「歌は語るように、セリフは歌うように」というのは、良く言われる言葉なので、みなさんも聞いたことがあると思いますが、ボーカルにおいては正しく解釈しないと金言も迷言になってしまいます。
日本語を話す私たちにとって「語るように歌う」というのは感情的表現においては金言であっても、物理的な発声動作においては迷言となってしまうのです。
日本語は会話と歌唱では声帯の閉じ方が違います。
会話時の閉じ方で無理に歌うと喉声になります。
喉声では安定した持続音を得られないので当然、良いボーカルは望めません。
さらに無理を続ければ声帯ポリープを発症する可能性が出てきます。
歌うための発声で「語るように」歌いましょう。
「気持ちは語るように、でも発声は歌うように」
ということで。
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声帯は喉骨の中にあり呼吸時には開き、発声時には閉じます。
声のしくみを簡単に説明すると閉じられた声帯のわずかな隙間から息を吐き出すときにリード楽器のように声帯が振動して音を発します。
つまり声帯は閉じていないと発声できないということです。
でも閉じるときに声帯の振動を妨害するような力がかかってしまっては豊かな声は出ません。
喉声になってしまうのは声を出そうとして声帯を閉じるときに、声帯の振動を妨げる有害な力も同時にかかってしまうことが原因です。
つまり声帯を締めつけて振動を妨げてしまうということです。
ゆたかな発声のために、声帯は「締めつける」ことなく「閉じる」必要があるのです。
しかし残念なことに日本語を話す時の発声は締めつけることで声帯を閉じます。
そのため声が持続しないのですが、私たちは声が持続しないことできちんとした日本語を話していると感じるのでやっかいなのです。
声の持続しない歌唱はありえませんから、とくに日本語の場合は会話時と歌唱時は声帯の使い方が違って来ます。
「台詞は歌うように、歌は語るように」という言葉がありますが、これは情感の話であって物理的な発声においては「語るように」発声したら歌えないのです。
声帯を締めつけることなく確実に閉じる、という「歌うための発声で、語るように歌う」を目指しましょう。