久遠の愛 16 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。

※ 10万HITリクエスト!てん様から頂きました☆

必ず読む前に注意☆ に目を通してください!



敦賀蓮という男に、自分は何を期待したかったのだろう


何を失望したかったのだろう


幻想だけで作り上げてきた肖像ですら、もう思い出せなく


現実から導くことさえできない




「お前さ、なんでここに来たのかわかっているか?わざわざ!アメリカまで!」

「・・・・・・・・わかって・・・・いるよ・・・」


わざとらしく区切って言葉を強調する社に、久遠は視線をさまよわせた。

どうしても言葉が弱々しくなってしまうのは、自分でも自覚しているからだ。


「じゃあ、さっさと腹を決めろ!俺は忙しい、そしてお前はもっと忙しいんだぞ!!」

「だから・・・わかっているって・・・・」


「いーや、わかっていない、わかっていたら何も言わずに帰って来れるか!!」


社の指摘に、もうこれ以上言葉が出ない


宿泊しているホテルの一室

うなだれる久遠と追い討ちをかける社


散々仕事の調整をしてくれた社の怒りは最もで、反論のしようが無い。


敦賀蓮のコンサートに行って、本人に会えた

名前を名乗り


話をして


結局自分は・・・自分の目的を伝える事ができずに・・・・・


『・・・・・・すみません。今日は・・・帰ります』


静かに自分を見る敦賀蓮にかろうじて出た言葉


そう・・・・・・・逃げたのだ



「明日こそは絶対伝えろよ。お前、そんなに日本を離れていれないだろ?」


ギクリとした。

それは・・・確かに・・・・一日でも早く日本に帰りたいと思う

仕事もそうだが


何より・・・・・あの人を一人にしておきたくない



「明日こそ・・・言うよ」

「明日も敦賀さんが会ってくれればいいけどな」


容赦ない社の言葉にうっ・・と言葉が詰まる。

確かに・・・いや・・・・でも・・・・


おそらく・・・大丈夫だろう


会って、話して・・・一つわかったこと


あの人は自分の罪を受け入れて・・・隠そうとしていない

俺から・・・逃げも隠れもしないだろう


あの人が隠して、いや、奥底に封じ込めているのはただ一つ





「久遠、なんか下にお前宛の客人が来てるっているんだけど、誰かと約束あったか?」


ドアマンが部屋に来たのを対応していた社が首をかしげて振り返る。

社が心当たりがないのであれば、自分にだってあるはずがない。


それでも、名指しで来ているというものを無視する訳にもいかず、二人でロビーに降りて待ち構えていた人物に驚いた。


「な・・・・君は・・・・」

「こんばんは、最上卿。立派なホテルに宿泊だこと」


澄ました顔で挨拶をしてきたのは敦賀蓮の娘の奏江だった。

思わず周囲を見渡して、彼女が一人だとわかり、更に驚いてしまう。


「こ・・・・こんな時間に若い娘一人で出かけるなんて何を考えているんだ。敦賀さんは・・・」

「ご心配なく。ちゃんと車できました。それに父さんはまだコンサートホールよ。あの様子じゃ今晩は戻ってこないわね」

「は?あの様子?」


収まらない動揺に言葉を繰り返すだけの久遠を奏江はキッと睨みつけた。


「最上久遠、あなたの知っている事を話して」

「は?」

「父さんの事よ。あなた何を知っていて、何を言いにきたの?」

「え・・・・いや・・・それは・・・」


確信を持った口調にも

何故か責められている口調にも


思わずしどろもどろになって後ずさってしまう


「こっちだって面倒事はゴメンなのよね。こういうのは芽の段階で摘み取っておくに限るのよ」

「はあ?何を・・・いや、というかそんなの本人に聞けばいいだろ・・・」

「無理よ。あの状況で聞き出すぐらいなら、アンタをふんじばって聞き出した方が早いし楽だわ」

「は・・・・・?ふんじ・・・・?」


どこまでも自分の周囲にいる大和撫子の女性からはかけ離れた言動に、すっかり久遠は目を白黒させていた。

隣にいた社も目をまんまるにして状況に呆気に取られていたのだが、回復はいち早かった。


「ええと・・・・ちょっと落ち着こうか二人共・・・・奏江ちゃんも・・・」

「奏江ちゃん!?」


呼ばれた自分の名前に奏江がぎょっと青ざめた。

どうやらお気に召さなかったようだ。

なんなんだこの娘・・・・これがカルチャーショックというやつか?


