パリで聴いた音楽の感想 バスティーユ シャンゼリゼ劇場 ガルニエ |   kinuzabuの日々・・・

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2022年5月28日から6月6日までパリに行って音楽を聴いた。その6演目の感想を一気に書く。

 

 

 

ヤコブ・ジョゼフ・オルリンスキのリサイタル シャンゼリゼ劇場 2022年5月30日

スーツ姿で登場。最初のパーセル等では、美しく力強い歌を聴かせてくれた。

ただ、プログラムの半分以上を占めるポーランドの作曲家の歌は、物静かで、彼の技量と魅力を考えると欲求不満。

最後とアンコールのヘンデル?は技巧を交えて大変すばらしかった。これを聴きたかったんだよね。ブレイクダンスというより宙返りも見せてくれたし。恐ろしいほど自然にビシッと決めた。運動能力の高さは抜群。

会場は大うけ。スタンディングオベーション状態になってた。




ワーグナー作曲『パルジファル』 オペラ・バスティーユ 2022年5月31日

指揮:シモーネ・ヤング
演出:リチャード・ジョーンズ

アンフォルタス:Brian Mulligan(3幕の声のみTómas Tomasson)
ティトレル:Reinhard Hagen
グルネマンツ:クワンチュル・ユン
グリングゾル:ファルク・シュトルックマン
クンドリ:Marina Prudenskaya
パルジファル:サイモン・オニール


修道院のような共同生活をしながら読書に励む人たちの集団。本に聖杯の力を与え、そこに生きる価値を求めるかのような演出だった。

1幕、3幕は舞台の幅の4倍ぐらいの大きさの装置が流れるように左右に動いていく。2幕は単純に舞台前面中央に照明が当たり、ベンチがあるだけの簡単なもの。単純なだけに演技は大変。


グルネマンツのクワンチュル・ユンは本当にすごい。朗々と力強くゆったりと語り継ぐ。前から実演を聴いてみたかったけれど、期待以上のいい歌手だった。

クンドリのMarina Prudenskayaも大変良かった。どんな状態でも絶叫調にならず、美しい声が鳴り響く。いい歌を聴けた。

グリングゾルのシュトルックマンはさすが名歌手。力強く張りのある声で魅了してくれた。すばらしい。

パルジファルのオニールも悪くはないが、パルジファルならではの無垢さがほしいところ。

アンフォルタスは残念ながらグタグタで、こんな状態でよく舞台に出られたなという印象。さすがに3幕はキャンセルし、代理(多分、Tómas Tomasson)が舞台袖で楽譜を見ながら歌う状態。

合唱もきれいで、オケも十分。ヤングの指揮は落ち着いたゆったりしたものだった。アンフォルタスは残念だったが、演出も面白く、いい舞台を楽しめた。といいつつ、半分ぐらい寝ていたのは秘密。




R・シュトラウス『エレクトラ』 オペラ・バスティーユ 2022年6月1日

指揮:Case Scaglione
演出:ロバート・カーセン
エレクトラ :Christine Goerke
クリソテミス :Elza van den Heever
クリテムネストラ :アンジェラ・デノケ
エギスト :ゲルハルト・ジーゲル
オレスト :Tómas Tomasson

舞台全面焦茶色で床は砂。この中でエレクトラが20人ぐらいの黒い服を着た侍女を従えて歌う。侍女はエレクトラの分身で、エレクトラの考えていることを具現化しながらエレクトラの周りで踊る。それが曲に綺麗にあって、大きな舞台になっていた。見た目は暗く単色だがとても美しい。

エレクトラのChristine Goerkeはとても強い声でこの役にぴったり。オケの野放図な鳴りにも負けず突き抜けていた。

クリソテミスのElza van den Heeverは強い声だけれど、決して絶叫調になることがなく終始美しい声で魅了してくれた。オケを越える声はすごい。

クリテムネストラのデノケもよかった。強い女声3人組が必要なこのオペラで十分な声で歌ってくれた。

エギストのゲルハルト・ジーゲル、オレストのTómas Tomassonもしっかり歌っていてよかったけれど、正直女声3人組の迫力が凄すぎたかな。

オケは歌手のことなど考えずに鳴り響く。これだけ鳴らしてくれるとしびれる。テンポも快調。声もこれを突き抜けるものだから、鳥肌が立って立って。本当にものすごい経験だった。




ブルックナー作曲交響曲第9番 シャンゼリゼ劇場 2022年6月2日

指揮:クリスティアン・ティーレマン
管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

曲目:ブルックナー作曲交響曲第9番

会場のあるアルマ・マルソーに着くまで大変だった。渋滞が激しく、バスの遅れを気にした?運転手が、アルマ・マルソーの一つ前のバス停から経路を外れてエッフェル塔までノンストップで行ってしまった。そこからアルマ・マルソーまで20分ほど歩いて戻った。

会場に入り整理係のおばちゃんに切符を見せると、もっといい席が空いているからそちらに行けと案内された。客の入りはよくないのか?


