先日、シナモンについての記事を書きました。シナモンは生薬としても用いられます。桂皮(ケイヒ)、桂枝(ケイシ)といった生薬で、漢方薬に配合されています。
桂皮と桂枝といった名前の違いがあるのは同じ植物の異なる部位を指しているから。桂枝はクスノキ科の常緑植物の若い細枝、またはその樹皮、直径1cm以下の枝を切断したものだとか、桂皮は幹の皮をはぎ取ったものなどと言われています。
桂枝は解表作用を持ち、体表を温める。発汗作用や利尿作用を強める。味は辛・甘、性は温。桂皮は作用が強く、温裏、すなわち内側を温める。腎陽の温補に優れる。味は辛・甘、性は熱。
書物やネットで調べると、その効果の違いなども色々出てきます。しかし、実際に市販の方剤を見てみると、たとえば桂枝茯苓丸。血(ケツ)の巡りを良くして、冷えや生理痛などを改善する方剤です。「桂枝」の名前が入っているのですが、実際に配合されているのは「桂皮」だったりします。そもそも、日本で流通している医薬品の品質規格の基準を示す規格書である日本薬局方に桂枝は載っていなかったりします。
長い歴史の中で、桂枝、桂皮の使い分けがあいまいになった部分もあるそうです。古典書物の写し間違いが伝わったり、解釈の違いや流派の違いだったりが影響しているようです。実際にどの部位をどのように処理し桂枝としていたか、などという根本的なところが、今では結構あいまいになっていたりするらしいのです。
植物の部位が異なれば含まれる成分や効能はもちろん異なってきます。現代の成分や薬理の研究は素晴らしいものがあります。現在も天然物分析の研究範囲では、植物の部位による使いわけや成分、薬理の研究は行われています。私も大学時代は、とある植物の「葉」の部分の分析を行っていたことを思い出します。
しかし、そんな技術がない中で、昔は明確に桂枝と桂皮を使い分けていた、と考えると凄絶なものを覚えますね。