオールスターズが担当しているのも特筆される ロケは神奈川県綾瀬市を中心に首都圏各地で行われたらしく、ハマキョウレックスという物流会社も撮影に協力している
・リディバイダー(英) ⇒英国製の先鋭企画・映像だと思って鑑賞したが、筆者の理解を超えていた 手持ちカメラによる主人公視線の映像が多いと思ったが、これはすべてコピー世界の映像だったらしい 原題も"Redivider"だが、あえて和訳すると「再分配機構」か
・V.I.P. 修羅の獣たち(韓) ⇒知らなかったが、VIPとは米国CIAと韓国国家情報院が合同で北朝鮮から企画亡命させた重要人物のことをいうらしい 1980年代から90年代初め頃までは実際に実行されていたようで、韓国内では北朝鮮に関する諜報源としてVIP待遇を受けていたとのこと 本作はこの企画亡命者についての初映画作品 韓国映画らしく先が見通せない緊張感あふれる作品だったが、話が込み入っていて誰が誰の敵なのかなかなか理解不能だった 多分それがこの作品の売りの1つだとは思うが… 原題も"V.I.P."
・メイズ・ランナー 最後の迷宮 ⇒原作小説があるのは知らなかったが、「メイズ・ランナー」シリーズの完結編となる第3作 シリーズ当初の異色さがだんだん薄れ、ただのSF戦争映画になってきたように感じた それに少々長い 締めくくりに死者からの手紙を使ったのは好印象 原題は"Maze Runner: The Death Cure"=「メイズ・ランナー(迷路の走者):死の治療法」

 

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

6月10日(日曜)~6月16日(土曜)の週は、6本の劇場映画を観ました。今週もイベントに押されました。

 

・Vision(日・仏) ⇒河瀬直美監督が昨年の第70回カンヌ国際映画祭(2017)で出会ったマリアン・スロット・プロデューサーと仏女優ジュリエット・ビノシュに出会い、本作の企画がスタート 昨年後半に奈良県吉野町の神秘の森で2度撮影し、今月短期間で公開となった 欧州の芸術作品の影響を受けたためか、かなり形而上的なものになっている
320_33 ★万引き家族 ⇒是枝裕和監督のオリジナル脚本による作品 今年のカンヌ国際映画祭(2018)で最高賞のパルムドール("Palme d'or"=「金のヤシの小枝」)を受賞しただけあって面白い 都会の片隅の古い平屋で暮らす、反社会的で犯罪的な家族だが、ユーモアと笑いにあふれ楽しい生活を送っている 終盤に警察に捕まり、その尋問により家族一人ひとりの秘密が明かされていくところもユニーク 子供たちを家庭、家族あるいは社会で充分に育てて行けないという現代社会への痛烈な皮肉と批判のように感じる 移民・難民が多く暮らし、二極化も進む欧州で広く共感されたのもこの点ではないだろうか ロケ地は、家族の暮らす古民家、商店街、団地、ルアーショップ、病院など、主に東京都足立区内 海水浴シーンは千葉県いすみ市と小湊鉄道で撮影された模様
・羊と鋼の森 ⇒第13回本屋大賞(2016)を受賞した宮下奈都の同名原作小説の映画化 普段余り日の当たらないピアノ調律師という職業に着目したのはユニーク 山崎賢人、鈴木亮平、三浦友和らはかなり調律師の訓練を受けた模様 母親がピアノ教師である上白石萌音・萌歌の姉妹は幼少期に習ったピアノの腕を格段に向上させた 終盤の結婚式シーンで萌音が弾くピアノに合わせた、北海道の森に舞うダイヤモンドダストの映像は秀逸 ロケ地は中・高校、調律会社、個人住宅、飲食店、コンサート会場、JR駅等々、ほぼすべて北海道旭川市内 ただ外国人大物ピアニストによる演奏の撮影は埼玉県入間市にある武蔵野音大入間キャンパスの大ホール・バッハザールで行われた模様
320_34 ▼30年後の同窓会 ⇒原題は"Last Flag Flying"=多分「最後に旗は翻る」 「6歳のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレーター監督が、ダリル・ポニックサンの同名原作小説(2005)に着目し、12年の歳月をかけて映画化 最近少しずつ増えているアマゾン・スタジオ作品 戦場での友情をベトナム戦争とイラク戦争をつないで描く 一方ロード・ムービーでもあり、南は米国ヴァージニア州ノーフォーク、リッチモンドから、ワシントンD.C.を経由して、北はニューハンプシャー州ポーツマスまでに至る 3人の男同士の会話に重点を置き、3週間のリハーサルを行い、息を合わせるとともに、脚本も何度も書き換えたようだ 最後は手紙で締めくくったのは、粋で感動的
・最初で最後のキス(伊) ⇒イタリア・ミラノからイタリア北東部の田舎町ウーディネに養子として引き取られた高校生と現地高校生との交わりを描く ファッション、ダンス、イジメ、友情、恋愛など、いろいろな側面を取り込む 最後の悲劇は米国で実際にあった事件を題材に 原題は"Un bacio"(伊)="A kiss"=「一回のキス」で邦題どおりでもある

 

