東洋医学では味の種類について「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹」の“五味”があるということをこれまで述べてきています。
本日は「鹹」味について述べたいと思います。
「鹹」とはどういった味を示すのでしょうか。昔の文字なので読めないし分かりづらいのですが、「鹹」は「かん」と呼びます。そして、「塩からい」ことを指す言葉です。
塩からい味の示す効果は、水が溜まってはち切れそうになっているものから水を抜く作用です。固いものを軟らかくする作用、緩やかな瀉下作用である潤下作用(便を軟らかくし、出しやすくする)に繋がります。イメージ的には、野菜を塩もみすると軟らかくなるし、浸透圧で水分も外へ出るといったことでしょうか。
代表的な生薬には芒硝(ボウショウ)や牡蛎などがあります。芒硝は塩類下剤とも言われるように便を軟らかします。便秘の方剤によく配合されます。また、お腹が硬く張っているときにも用いられます。牡蛎(ボレイ)はしこり等に対しての薬効をもつとされています。
食べ物ではいわし、めざし、しじみ、わかめなど、海のものが殆どです。海の、いわゆる自然の塩からさを持つものが鹹の食べ物です。
鹹味が不足すると、水が抜けることが出来なくなるので、むくみや排尿困難、便秘などの原因となります。しかしながら、摂りすぎることで水が必要以上に抜けていってしまうと、口渇や血流の悪化による高血圧などになりやすくなるということになります。
塩梅(あんばい)という言葉があります。「いい塩梅になってきた」といった感じで使われる、物事の具合や加減を表すときに使われる言葉です。昔の料理は味付けとして、塩と梅酢を使っていたことから、絶妙なバランスの味付けができたとき「塩梅がいい」と言っていたようです。
塩からさは塩梅よく、摂っていくようにしましょう。