鞄の中をまさぐって携帯電話を探す。
誰かと話していれば少しは気が紛れる。縋る思いでコールする。
「お願い、出て」
コール音が長い。
「お願い、出て」
コール音が長い。
駄目か…と諦め掛けた瞬間「もしもし」と声がした。
私は息があがって直ぐに話すことが出来ない。受話器越しに聴こえるのは、ハアハア言う私の過呼吸音だけ。
「…またか。今どこにいる?」
私は息があがって直ぐに話すことが出来ない。受話器越しに聴こえるのは、ハアハア言う私の過呼吸音だけ。
「…またか。今どこにいる?」
呼吸の合間で片言に場所を告げる。
「ゆっくり息をしろ、ゆっくり」
言われて、ゆっくり息をしようと努める。
館内放送音が煩い。
「ゆっくり息をしろ、ゆっくり」
言われて、ゆっくり息をしようと努める。
館内放送音が煩い。
淀んだ空気が息苦しい。
体が暑い。
体の締め付け感をどうにかしたい。服を全部脱いでしまいたい、衝動に駆られる。
時折り視線をあげると、エレベーター待ちのおばさんや、子供の訝しげな視線にぶつかった。
どういう風に見えているんだろう?
時折り視線をあげると、エレベーター待ちのおばさんや、子供の訝しげな視線にぶつかった。
どういう風に見えているんだろう?
一瞬、頭に過るがそんなこと構ってられやしない。
煩いと感じる館内放送も、考えてみれば有難たかった。私の過呼吸音を掻き消してくれる。
しばらくして、薬が効いてきたのか呼吸が少し収まってきた。
「二階ならエスカレーターで下に降りられないのか?」受話器の向こうで声がする。
煩いと感じる館内放送も、考えてみれば有難たかった。私の過呼吸音を掻き消してくれる。
しばらくして、薬が効いてきたのか呼吸が少し収まってきた。
「二階ならエスカレーターで下に降りられないのか?」受話器の向こうで声がする。
「エスカレーター…、一杯」
「エレベーターは?」
「エレベーターは?」
「エレベーター…、も一杯」
「エレベーターホールなら非常階段ないのか?」「階段…、ない。扉…、あるけど、バックヤード…、の扉」
「じゃあ、建物の横の立体駐車場に向かえ。外の空気吸えばマシになるだろ?」
この建物は縦長で、立体駐車場は今いる私の場所から長手方向の反対側にある。今の私には果てしなく遠い距離だ。
「立駐…、遠い…」
「エレベーターホールなら非常階段ないのか?」「階段…、ない。扉…、あるけど、バックヤード…、の扉」
「じゃあ、建物の横の立体駐車場に向かえ。外の空気吸えばマシになるだろ?」
この建物は縦長で、立体駐車場は今いる私の場所から長手方向の反対側にある。今の私には果てしなく遠い距離だ。
「立駐…、遠い…」
「慌てなくていいから。楽になったら移動しろ」
落ち着くのを待つが、少しマシになってきたかと思うとまた波がやってくる。
「駄目だ…。また…。手足が…、痺れてきた。歩けない…」
「…仕方ない。行くから。そこで待ってろ。電話切るからな」
え…、電話切られて一人にされるの、すごい不安なんですけど…。
落ち着くのを待つが、少しマシになってきたかと思うとまた波がやってくる。
「駄目だ…。また…。手足が…、痺れてきた。歩けない…」
「…仕方ない。行くから。そこで待ってろ。電話切るからな」
え…、電話切られて一人にされるの、すごい不安なんですけど…。