全然自分と・・・と、浮かんだ思考はあまりに自然すぎて、その先を意識した時思わず衝撃に息をのんだ。

ひやりと嫌な汗が背中を伝う。

認めてしまうには、とうてい受け入れ難い事だったが、無意識にそれが浮かんでしまうぐらい具体的で・・・だが現実として受け入れている自分に気づくには十分だった。



「敦賀さんがどうしたの?まだコンサートホールにいるって何をして・・・」

「何も。アンタ達が帰った後、ぼーっとホールのピアノに座っているだけよ」


動揺する久遠に変わって、社が状況を把握しようと奏江を席に座らせた。


「それだけで、俺を犯人扱いかよ・・・」


原因が自分たちにあると言えば正にそうなのだが、たった今乱された自分の気持ち、

さらに、ずっと抱えている消化不良の想い

奏江の決めつけた様な口調に反発したい気持ちもあって・・・・要は八つ当たり気味に吐き捨てす様にいえば、自分の理不尽さに自覚があるのか、奏江は一瞬何か言いづらそうに口ごもり、再び久遠に視線をむけた。


「・・・・・・・・・昔もあんな姿見たことあったから・・・」

「昔?」

「父さんが・・・・・・・・・・」

「敦賀さんがなんだよ」


先ほどと打って変わって口ごもる奏江にイライラと追い打ちをかける。

隣で社が気遣わしげに見ているのが判るが、気持ちが波立つのを抑えられなかった。


のだが


「・・・・・ッ!モーッ!私だって判んないわよ!!父さんは何も言ってくれないし、教えてくれない!でも放っておけないじゃない!ずっとあんな顔で」


まだ小さい頃に覗いた部屋で見た蓮の姿

ほんの少しうつむいて


その瞳は昏くて


『幸せになる資格なんてない』



その言葉通り、蓮はずっとそう生きてきたのを自分は見てきた。

どんなに何を言っても、何をしても


自分の『幸福』を決して追求せず


まるで、『幸福』である事を禁ずるように



「過去に何があったって、私にとってはずっと育ててくれた人で、ずっと近くで見てきてどんな人かなんてよく知っているのよ。父さんは・・・・十分・・・ッ」


悔しい

何もできないどころか、知ることさえできない自分が


唇をかんでうつむく奏江の姿を久遠は呆然と見ていた


『幸せになる資格なんてない』


蓮がそんな想いを抱えて生きて来た事を聞かされて

それが本当は自分が望んでいた事だったのに


どうしてこんな


『もう十分ってよりも、もうたくさんだって感じだよ。俺が欲しかったものは、あんなんじゃなかったんだ』


父さん



貴方が正しかった



「・・・・・・・・・敦賀蓮と俺の母親は、お互い結婚していながら不貞関係にあったんだ・・・」


「え・・・・」

「久遠?!」


突然の久遠の言葉にぽかんとする奏江と、抗議の声をあげる社


そんな二人の様子よりも湧き上げる怒り



本当は・・・・敦賀蓮が罪の意識に苛まれて、世の中の隅でひっそりと生きていればいいと思った。

そして徹底的に失望したかったのだ。

そうする事で自分の気持ちに救いを求めようとした。


でも、現実には名声と名誉を持っていて

それがズルいと思った


なのに、あの涙でまた判らなくなって



「・・・不貞関係って・・・父さん結婚していた事あったの?」

「・・・・・・それも知らなかったの?大体していた事って・・君の母親とは結婚していなかった訳?」


驚く所はそこかと呆れれば、奏江は何かに気づいた様に「ああ・・」ととんでもない事をあっさりと口にした。


「私、養女だから。父さんと血のつながりはないわよ」

「「え?!」」


驚く男二人に、奏江は「たしかに美男美女という面では親子と思っても不思議じゃないけどね」とあっけらかんとのたまわってくれるが


ツッコミを入れる気にもならないぐらい、衝撃に言葉を失っていた。


「養女・・・・・?」

「父さんは昔私の本当の両親が経営する酒場でピアノを弾きながら、住み込みで働いていたのよ。私が2歳ぐらいの時からだから、物事着く頃には一緒にいたわね」


酒場で弾くピアノがその内評判を呼び、客を呼び、スカウトの目にとまったそうだ。

デビューが決まったそんな時、奏江の両親が事故でいっぺんに亡くなり、蓮は天涯孤独になった奏江を引き取ったのだという。


「じゃああの人・・・あれからずっと・・・一人で・・・・」

「あれから?」


伺う様な奏江の顔に、久遠は遠い過去と未来を見ていた。


もう一人の自分の声がする


さあ、これでお前の望みのままだと


だが



もしここにいたのが過去の亡霊だとしたら



自分は一体何なのだろう





「・・・父さんは、ずっと・・・その過去の過ちに苦しんでいるっての?というか、私の知る限り父さんに奥さんがいた事なんてないんだけど?」


浮気がバレて離縁した訳?という奏江に日本での離縁をする現状の大変さを問いても馬耳東風かなと思いながらも



敦賀蓮がこの20年ずっと知らない事実を




どう言えばいいのか





考えて、自分の中でもまだ整理のついていない事だったと初めて知った。







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