『スプリング』恩田陸 | クラバートのブログ

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2010~すきまの時間に読んだ大切な本たち(絵本・児童書中心)のなかから選んで、紹介します。小学校の図書室を16年勤務後、現在も読み続けています。

クラシックバレエを「花束」、コンテンポラリーダンスを「樹木」に例える主人公・春(表題の『スプリング』ですね)を軸に、ダンサーへの作者の多大なリスペクトが感じられました。曲選びのセンスや童話の選択に少々首をかしげましたが、ダンサーへの作者のスタンスは終始崩れません。

 

個人的にはクラシックバレエの『ジゼル』の解釈が新鮮でした。春に「彼(アルブレヒト)はジゼルに自分を見ている。愛を失ったことではなく、おのれの無垢な時代との決別を嘆いているんだ。」P71と言わせていて、妙に腑に落ちました。

 

「卓越した音楽家やダンサーとそうでない者の違いは、一音、一動作に込められた情報量の圧倒的な違いだ。彼らの音や動きには、単なる比喩でなくそのアーティストの内包する哲学や宇宙が凝縮されている。」p352 これがテーマかな?

 

現実的には、もっと人間的でどろどろした世界だと思われますが、作者の観察力、知識量には拍手を惜しみません。