劇場映画「関心領域」を観て

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★関心領域(105分・米・英・ポーランド・2024)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

 

監督・脚本:ジョナサン・グレイザー(1965~・ロンドン出身)

原作:「関心領域(原題:The Zone of Interest)」マーティン・エイミス著(1949~2023・英ウェールズ出身・小説家・教授)2014・和訳あり(2024)

主演:クリスティアン・フリーデル(1979年~・独マクデブルク出身):ルドルフ・ヘス(1901~1947・独バーデン=バーデン出身)

助演:ザンドラ・ヒュラー(1978~・独ズール出身):ヘイトヴィヒ・ヘス

原題:The Zone of Interest

受賞:第76回カンヌ国際映画祭(2023)グランプリ、第96回アカデミー賞(2024)国際長編映画賞・音響賞

 

1940年4月から1943年11月までアウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド)の所長だったルドルフ・ヘスが本作の主人公 ヘスは絞首刑になる前に詳細な手記を書き残しているという 原作はヘスとその家族、またナチス関係者に関する恋愛感情などを記述しているようだが、本作映画は原作から発想しているとはいえ、この原作とは別物とみた方がよいらしい ユダヤ人でもあるグレイザー監督は本作製作に10年間を費やし、ヘス夫妻に関する徹底的な調査を行ったようだ 関心領域とはアウシュヴィッツ強制収容所周辺の、親衛隊(SS)のために確保された地域を意味するとのことで、独語では"Interessengebiet"というようだ

 

本作の冒頭とエンドクレジット前に何も見えない暗い画面がかなりの時間出現 聴いたこともないような複雑怪奇な音が流れる 後から考えると、これは関心領域で生活する人々に日常聴こえていた背景雑音だったのかもしれない アウシュヴィッツ強制収容所に隣接したヘス夫妻の広い庭付き邸宅で展開される上流階級の普通の生活を克明に描いている 時々子供たちが拾った金属の歯で遊んだり、収容所から回されてきた衣類や貴重品を品定めする光景に驚かされる またヘス夫人が家庭菜園も含めた理想の生活を希求し、それを手放そうとしなかったことからは、戦時下の国の中ではまさに異常と平常が同時進行していたことが分かる 収容所で飢餓に苦しむ囚人たちのためにリンゴを置くために自転車で通った少女は、グレイザー監督が調査中に会ったポーランド人女性を実在のモデルとしているそうだ この部分はどうやら赤外線カメラで撮影されているのではないか

 

撮影は2021年夏に約2ヶ月間アウシュヴィッツで行われたとのこと オリジナルのヘス邸は終戦後は個人の邸宅となっていたため、収容所に隣接する近くの廃屋をレプリカ・セットとして改造したらしい また追加撮影が2022年1月に同じポーランドのイェレニャ・グラで行われたとのこと