発作3 | ゆるりのブログ

ゆるりのブログ

私個人の思うこと、感じることなどを徒然に綴っています。

私の言葉がキツく当たる方はご遠慮下さい。

彼の今いる場所からこの建物まで、車で15分ぐらいだろうか。
電話をしたまま運転は出来ないので、仕方なく電話を切った。
物を見るのも辛かったが、周りの人に変に思われないように、携帯をいじっている振りをした。

そうこうしている内に、迎えに来て貰えるという安堵感からか過呼吸も収まってきて、随分と体が楽になった。
もう自分で移動できるかも、とも思えたが、あの渋滞のエスカレーターを思うとそのままそこで待った。

30分は待っただろうか。
目の前に見覚えのある顔が現れた。
彼は何も言わずに私の鞄を持ってくれた。
「行くぞ」
そう言うと、エスカレーターに向かってスタスタと歩き出す。
エスカレーター前で一瞬躊躇する私を促し、乗り込む。
「この界隈、渋滞で近付くのも大変だったわ。よくこんなところに来たな。大人しく家にいればいいものを」
ぶっきら棒に悪態をつく。
「ごめん…。私が来た時はここまで混んでなかったんだけど…。直ぐ帰るつもりだったし…」

建物を出ると、雪がチラついていて寒さに思わず身を縮める。
やっとの思いで停めたんだろう。少し距離のある裏通りの道路に車は路駐してあった。
「よかった。駐禁とられてなかった」

その帰りも渋滞にハマった。
人混みなど、混んだ所が嫌いな人だった。
「何で俺がこんな目に…」
運転しながら苛々と呟く。
私はその隣で、安堵感と発作の疲れから目を瞑った。

悪態をつきながらも、いつも迎えに来てくれる。
そんな彼に私は感謝しなければいけない。