年中無休のI love you!⑤ | KIRAKIRA☆

KIRAKIRA☆

こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。


「じゃあ、私が魔法をかけてあげます」


目を輝かせて彼女は言った。



そして、俺は魔法にかかった。



彼女の差出した1輪の花


彼女のくれた言葉


彼女の笑顔




彼女は一つの魔法で、俺に二つの魔法をかけてくれた。











いい夢を見た。

「ん・・・・・」



意識が覚醒してもしばらく、蓮は自分の置かれている状況を把握する事ができなかった。


どうやらここは俺の寝室で、俺は横になって寝ているらしい・・・・と気付いて、じゃあ、なぜこんな状況になっているんだっけ・・・・と思い起こすと・・・・


そうだ、倒れたんだった


1限目を受けていた記憶は途中まではある、おそらく倒れたのはその後。

そういえば、点滴をうけた記憶もおぼろげながらあるな・・・・


おそらく社さんがここまで運んでくれたんだろう。


ふと、額に手を当てると冷却シートが貼られている。

頭の下には氷枕・・・・?

社さん、色々してくれたんだな。と気付くと、ありがたく思う。

時計を見ると、時刻は19時過ぎで・・・おそらく社さんはもう家庭教師のバイトへ行っていていないだろうけど。


少しだけ楽になったとはいえ、まだまだダルさの残る身体を動かす気になれず、ぼんやりと天井を眺めていた。

とはいえ、喉が渇いたな・・・・・



ガチャ



「あ、気付きました?」




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



寝室のドアを開けて入ってきた人物が信じられなくて、蓮は目を見開いた状態でフリーズした。



あれ?俺、まだ起きていないんだろうか。これはまだ夢の中なのか?

だって、ありえない人物がありえない場所にいる・・・・・


「はちみつ生姜湯作ってきました。少し、とろみを付けていますから、喉にも優しいですよ。飲めますか?」


フリーズしたまま微動だにしない蓮に構わず、部屋に入ってきた人物・・・キョーコは湯気の立ちこめるカップを持って、ベットに近付いた。

そのまま、冷却シートの上から掌を当てる。


「ぬるくなっていますね。こっちも貼り替えましょうか。起き上がれます?」


そう言うと、蓮はのろのろと上半身を起こした。

その表情はまだ呆然とキョーコを凝視したままだ。


「御粥と簡単な軽食を作ったんですが、食欲はどうですか?薬を飲むためにも何が胃に入れた方が・・・・・敦賀さん?」


テキパキと布団のしわを直して、蓮に何か掛けるものを・・と思って顔を上げると、蓮は自分の頬を自分でつねっていた。


「・・・・・・・・・・・・・・何やっているんです?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最上さん?」


「はい」


「・・・・・・・・・・・・・・・現実?」


「私が認識している限りでは」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホンモノ?」


「偽物の定義が判らないんですが」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タヌキが化けているとか、社さんが着ぐるみを来ているとか」


「どれも非現実的ですね」



いや、だけど・・・・この場合、ホンモノの彼女がここにいる方が非現実的では無いんだろうか・・・・。

しかも、心なしか彼女の態度が、いつもと違っているというか・・・

なんで

どうして


熱のせいなのか、驚き過ぎているせいなのか、未だ信じ切れていないのか、頭が上手く回らない。

混乱する俺に


「さっき、一瞬だけ意識が戻った時に話したんですが・・・覚えていないですか?」


彼女は困惑して、そう言うが・・・・・・・・・・覚えていない。

せっかく彼女と交わした言葉なのに・・・。


俺の表情から伝わったのか「確かに意識朦朧としていたしね・・」と呟いて、もう一度説明してくれた。


曰く、俺の落とした財布を拾って、学校に届けてくれて、社さんに会って、流れでマンションまで付き合ってくれた事。

社さんはバイトへ行ってしまい、最上さんが看病で残ってくれたという事・・・・だけど・・・


ああ、もう、どうしよう・・・・顔がどうしようもなく火照っているのが判る。明らかに熱のせいじゃない。

それに、どうしても緩む口元が抑えきれない


嬉しさが・・・彼女が目の前にいるという事の嬉しさが、状況を知って全身に満ちていく・・・・。

喜びが抑えきれない。


俺は、本当に彼女が好きだ


そんな判り切った事さえ再認識してしまう程暖かいものが込み上げてくる。



「敦賀さん?」


状況を話している内に口元に手を当てて、頬を赤くしていく蓮にキョーコは「熱が上がったのかしら?」と心配したが、「ごほっ」と一つ咳払いして、顔をあげた様子はいつもの元に戻っていたので、少し安心した。


