発作2 | ゆるりのブログ

ゆるりのブログ

私個人の思うこと、感じることなどを徒然に綴っています。

私の言葉がキツく当たる方はご遠慮下さい。

「…駄目だ」
鞄の中をまさぐって携帯電話を探す。
誰かと話していれば少しは気が紛れる。縋る思いでコールする。
「お願い、出て」
コール音が長い。
駄目か…と諦め掛けた瞬間「もしもし」と声がした。
私は息があがって直ぐに話すことが出来ない。受話器越しに聴こえるのは、ハアハア言う私の過呼吸音だけ。
「…またか。今どこにいる?」
呼吸の合間で片言に場所を告げる。
「ゆっくり息をしろ、ゆっくり」
言われて、ゆっくり息をしようと努める。
館内放送音が煩い。
淀んだ空気が息苦しい。
体が暑い。
体の締め付け感をどうにかしたい。服を全部脱いでしまいたい、衝動に駆られる。
時折り視線をあげると、エレベーター待ちのおばさんや、子供の訝しげな視線にぶつかった。
どういう風に見えているんだろう?
一瞬、頭に過るがそんなこと構ってられやしない。
煩いと感じる館内放送も、考えてみれば有難たかった。私の過呼吸音を掻き消してくれる。

しばらくして、薬が効いてきたのか呼吸が少し収まってきた。
「二階ならエスカレーターで下に降りられないのか?」受話器
の向こうで声がする。
「エスカレーター…、一杯」
「エレベーターは?」
「エレベーター…、も一杯」
「エレベーターホールなら非常階段ないのか?」「階段…、ない。扉…、あるけど、バックヤード…、の扉」
「じゃあ、建物の横の立体駐車場に向かえ。外の空気吸えばマシになるだろ?」
この建物は縦長で、立体駐車場は今いる私の場所から長手方向の反対側にある。今の私には果てしなく遠い距離だ。
「立駐…、遠い…」
「慌てなくていいから。楽になったら移動しろ」
落ち着くのを待つが、少しマシになってきたかと思うとまた波がやってくる。
「駄目だ…。また…。手足が…、痺れてきた。歩けない…」
「…仕方ない。行くから。そこで待ってろ。電話切るからな」
え…、電話切られて一人にされるの、すごい不安なんですけど…。