剣道の足さばきの基本は「すり足」と学びます。

 

これ自体を否定するつもりはありません。

 

しかし、現代剣道は、このすり足でさえ、後ろ足で蹴って動くことが基本になっています。

 

本来の日本武術は、後ろ足で蹴って強引に重心移動をするのではありません。

抜きにより移動を始めた重心に足がついてくるように身体を運ぶのです。

 

そのように動きますと、地面すれすれに足が運ばれたりもしますので、他人から見ると、あたかも足を擦っているように見える。

師の足さばきが擦るように見えたことをもって、「擦って動く」と解釈してしまったのだと思います。

 

「擦って動く」を基本にしてしまえば、地面の凹凸や砂利や石に着いた苔などに足を取られます(現代剣道は奇麗な床の上だけ上手ならいいので気にもされませんね。私の子供のころは神社の境内の砂の上で奉納試合をやったこともありましたが)

 

他人からはまるで地面を擦っているように見えるのは、重心移動に逆らわずに足がついていくからだと思います。

抜きにより重心落下が始まることは、位置エネルギーが運動エネルギーに変わるということですが、その運動エネルギーが消えないように足が運ばれるようにするわけですね。

 

一生懸命に足で体を前進させるのではないのです。重心移動に添うように足がついていくように足を運ぶのです。

すり足も、「そうする」ではなく「結果としてそうなる」動きが大切だと感じます。

 

迫力や力感がない方が「うまい!!!」ということになろうかと思いますが、現代は、剣道だけでなく色んなスポーツが迫力や力感を「すごい!!」とする価値観になっています。

 

スポ根漫画は今では「そんなスパルタはおかしい。変だ」と皆さんが理解できてきていますが、身体操作の方向性はまだまだスポ根漫画時代の延長線上にあるように感じます。

 

陸上競技などはかなり武術的な考え方に近づいてきているように感じますが、それよりも圧倒的に現代剣道が遅れているように感じます。

 

「剣道は武道だから変わってはいけない」という考え方がさらに遅れる理由となっていると考えますが、明治維新と二次大戦の敗戦で完全に変わってしまった後の剣道(西洋スポーツ的な身体操作)を「変わってはいけない」としてしまっているように思います。

 

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