・OVER DRIVE ⇒ラリーの整備士とドライバーの兄弟(東出昌大・新田真剣佑)間に横たわる愛情、競争心、一人の女性を巡る話などが、過酷なラリー競技の映像とともに映し出される ラリー競技が転戦する日本各地における、迫力あるラリー・シーンのロケは、東京・お台場、栃木県、富山県、山口県、福岡県北九州市・宗像市、長崎県、群馬県などで大々的に公道を借り切って実施 ロケには、レーシング・ドライバーでもあるトヨタ自動車・豊田章男社長の全面後援を得て、実物のレースカー・ヤリスが登場し、本物のメンテナンス・チームやドライバーが参戦 作中のスポンサーとしてセイコーとパイオニアも全面協力 また、兄弟二人が自転車で山を下るシーンは静岡県伊豆・稲取細野高原で撮影されたようだ 新田は「ちはやふる」3部作シリーズとは打って変わって、腹筋が6パックのムキムキ・マンに変身

 

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

6月3日(日曜)~6月9日(土曜)の週は、6本の劇場映画を観ました。イベントの多い週だったので、鑑賞数が限られました。

 

320_31 ▼ダリダ あまい囁き(仏) ⇒1970年代中頃に世界中で大ヒットした「Parole, Parole(あまい囁き)」という唄は聴いたことがあった その唄を歌っていたのが本作主役のダリダ(1933-1987)であり、セリフをアラン・ドロンが喋っていたらしい "Parole"(伊)は"Words"=「言葉」という意味 ダリダの本名はヨランダ・クリスティーナ・ジリョッティで、エジプトのイタリア系移民の子としてカイロで誕生 少女時代は自分をブスだと思っていたらしいが、眼鏡を捨ててミス・エジプトに選ばれた イタリア語、アラビア語、フランス語、英語、スペイン語、ドイツ語などを話す真のマルチリンガルであり、歌唱力もあって、1955年にパリに渡り、その後フランスでトップ歌手にまで登り詰めた ダリダはとにかく情熱的な恋多き女性で、多数の美男子と浮名を流した 不幸だったのはそのうち3人がダリダに振られて自殺してしまったこと 実弟がいろいろ支えたものの、ダリダ本人も最終的には自死を選んでしまう このダリダという難しい役を、200人を超えるオーディションから選ばれた、イタリア人のスヴェヴァ・アルヴィティが熱演 原題は単に"Dalida"
・妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ ⇒山田洋次監督オリジナルの「家族はつらいよ」シリーズの3作目 今回のテーマは「主婦への讃歌」 いつものようにドタバタ喜劇で、最後はハッピー・エンドだが、内容はやや旧め 平田家の外観は前2作と同様に横浜市青葉区美しが丘の民家でロケ撮影し、家の内側はセット撮影(@京都か)らしい これ以外のロケ地は長野県佐久市茂田井(もたい)の武重本家酒造、東京都葛飾区の柴又帝釈天、広島県大島上島町の墓地など
・50回目のファーストキス ⇒「銀魂」「斉木楠雄のΨ難」(いずれも2017)の福田雄一監督が山田孝之と長澤まさみを起用して米国ハワイ州オアフ島でオール・ロケ撮影 2004年の同名ハリウッド映画(原題は"50 First Dates")のリメイク
320_32 ▼デッドプール2 ⇒マーベル・コミックの「X-MEN」シリーズのスピン・オフである「デッドプール」シリーズの2作目 いずれも20世紀フォックス映画が製作し、「デッドプール」の3作目の製作も発表されている 本作も前作と同様ミュータントの世界を扱うが、ストーリーはハチャメチャで、毒舌、ギャグ、スラング、4文字英単語が氾濫 VFXの量も膨大 音楽は"All Out Love"で始まり、"Tomorrow"で終わる 監督は「ジョン・ウィック」シリーズや「アトミック・ブロンド」(2017)のデビット・リーチ 主演は前作同様カナダ出身のライアン・レイノルズ、コミック原作に彼の名前が登場するらしい 余計な話だが、レイノルズの持て方は半端ではなく、カナダの歌手・俳優のアラニス・モリセットと婚約(後に解消)、スカーレット・ヨハンソンと結婚・離婚、現在はブレイク・ライブリーと結婚し2子をもうけている 同じカナダ出身のライアン・ゴズリングが似ていないでもない チョイ役で忽那汐里も出演 原題も"Deadpool 2"だが、「デッドプール」とは一体どういう意味だろう 「死者・死体の塊・山」という感じか
・友罪 ⇒薬丸岳の同名原作小説を瀬々敬久(ぜぜたかひさ)監督が脚本も担当し映画化 未成年で罪、あるいはそれに近いことを犯した3人の人生が交錯する 相変わらずダメ人間の瑛太は好演 ロケ地は茨城県、群馬県、埼玉県など各地 たびたび登場する2基のパラボラ・アンテナがある場所は、旧KDDI茨城衛星通信センターがあった高萩市衛星通信記念公園(愛称:さくら宇宙公園)ではないだろうか

 

・レディ・バード ⇒米国カリフォルニア州の州都サクラメントを舞台に、普通の高校生ヒロインが大学進学を控えた最後の年を過ごすのを描く 勉学、文化祭、恋愛、進学、プロムなどに悩みながらも、力強く前に進む姿を生き生きと描写 カリフォルニアの学生は米国東部の大学に進学することを夢見るのだろうか 「フランシス・ハ」(2012)や「20センチュリー・ウーマン」(2016)に出演している女優グレタ・ガーウィグが、サクラメント出身の自身の経験も加味して初監督 原題も"Lady Bird"だが、"ladybird"="ladybug"は「テントウムシ」の意味

 

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品