大阪国際フェスティバル、ロッシーニ作曲『チェネレントラ』の感想 2018年5月12日 |   kinuzabuの日々・・・

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大阪国際フェスティバルの公演、ロッシーニ作曲歌劇『チェネレントラ』に行ってきた。会場は大阪中之島のフェスティバルホール。

 

 

海外で活躍する脇園彩さんというメゾの歌手を主役に据え、王子様のテノールも今を時めく小堀勇介さん。脇も名歌手が固める。指揮は園田隆一郎さんだから、ロッシーニはお手の物。楽しめること間違いない公演だ。

物語は、シンデレラの翻案だけど、継母や魔法使い、ガラスの靴は出てこないし、王子がチェネレントラを見染めるのも舞踏会ではなく、従者に変装したわが身をいたわってくれたからで、夢物語ではあるが話はもっと現実的になっている。


さて、我らが園田さんの指揮のもと、演奏が始まった。いつもながらきびきびした指揮で序曲から楽しい。

幕が開くと、床はテーブルクロスのようなオレンジと白のチェック柄の敷物が敷かれ、中央上手側に大きな本が、周囲に人間ほどの大きさのパイプ、マッチ、腕時計などが置かれている。背景に、子供の足が投影されて、舞台上にはほどなくネズミが現れて、本をめくり、その本のページの中から登場人物が現れる。

冒頭、最初のいじわる姉妹とチェネントラが三人で歌うが、みんなあまり声が出ない。こんなものかなと思っていたら、父親役の谷さんの美声が朗々と響き渡り、やっぱりこうだよなと納得した。

アリドーロの伊藤さん、ドン・ラミーロの小堀さん、ダンディーニの押川さんなど男声陣の気合が十分で、女声陣を圧倒していた。

不満は女声陣だけでなく、アンサンブルにも。登場人物全員で歌う時に、声とオケがずれ、存分に楽しめないときがあった。これは指揮の園田さんの責任だろうが、園田さんでもこんなことがあるんだと思った。

 

それでも一幕最後のドタバタは快調に終わり、不満はあったけど、ロッシーニってやっぱり楽しいなと思った。

 

 

で、二幕。舞台上はほとんど変わらないが、置いてあるものが少し違うようだ。


演出では、出てこないはずのガラスの靴が出てきて、アリドーロが魔法使いのような恰好をして、腕時計の針を12時にしようとしたら針が折れて、など、原作のシンデレラっぽくなっていた。腕輪ではなく靴を渡してこの「靴を履ける人を探して!」みたいな。

そして、ここでは何と言っても小堀勇介さんの高音に圧倒された。広い会場中に響き渡る声にもうメロメロです。

アンサンブルの乱れもなく、快調に音楽が進んで、気分の高揚がどんどん高まっていった。

そして最後、アンジェリーナとなったチェネレントラと、姉妹、父親と和解し絶頂の音楽が響き渡って、うわあ!と感激。

歌い終わった後、登場人物は本のページの中に戻り、本が閉じられて幕となった。


二幕は一幕で感じた不満が全くない素晴らしい舞台だった。これでなくちゃ!


演出は、テーブルに置かれた本の中の物語が、テーブルの上で繰り広げられるという展開だったのかと思った。本の外にいるのは、もともとそこにいるネズミだけで、彼女らが舞台を動かしていた。背景に投影された子供も、水をこぼしたら雨になるという、子供のいたずらだった。

めくられた本の題名を見てなかったのだが、シンデレラとでも書いてあったのかもしれない。ちなみにその下はピーターパンだった。

なお、演出で困ったのは、歌手がいいアリアを歌っているときに、合唱の従者たちがいろいろ動くことだった。アリアを存分に楽しみたいのに、注意がそがれたというか。仕方がないので、2幕のアリアでは目を歌手に集中して周囲で起こっていることを無視することにした。


ところで、今回、鳴り物入りで紹介されていたメゾさんは、もう一つ抜けるところがなかった印象。これが実力とは思えないので、調子が悪いとかあったのかな。もしそうなら、万全の状態で聴いてみたい。


とまあ、いろいろあったけれど、やっぱりロッシーニは楽しい。難しいだけ魅了してくれる美しいアリアと、楽しい高揚する管弦楽!もう最高やね。もっともっと公演の機会を増やしてほしいと思った。小堀さんのような得難いテノールもいることだしね。