沼尻竜典オペラセレクション歌劇『カルメン』の感想 びわ湖ホール 2021年7月31-8月1日 |   kinuzabuの日々・・・

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びわ子「みなさーん!こんにちわーーー!」

おおつ「こんにちは。今日はびわ湖ホールの沼尻竜典オペラセレクション、ビゼー作曲歌劇『カルメン』の公演に来ています」

 

 

びわ子「カルメンって、人気でわかりやすくて初心者でも楽しめるってオペラだよね?」

おおつ「そうですね。でも今回は演出家アレックス・オリエが曲者のようなので、もしかすると変わった話になるかもしれません」

びわ子「変わった話って?」

おおつ「本来はちょっと前のスペインが舞台ですが、別の場所に変わったり、時代も現代に変わったり、舞台装置が抽象的だったり、結末が本来と変わったり、役の人の心象風景を何らかの手段で表したり、いろいろありそうなんですよ」

びわ子「知ってるカルメンとは違うかも、ってこと?」

おおつ「そうなるかもしれません。もっとも私はそんなほうが好きですが」

びわ子「ちょっと怖そうかな。でも楽しみかも」

おおつ「では、公演に行きましょう」



(7月31日と8月1日の公演を観ました)



おおつ「いかがでしたか?」

びわ子「バックダンサーの踊りにツボった。あの曲が聞こえると踊ってしまいそうや」

おおつ「ハバネラに合わせ踊ってましたね。単純な踊りですが、体に残ってしまいそうです。で、公演の感想はどうですか」

びわ子「2日目のテノールがすごかったわ。あとは1日目のカルメンと、2日目のミカエラ」

おおつ「ホセ役の村上敏明さんの歌は凄かったですね。迫力はあるのに透明な声。ぞくぞくしました。カルメン役の谷口睦美さんも美しくどすの効いた歌。ミカエラ役の石橋栄実さんもふくよかな声で堪能しました」

びわ子「まあ、別の日の人もよかったよ」

おおつ「ホセ役の清水徹太郎さんも実直な雰囲気でしたし、カルメン役の山下牧子さんも丁寧に歌っていました。ミカエラ役の砂川涼子さんの声も響きわたっていました」

びわ子「エスカミーリョは、どちらもよかったよ」

おおつ「森口賢二さんと、須藤慎吾さんですね。ダブルキャストなのでどうしても比較してしまいますが、どちらのキャストもレベルは高かったと思います。

 


びわ子「指揮とかオケとかはどう?結構気に入ったんだけど」

おおつ「沼尻竜典さんの指揮は、最初ゆっくりで後で盛り上げる感じの部分が何度かありました。最高だったのは3幕の間奏曲から3幕2場冒頭にかけて、緊迫感いっぱいで迫力満点。痺れました。東京フィルは、1日目はちょっと不満だったのですが、2日目は改善されたと思います。人数的にちょっと寂しいなとは思いましたが、これだけやってくれたら満足です」

びわ子「合唱は?児童合唱はノリノリやったな」

おおつ「新国立劇場の合唱は、ここぞの迫力がいい。大津児童合唱団ははじけて元気に体全身を動かしながら楽しい歌を聴かせてくれました」


びわ子「でやな、演出なんやけど、どやった?あんた、一番期待してたよね」

おおつ「すっごく面白かったです。全体を現代日本とし、1幕のたばこ工場はライブハウスに置き換えて、カルメンを女工から歌手に変えて、話を進めていきます。舞台装置は舞台正面左右上奥の5面に設けられた建設現場の足場のように見える枠組み。これは凄い迫力を生んでました」

びわ子「序曲で日本の警官が出てきてびっくりしたけど、兵隊さんの代わりに警官だったのね」

おおつ「現代の警官だから、現代の話という設定がわかります。児童合唱がフラッシュモブのようにキレのある動きを見せてくれたのには感激しました」

びわ子「で、あのライブハウスでいろいろ起こるわけで」

おおつ「ハバネラではバンドが演奏し(音は出ない)、バックダンサーが踊ったり、客席へのスポットライトでホセに狙いを定めたり、客がペンライトを曲に合わせて振ったり、カルメンがいさかいの原因になるトラブルを実際に起こしたり。見えにくいところは背面にビデオを投影して見えやすくしてくれました」

びわ子「スポットライトはおもしろかったね」

おおつ「スポットライトで客席を照らして獲物を探しているみたいでした。その様子がライブハウス後方に投影されていましたね」


びわ子「2幕、3幕1場は結構普通だったかな?」

おおつ「私は普通のストーリーに見えました。もちろん現代ですが。3幕1場は大きな衣装ケースが目を引きましたね。化粧台でオケの音楽に合わせてギターで作曲しているようなしぐさをしていたり、ミカエラが隠れたり、赤いワンピースを出したり。ちなみに運んでいたブツは盗まれてしまいましたね」

びわ子「3幕2場の最初は面白かったな。日本だから日本アカデミー賞かな」

おおつ「金色の照明が枠組みに当たり、雰囲気を盛り上げてから、舞台の客席側のレッドカーペット上をアーティストたちが歩き、ストロボの光を浴びます。そして舞台奥側にいる合唱団のメンバーからスマフォで写真を撮ったり、サインをもらったりしていました。闘牛士ではなくアーティストの晴れ舞台ですね」

びわ子「最後に闘牛士の格好をしたエスカミーリョとカルメンが出てくるが」

おおつ「闘牛士の格好はとても浮ているように見えました。場違いというか」

びわ子「行進が終わると一転、最後は暗くなったな」

おおつ「ホセがカルメンを刺す場面ですね。華やかな場面から一気に暗転。雰囲気が出てましたね」

びわ子「最後に枠組みが降りてきて終わったけどあれはなんなん?」

おおつ「多分、荒涼とした場から、ホセの後悔とか閉塞感とか、さらにはホセの牢獄への道を表しているのかなと思いました。舞台全体に設置された枠組みの広さから、あの狭さが徐々に現れる様になんかジーンと来てしまいました」

びわ子「ふーん、じゃあ、あの舞台全体を覆う枠組みのセットは何なん?」

おおつ「正直よくわからないのですが、広い舞台の中に閉じ込めるイメージかなと。カルメンを閉じ込める枠。また、最後の場面でホセとカルメンを小さい枠組みというか狭い檻に閉じ込めるので、その狭さを強調するためだったのかもしれません。それにしても、あの物量は凄かったです。客席側も枠組が上下してましたから、よくもまあ、重そうなものを上下させていたものです」

びわ子「演出についての感想は?」

おおつ「現代日本の音楽界に読み替えてストーリを構成してました。破綻もないしわかりやすい。この手の演出にしては、親しみやすいものになっていたと思います。スペインの背景に代わる枠組みは舞台に緊張感を生んでいたことで成功していたのではないかと」

びわ子「あれでわかりやすいんかね?初めて見る人は目が点かも。でもまあ面白かったけど」

おおつ「こういう舞台がもっと増えてほしいと思います。いい演出なら、今まで普通にあった場面や設定を変えることでオペラの見方を変えたり本質に迫ることができます」

びわ子「もっとオペラを楽しめると?」

おおつ「そうですね。あの場面はどういう意味だろうか?とか、そういうことを言いたかったのねとか、オペラを観た後でいろいろ考えたり議論したりもできます。これがまた楽しいのです。と言ってあくまでも個人の感想でしかありませんが。」


びわ子「そうか、じゃあ、またおもろい演出のオペラを観に行きましょうねー」

おおつ「行きましょーねー、というか、関西でも面白い演出をやってください!」