枇杷は甘いかスッパイか -34ページ目

枇杷は甘いかスッパイか

遠く離れた地に住む母。その介護の喜怒哀楽。

ヨシトは二か月ぶりに、平日のアサコの介護を再開。
 
ヨシトは、アサコを施設から病院に連れて行ったのだが、アサコの歩みは格段に遅くなり、ヨタヨタ感が強くなっていた。
認知症の程度はあまり変わらない気がする。
施設の方が言うほどにはひどくなさそう。

とヨシトは思う。
 
アサコの食欲は相変わらず。
昼食を大いに食べた。
自分の家に戻り、歩いて何回もトイレを往復するので、かなり疲れるようだ。
昼寝の時間も長い。
 
「しっこが漏れるごとあっと!」
と、アサコは叫びながら、ヨタヨタしながら、トイレに向かう。
アサコ本人は必死なのだが、悲しいかな、ヨシトにはとても急いでいるようには見えない。
アサコには悪いが、悲しいと言うより微笑ましい。
 
いざおしっこが出ると、続けて「ぶりぶり」と音が聞こえた。
ヨシトがトイレのドアを開けると
「う○こもバリバリ出たと!」
とアサコは嬉しそうに言った。
「トイレのシャワーで洗ったら、ちゃんと拭いてね。」
とヨシトが言う。
拭いたあと、アサコはペーパーの臭いを確認して、
「全然臭わんと!」
と満面の笑みを浮かべていた。
 
アサコの家のトイレの前の廊下は、1間平方(約2畳分)ほどに広くなっている。
そのためトイレまでの手すりが途切れている場所があり、アサコがトイレに行く時に転倒の恐れがあった。
なので、まるでポールダンスができるような棒を、転倒防止の補助具として立てた。
アサコはその棒を掴んで
「倒れんとばいね。」
と言いながら、軽く揺すり、
足をフローリングに打ち付けて、ド~ンと音を鳴らした。
ヨシトはその仕草に笑みを浮かべ、
まだ、こんなことができる能力・・・いや「脳力」を持っているのだ。
と、感心した。
 
 
夕食時には、ヨシトと話をしながら笑顔もこぼれるアサコ。
ケイコ(アサコのすぐ下の妹、アサコは四女)おばと電話で話をしたのだが、話がかみ合わないようだ。
耳が遠くて聞き間違いは多いし、昔話をしても記憶の欠落で間違った記憶を元に話をするからだ。
 
この二ヶ月の間に、「脳力」は格段に落ちている気がする。
頭の中が真っ白になってしまうのは、時間の問題なのだろうか。
とヨシトは先行きを若干不安に思った。
 
2016年10月、枇杷の新芽を確認するアサコ