プッチーニ作曲歌劇『トスカ』の感想 びわ湖ホール 2018年7月21,22日 |   kinuzabuの日々・・・

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びわ湖ホールと新国立劇場との提携オペラ公演、プッチーニ作曲歌劇『トスカ』を観た。会場はびわ湖ホール。2018年7月21,22日。

 

 

東京の新国立劇場で7月に上演された公演の舞台、歌手、指揮者、オケをそのままびわ湖ホールに持ってきたもの。この『トスカ』の演出は2000年に制作、大規模な舞台装置が見もので、私も東京で同じ舞台を見たことがある。新国立劇場と同じ大規模な舞台機構と舞台スペースがないと上演できないそうで、それができるのがびわ湖ホールらしい。びわ湖ホール声楽アンサンブルも、東京公演に参加している。

 

歌手は大変充実している。トスカにキャサリン・ネーグルスタッド、カヴァラドッシにホルヘ・デ・レオン、スカルピアにクラウディオ・スグーラ。スグーラは聴いたことはないが、来シーズンにはMETデビューらしい。指揮者はロレンツォ・ヴィオッティ、知らない人だが若い。ピチピチした指揮を期待。

さて、開演。舞台上は、教会。上手にアンタバッティ家の礼拝堂、下手にカヴァラドッシが描くマリア像の壁が迫出し、背面は、教会のドームが広がる。それにしても大規模で豪華な舞台。

アンジェロッティも堂守もなかなかいいじゃんと思っていたら、カヴァラドッシの登場で度肝を抜かれた。『妙なる調和』で全開。美しく滑らかで迫力のある声。音程もばっちり。すばらしい。一方、トスカは21日は若干絶叫調だったが、22日は丁寧でかつ迫力ある歌だった。

そしてスカルピア登場。悪役声で憎たらしく、上手い。迫力も十分。こんなスカルピアを待っていた。

テ・デウムでは、舞台は、両袖が引っ込み、背面のドームが後退して、主舞台全面に広がる空間が現れて、そこにいろんな人が集まってくる。スカルピアは一人立って歌っては、うずくまって祈る。祈りながらトスカとアンジェロッティを得る喜びを歌い上げる。合唱、オケの迫力とともに、見た目にも耳にも壮大な伽藍が広がる。

す、すごい。すごすぎる。すばらしい。トスカの醍醐味やね。指揮は、もう一つ手探りなところもあるけど、テ・デウムの重心の低い遅いテンポは大変良かった。


2幕はスカルピアの執務室。上手にテーブル、下手にソファーベッド、舞台奥に執務用ディスク。テーブル奥のバルコニーから音楽が聞こえてくる。

ここでも歌手はすばらしかった。スカルピアは陰湿、カヴァラドッシは正直、トスカは清らか。でも、スカルピアがトスカを追い詰める場面はもっとやってもいいなと思った。

『芸に生き恋に生き』はもちろん心を打つけれど、もう少し泣きが入ってもいいかな。トスカがスカルピアを刺殺する場面は管弦楽が荒れ狂って、迫力満点。


そして3幕。背後に星空、大きな像が立つ塀、階段があって、全面に広場、下に牢獄らしい部屋が見える。塀、階段まわりでは兵士が見回りをしている。この兵士の動きがぎこちないのが気になった。上から檻が下りてきて、背後の塀、階段も一旦舞台奈落へ下がる。

そして、『星は光ぬ』。甘く切なく美しかった。最高!

最後、死刑台では、舞台がせり上がって、再び城の広場になった。舞台の動きに圧倒された。そしてあのなまめかしい音楽が続き、最後に銃声が響く。

カヴァラドッシの死を確認したトスカは舞台奥の塀から飛び降りるわけだが、舞台奥で叫ぶのでちょっとかわいそうかなという感じ。オケが激しく鳴って幕が下りた後、盛大な拍手、拍手、拍手。


今回の『トスカ』はオケ、合唱、演出もよかったけれど、何よりも、主要役3人に最適ですばらしい歌を歌える人を連れてきたということが大きいと思う。正直、他の日本人キャストとは格が違い、声量、安定感、そして何よりも役にはまりきっていた。こんなすごい状況でオペラを楽しめるとはもう最高の経験。

先日のバーリ歌劇場の時も思ったけれど、外国人の良い歌手は本当にすごい。新国立劇場が主役級をほぼ外国人でそろえる理由が少しわかった気がした。

オケも迫力満点で美しくすばらしかった。以前、新国で東京フィルの管弦楽を聴いたとき落胆した記憶があるので、こんなに変わるのかと思った。合唱も破たんなく、まとめていた。テ・デウムは大変すばらしかった。

指揮は、ここぞというところでテンポを落としてじっくり行くけれど、ときどき急に速度を上げて驚いた。なんとなくこなれてない感があった。

舞台は、まあ豪華で、舞台機構もたっぷり使って、魅せてくれるけれど、2回見たら飽きてしまった。オペラを初めて観る人に、オペラってこんなに豪華なのよ、と驚かせるにはもってこいかな。なお、3幕の舞台装置の移動の迫力を味わうなら、1階席の方がよさそう。

それにしても、すばらしい公演だった。海外からの引っ越し公演ではなく、国内からの引っ越し公演でもすごいものが観られる。いや、すごい世の中になったね。東京と関西との差を見せつけられたような気もするけれど、また今回のように、新国立劇場も関西で公演をやってください。高校生相手だけでなくてね。

あ、来年『トゥーランドット』、再来年『マイスタージンガー』をやるんだったか。(後者はびわ湖じゃないけど)

また、いいオペラをお願います!