「そう・・・なんだ?ごめんね、最上さんを巻き込んでしまって・・・・」

「いえ!」


あまりの必死な形相で即答したキョーコの様子に、蓮は表情を作るのも忘れて呆気にとられた。

それに気付き、キョーコもバツが悪そうに居住まいを正した。


「あの・・・・・謝らないでください・・・。こうなったのは、私のせいですよね?私・・・・ごめんなさい!」


「・・・・・・・・え?」


がばりと頭を下げるキョーコに蓮は目を白黒させる。

一体何が?!と驚くが、次にキョーコの言葉で合点がいった。


「私、昨夜・・・敦賀さんが待っていたのを知っていて裏口から帰っちゃったんです。だから、敦賀さん、あの寒空の中で・・・風邪をひいたのだって・・・ごめんなさい・・・」


「ああ・・・・・・・・君のせいじゃないよ。俺が勝手に待っていただけなんだから。それにちゃんと約束した訳じゃないし」


それは、キョーコが昨夜から自分に言い聞かせていた、自分への言い訳だった。

改めて蓮の口から聞くと「そんな訳ない」という気持ちと申し訳なさで、表情が翳る、




特に色々なモノが見えてしまった今は……


そんなキョーコの様子に今後は蓮が焦りだした。


確かに、知っていて故意に避けて裏口から帰ったという事実には正直ショックだったけど・・・・それでも最上さんが気に病む事ではないし、そんな事で気に病まないでほしい。


「君を想いながら待つ時間は苦じゃなかったんだ。だから本当に気にしないで。君には笑顔でいて欲しいんだ」


「でも・・・・・せめて、私があの時点で声をかけていれば・・・・」



尚も落ち込むキョーコに、蓮は徐々に頭の隅が冷えていくのを感じた。
さっきまでは、キョーコが目の前にいる事に浮かれていたけど、そんな状況に追い込んでいる自分に焦りを感じたのだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなに迷惑だったかな?」



「え?」

「君は今俺がこんな状態だから、そこまで気を病んでくれているけど…昨夜の時点では顔も見たくない程嫌だったから、帰ったんだろ?………ゴメン…俺…」

それなのに、こうして看病をするために残ってくれている。
彼女は何も悪くないのに、罪悪感を感じてまで…

俺は…気持ちを伝えたかっただけなのに、押し付けてしまったんだろうか…

「違います!」

今度は蓮の方が暗くなるのに、慌ててキョーコが声を挙げた。

「嫌…というよりも、戸惑う気持ちが大きかったんです…」

「え?」

「…私、敦賀さんに凄く失礼でした…」


私…ちゃんと「敦賀さん」を見ていなかった。
心のどこかで「アイツ」と重ねて見ていた……勝手に、同じに違いないって決め付けて…何も知ろうとしないで…

だから、「違う」事に勝手にパニックになって勝手に逃げ出して…

これじゃあ私、「アイツ」と同じじゃない。


それが、凄くショックだった…


「…最上さん?」

「とにかく、今回の事は私の不徳の致す所です!なので、ちゃんと看病させて貰います!」


敦賀さんは早く治る事に専念して下さい!と力一杯言われて、蓮の中をまた暖かいモノが満たしていく。

もう…本当に彼女は俺を元気付ける天才だ。




「……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えるよ。」

「はい!任せて下さい!」

あの時から焦がれ続けた彼女の笑顔。

それが、自分に向けられている事が嬉しいから


「今度はちゃんと防寒対策をして待っているね」

笑顔でした宣言に、最上さんの表情が固まったのも気にしなかった。

「…………あの、そもそも、別に待ってもらう必要は…」
「だって、嫌じゃなかったんだろ?」
「それは、そこまでは…という意味で…」
「最上さんに看病して貰えるなんて幸せだな。あ、泊まって行っていいからね。君の将来の家でもあるんだから」
「そ、それとこれとは話が別です!」

先に既成事実を作るってのもいいよね。という、蓮の呟きにとうとうキョーコはキレた。


前言撤回!!!!


この人少しは気にして貰うべきだったわ!!!