世界で最も高価な古代コインのつづき。

 

2023年1月、古代コインを扱うロンドンのオークションハウス

ローマ・ヌミズマティクスのオーナー兼経営者であるリチャード・ビールが

古代コインとして最高値(手数料込で324万ポンド、約4億4000万円相当)を記録した

この金貨↓に絡んで逮捕されました。

https://www.numisbids.com/n.php?p=lot&sid=4154&lot=463

 

https://artnewsjapan.com/news_criticism/article/835によると

第一級および第二級の重窃盗罪、第一級および第二級の盗品保管罪、第四級の共謀罪

および、第一級の詐欺計画罪で起訴されました。

要するに

古代コインを略奪・保有し、そして、その古代コインの出所を示す書類を偽造した

と訴えられたわけです。

 

このリチャード・ビールは、元々、イギリス陸軍に所属していましたが

2009年、40歳代でコインディーラーに突然転身。

古代コインを専門とするオークションハウス、ローマ・ヌミズマティクスを立ち上げました。

イギリス貨幣商協会のクリストファー・マーティン会長によると

「全く未経験のままマーケットに現れ、すぐに名が知られるようになった。
1年も経たないうちに数百万ポンドの価値のあるコインを売るようになった・・・
一体(コインが)どこから来たのか、誰にも見当がつかなかった」そうです。

なぜ、古代コインと関りがなかった人物がこのようなことができたのか?

実は、共謀者がいたのです。

 

イタロ・ヴェッキ、リチャード・ビールが立ち上げたオークションハウスのコンサルタントで

件の古代コインの入手先であるともされているそうです。

彼はイタリア人のコインディーラーであり、最初は独立系ディーラーとして

その後はいくつかの大手コイン取引会社で数十年のキャリアを重ね

業界ではよく知られた人物だったそうです。

大手コイン取引会社には米国のCNG(Classical Numismati Group)も含まれ

1992年にギリシアのコインを無申告で米国に持ち込もうとして逮捕されています。

したがって、この人物こそが黒幕ではないかと思うのですが

上記の記事によると捜査継続中・・・未だに逮捕すらされていないようです。

 

ところで、この古代コインそのものは本物なのか?

実は、NGCで本物と鑑定されています。

そして、この古代コインに対するNGCのコメントは以下の通り。

「2020年にNGCはロンドンに拠点を置くオークション会社から評価のために

イードゥース・マルティアエ・コインを受け取り、広範囲にわたる調査の後

それが本物であると判断しました。

コインの真贋、およびグレードは、出所とはまったく別の問題です。

NGCがコインの出所について見解を述べることは一般的ではなく

本件でもそのようなことはしていません」

なるほど・・・ご尤もですが、ということはNGCで鑑定されたコインやメダルも

後になって”略奪品だから返せ!”と訴えられることがあるということになります。

事実、今回の金貨は押収されてイタリアへ送還が予定されています。

落札されたのは2020年10月、押収されたのは2023年2月ですから

落札者から押収されたと思われます。

果たして、落札者は落札代金を弁償されたのでしょうか?

手数料込で324万ポンド、約4億4000万円相当ですが・・・

 

古代コインの闇:略奪銀貨、本国へ還る古代コインの闇:Dr. Weiss逮捕事件

でも指摘した通り、古代コインの闇とは出所をめぐる闇

その闇は古代コインの落札者をも飲み込んでしまう恐れがあります。

 

PS

今回の古代コインと同じオークションにおいて

24万ポンド(手数料込で28.8万ポンド、約3900万円相当)で落札された

この古代コイン↓も

イタロ・ヴェッキからリチャード・ビールに渡ったものとされ2023年1月に押収されました。