毎年恒例のびわ湖ホール・オペラへの招待に行ってきた。会場はびわ湖ホール中ホール、2023年10月15日。
オペラへの招待は中ホールでびわ湖ホール声楽アンサンブル中心にオペラを上演してくれる。今回はモーツァルト作曲歌劇『フィガロの結婚』。アリアも重要だが、アンサンブルも大切なオペラだから、アンサンブルのいいこの劇場では期待できそう。
このオペラへの招待、最初2公演だったのが、最近4公演になり、さらに今回は6公演。お客さんが入るか心配だったが、杞憂だったようで、少なくとも5日目の15日はよく入っていた。
ダブルキャストで本来はどちらも聴きたかったが、諸事情により、平野和さんがゲスト出演したキャスト一回だけ聴いた。
さて、公演だが、冒頭、フィガロが暴走してびっくりした。すぐ指揮に合わせるように歌ったが、どうなることかと冷や冷やした。
演出は、舞台の上に小物や出入り口を置いて、小物を色々変えて舞台を作るもの。いつものパターンやね。小物がなんか上等品のように見えて、それだけで舞台が映える。
そこに、ソリストのキリッとした動きで、舞台が締る。すばらしいね。
歌手で特によかったのは、フィガロ役の平野和さん。そりゃゲストだもんね。冒頭はどうなることかと思ったけれど、それ以外は、アリアでは力いっぱいの歌、アンサンブルでは皆に合わせた歌としっかり切り分けて、特に前者では美しい声と迫力ある歌で魅了してくれた。
伯爵夫人役の船越亜弥さんもふくよかで威厳のある声で、伯爵夫人にぴったり。音程もいい。
伯爵役の市川敏雅さんも迫力ある声でよかった。平野さんに負けない張りがあり声量、音程もばっちり。船越さんとともに、レベルが高い。
スザンナ役の山岸裕梨さんは、声質含め雰囲気はよくスザンナにぴったり。舞台上を走り回ってしっかり演技してくれた。
ケルビーノ役の山内由香さんは、もう少し中性っぽい声だったらよかったのにと思った。歌手に関しては唯一の不満。歌はしっかりしているんだけどね。
他の役の人もしっかり歌って演技して、どんどん舞台にのめりこんでいく。2幕の8重唱なんて最高やね。最後の市川さんの伯爵夫人にあやまる歌が頭から離れない。
指揮の阪哲郎さんは、指揮で強力に舞台を推し進めるというより、曲に寄り添ってしなやかに降るタイプ。それが声楽アンサンブルの歌に見事にあって、いい音楽を作っていた。
問題は管弦楽。日本センチュリー交響楽団のオケは、弦は弱い(管が強すぎる)し、音は濁るし舞台上の歌と美しさに追いついていなかった。もうちょっと頑張ってくれたら最高の舞台になったのにと思わずにいられなかった。
全体的にはオケに不満はあれど、歌もよく演技もよく指揮もよく、すばらしい舞台だった。オペラへの招待、どんどんレベルが上がっているような気がする。6日もの公演でもそこそこ全日にお客さんが入っているのも納得。別のキャストも聴いてみたかった。
これだけのオペラが気軽に聴ける環境があるというのはとてもすばらしいと思う。次は『地獄のオルフェ(天国と地獄)』か?これも1回は行きたいな。