稀少性が比較的乏しいアンティーク金貨の価格動向を検討しました。
今回は人気のモダン金貨、ヤング・エリザベス5ポンド金貨プルーフの価格動向を検討します。
ヤング・エリザベス5ポンド金貨プルーフの基本スペックは以下の通り(記事作成時)。
重量39.94g(金含有率0.9167)、直径36mm、カタログ番号KM924
発行年 発行数 鑑定登録数(NGC: Ultra Cameo / PCGS: Deep Cameo)
1980年 10,000枚 70UC/DC (28/22), 69UC/DC (194/190), 68UC/DC (45/66)
1981年 5,400枚 70UC/DC (55/25), 69UC/DC (98/102), 68UC/DC (27/34)
1982年 2,500枚 70UC/DC (41/25), 69UC/DC (90/60), 68UC/DC (21/12)
1984年 8,000枚 70UC/DC (74/42), 69UC/DC (228/146), 68UC/DC (32/28)
どの発行年でも69UC/DCの登録数が多く、特に、1980年と1984年が圧倒的です。
鑑定登録数のみを見ると1981年と1982年に大差はないのですが
落札価格は1982年が圧倒的に高い一方で
1981年は1980年・1984年とほぼ変わりがありません。
ですので、特年である1982年以外の69UC/DCの落札価格(手数料抜)を
オークション・ワールドで調べてみました。
結果は次の通り、2016年以前の記録はなく、グラフは各年の平均を示しています。
2018年に底値を形成し、2019年に少し回復した後、2020年に急回復
2021年には2017年を少し上回っています。
記録数はと言うと
2017年4枚、2018年4枚、2019年2枚、2020年5枚、2021年2枚。
落札価格の推移と落札記録数の推移
いずれもナポレオン3世無冠100フラン金貨AU58とは異なっているようです。
特筆すべきは、下落した2018年の翌年2019年に落札記録数が増えずに減っている点。
下落が余りに激しかったため
今のうちに売却してしまおうと考えるより、今は売り時ではないと出品を控えた結果でしょう。
2020年以降の高騰は理解できます、金地金価格の高騰に伴うものでしょう。
一方、謎なのが2018年の急落、その落差は前年から10万円を超えています。
金地金価格は下落してません、なぜ、人気のヤング・エリザベス金貨は急落したのでしょう?
2018年と言えば、自分がコイン収集を始めた年でしたが
その頃はアンティーク小型金貨を対象にしていたため
モダン大型金貨のヤング・エリザベス金貨には関心が全くありませんでした!
今から思えば、実に惜しい・・・
さて、海外ではどうか?
Heritage Auctionsでの落札価格(手数料込)を調べた結果が、これ↓です。
2016年から記録がありましたが、2020年の記録はありませんでした。
記録数はと言うと
2016年3枚、2017年2枚、2018年5枚、2019年5枚、2021年2枚。
これまた意外な結果です。
まず記録数、米国という世界最大のコイン・マーケットで2016〜2021年の総数17枚。
これは日本での2017〜2021年の総数17枚と同数です。
次に価格帯、総じて日本では25万円弱〜40万円弱、米国では2000ドル〜3500ドル弱。
ドル建て落札価格(手数料込)x 100が円建て落札価格(手数料抜)に相当しますので
5万円ほど日本の方が高値になっています。
そして価格動向、2019年が底値になっています。
ナポレオン3世無冠100フラン金貨AU58は2019年に価格が回復しているのに、なぜ?
更に言うと、米国でも2018年に急落しています。
いったい、2018年に日本・米国で何があったのでしょう?
以上、いかがでしょう?
モダン金貨の価格動向はアンティーク金貨に比べて不可解であるような気がします。
もちろん、たった1種類ずつしか検討していませんので、結論づけることはできません。
以下は、あくまで推測、発想の逆転です。
なぜ下がったのか?ではなく、なぜ高かったのか?を考えるべきかもしれません。
2016〜2017年にヤング・エリザベス金貨のブームがあったのではないでしょうか?
考えてみると、金貨のみならず、モダンコインはブームが生じやすいのかもしれません。
①コイン商は独自ルートで仕入れが可能
YouTubeの動画でモダンコインの方が調達しやすいという意見があります。
②見映えが非常に美しいのでコレクター初心者にも魅力的
高い現代技術による鋳造、人気が高いアンティークコインのデザイン復刻もあります。
③特に大型金貨なら価格自体が高いため、利益も大きい
利益率が同じなら、価格が高い方が利益は大きくなります。
ブームが去ってしまえば、歴史が乏しい悲しさ、あっという間に急落・・・でしょうか?