音楽はゆっくりとはじまった。ティーレマンはSKDの極めて精緻な管弦楽をしっかりドライブしながら淡々としたテンポによって極めて大きな音楽を構築していく。

ティーレマンがこれほどまでブルックナーの曲の下僕となって自らの色を出さないことに驚く。

最後は、指揮棒が下りて体を緩めるまで拍手が出なかった。聴衆も皆一体となっていた。聴衆の拍手が大きく止まらない。大変いい演奏会だった。




Mats Ek オペラ・ガルニエ 2022年6月3日
3つの曲からなるバレエ。演出はMats Ek。

一曲目:ビゼー作曲『カルメン』
Rodion Chtchedrine編曲?
指揮:Jonathan Darlington

二曲目:Another Place
リスト作曲ピアノソナタ
Piano:Staffan Scheja

三曲目:ラヴェル作曲『ボレロ』
指揮:Jonathan Darlington


バレエ・ダンサー

カルメン
カルメン :Marine Ganio
M :Hannah O'Neill
ドン・ホセ :Hugo Marchand
エスカミーリョ :Florian Magnenet
Gipsy :Adrien Couvez
Capitaine :Axel Ibot

Another Place
Soliste Femme :Ludmila Pagliero
Solistes Hommes :Stéphane Bullion

Boléro
男女多数。


この公演は人気が高く、連日売り切れ。たまたま数合わせのために買っていたチケットだけど、早くからコスパのいい席を取っていてよかった。


カルメンは自由に編曲されたカルメンの曲で踊る。もう一つダンスの趣旨がわからずなじめなかったが、激しいダンスは楽しかった。

アナザープレイスは大変すばらしかった。とくに女性ダンサー。キレがあり所作が極めて美しい。こんなバレエなら、初心者の私でも良さがわかる。男性ダンサーの滑らかな動きもよかった。

ボレロはちょっと落胆した。オケもひどい。これに歓声を上げる観客も理解できない。


全体的には、アナザープレイスはよかったが、他はもう一つ。ボレロは期待していたのだけど残念。




ロッシーニ作曲『セビリアの理髪師』 オペラ・バスティーユ 2022年6月4日

指揮:ロベルト・アバド
演出:ダミアーノ・ミキエレット

アルマヴィーア伯爵:René Barbera
バルトロ:Renato Girolami
ロジーナ:Aigul Akhmetshina
フィガロ:Andrzej Filończyk
バジリオ:アレックス・エスポージト

今回のパリ最後の舞台。と言いつつこれも数合わせで買ったチケット。何故かこの公演もほぼ売り切れだけど、他の日の同演目はそうでもない。土曜日って満員になりやすいのだろうか?


舞台は一面建物の壁が広がり、窓やら扉やら街のどこにでもある風景がある。でも、その3分の2は回転舞台で、回転すると壁の裏にある家の部屋が細かく構成されている。この中で上下左右に歌手が動きまわって演技をする。結構大変だろう。回転機構はとても効果があって、角度を変えることで場面の雰囲気をしっかり出していた。

歌手はとにかくAkhmetshinaのロジーナが圧倒的!迫力ある美しい声はオペラを聴く醍醐味そのもの。その辺の小娘みたいな衣装や動きも好き。今回がパリオペラ座のデビューらしいが、若い人がどんどん出てくる劇場はいいね。

Barberaの伯爵も若々しく輝かしい声ですばらしかった。まだ未成熟だけどどこかパヴァロッティをにおわせる雰囲気はとてもいい。

Girolamiのバルトロ、Filończykのフィガロ、エスポージトのバジリオ、3人ともしっかり声が出て美声で、演技も楽しい。

ロベルト・アバドの音楽は、早いわけではないけれど、痛快なまでにロッシーニの音楽を引き立てる。楽しい、明るい、爽快。こんな気持ちの良い音楽を聴けてとてもよかった。


最後にこんなに楽しい音楽を聴けてとても幸せ。やっぱりパリはいいね。