『アメリカーナ』再び | クラバートのブログ

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2010~すきまの時間に読んだ大切な本たち(絵本・児童書中心)のなかから選んで、紹介します。小学校の図書室を16年勤務後、現在も読み続けています。

 

本書について尋ねられて、再読致しました。単行本は2段組み500ページの長編ですので手渡す人を選びますが、私は大好き。買い求めて傍においてあります。

 

タイトルの「アメリカーナ」とはアメリカかぶれの意味です。主人公・イフェメルは、ナイジェリアから米大学に留学した女の子で、アメリカに着いて初めて自分は「黒人」だと自覚し「人種」を発見します。以降13年、アメリカで過ごした彼女の視点(外部)から人種差別、ナイジェリア人とアメリカ人の相違について、饒舌に語っていきます。

 

「フェミニズム」「人種差別」の側面から取り上げられることの多い作品のようですが、ある女の子の成長物語、恋愛小説として、気楽に読むこともできます。盛りだくさんの印象です。

 

日常生活の中で起こる些細な人種間の問題にハラハラドキドキさせられ、時に胸を鷲掴みされるような悲しい出来事もありますが、主人公・イフェメルのエネルギッシュで前向きな人柄と培われてきた知性が、散乱した心を上手に折りたたみ整えてくれます。折りたたむことのできない現実も残されます。「自分はこうするようにではなく、こうあるように育てられた」(上P356L-5~)と綴っています。彼女は自分に正直です。

 

白人の恋人カートと別れた後で、感じてきた人種問題をたどたどしく語ります(下P96L-3~)。後年、有名な人種問題を扱う有名なブロガーとして身を立て(下P156のブログ参照)、ナイジェリア帰国後はナイジェリアの「暮らしについて」意見を発信していきます。

 

私はナイジェリアといえば、ボコ・ハラムによる誘拐事件くらいしか知りませんでしたが、本書を通して、「エアコンのついた中産階級」や富裕層の暮らし・文化を覗き見できました。ウジェおばさんのしなやかな生き方が作品の軸にあるような気がします。ナイジェリアの入国審査官が初恋の人・オビンゼが帰国する際に言った言葉「それで、みんなへの土産は?」(下P88)の緩さもいい。

 

文庫

 

 

 

単行本

 

 

参考

『半分のぼった黄色い太陽』2007年 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 著 2010年 河出書房新社出版(同タイトル映画化2014年)内戦(ビアフラ戦争1967~1970)を背景に描いたラブストーリーです。