ワーグナー作曲楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の感想  びわ湖ホール |   kinuzabuの日々・・・

  kinuzabuの日々・・・

      徒然なるままに日々のこと、考えていることを書き連ねる

びわ湖ホールの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』に行ってきた。会場はびわ湖ホール。2023年3月2,5日。2日間の公演の両方とも行った。





沼尻さんの芸術監督の最後、びわ湖ホールのワーグナーシリーズの最後、最後尽くしだが、有終の美を飾ってほしい。

舞台はここ数年の通りセミステージ形式で、舞台真ん中にオケ、後方のせり上がったところに合唱、舞台前面に歌手が歌い演技する。

今回の目玉は、ベックメッサ―ハープ。ベックメッサ―のリュートの音に合わせて作られた専用のハープ。世界に13台、アジアで1台しかないらしい。これがどんな音でベックメッサ―の歌を修飾してくれるのかとても楽しみ。


簡単にあらすじを書くと、
エファの父ポーグナーは歌合戦の勝者に全財産とエファを嫁に出すことを表明。騎士とエファは駆け落ちを決意するが、ザックスが止めて、騎士にマイスターの歌を教え歌を完成させる。ベックメッサ―が騎士の歌の歌詞を盗み、歌合戦で歌うが失敗、騎士が歌合戦で勝利し騎士とエファは結ばれ騎士はマイスターになる。


さて、有名な前奏曲。ちょっとだるいかな。後半は快調になったから、まあよし。

京響の管弦楽がむちゃくちゃ綺麗で、これを聴いているだけで涙が出てくる。特に弦の美しさが際立つ。ホルンも金管も極めて美しい。こんなホルンでこの曲を聴けるとはなんと贅沢なことか。

合唱はきれい。もっと迫力が欲しいかも。マスクしているから仕方ないか。


演出は舞台とオケと合唱が普通の構成と違っているが、文句もありつつもそれなりにオペラの舞台として成り立っていたのではないかと思う。広い舞台前面でしっかり演技をしながら、衣装も着て、強い歌を聴かせてくれた。合唱も迫力出すときには出す。この迫力が出るならもっと出してくれたらいいのにとも思った。


さて、歌手はまずコートナー役大西宇宙さんの迫力で舞台を圧倒。点呼がこれほどすばらしい音楽だとは知らなかった。ポーグナー役妻屋秀和さんの太い声もすばらしい。

ベックメッサ―役の黒田博さんも張りのある声で悪役らしくもありながら聡明。美しいベックメッサ―。これに音が外れて濁った独特の音を持ったベックメッサ―ハープが重なるから、音楽として、場面として極めてすばらしくて、喜劇として圧倒的なものを引き出した。

そしてわれらがハンス・ザックス役の青山貴さんは、高貴で高潔で、ザックスの人格を体感するような美声。聴くたびに声に張りがみなぎていく感じがする。日本の宝ではないか。

ダフィト役の清水徹太郎さんはしっかり声が出ていた。この役の難しいところをするりと歌いこなしていた。

エファ役の森谷真理さんとマグダレーナ役の八木寿子さんは十分役をこなしていたと思う。

ヴァルター役の福井敬さんは、私は苦手なんだが、事前に予想した通りの声。特に3幕の5重唱は2日は声が出すぎてアンサンブルとしてのまとまりがなかった。5日は抑えてくれたのかとてもよかったけれど。


沼尻さんの指揮は、指揮姿は激しいが、音楽はしっかりとツボを押さえた明快なものだった。管弦楽からこれほどまでの美しい音を引き出してくれて、もう涙腺が弱くなって。


以上、とてもいい公演だった。なんといってもオケと歌手やね。これだけのものがそろっていたら、日本人歌手中心でもこんなにもすばらしい公演が実現できる。これを実現したびわ湖ホールと沼尻竜典芸術監督と京響には感謝しかない。

これでワーグナーシリーズも終わり、芸術監督も沼尻さんから阪さんに代わって、いろいろ変化していくのだろう。それでも日本の誇るびわ湖ホールを守り、育て、さらにすばらしい劇場になるように願ってやまない。