コンヴィチュニー・オペラ・アカデミー in びわ湖 2013 の聴講まとめ(長文) |   kinuzabuの日々・・・

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(8月3日~8月4日前半)


おおつ「皆さーん、こんにちは!」

びわ子「こんにちわー」

おおつ「今回はびわ湖ホールに来ています。コンヴィチュニー・オペラ・アカデミー in びわ湖 2013の聴講です。」

びわ子「なんですか?それは?」

おおつ「ここまで来ていまさら何を言っているんですか?それでは説明しますと、ペーター・コンヴィチュニーというオペラ演出家がいまして、その人が毎年びわ湖ホールに来て、オペラの演出を実地で指導してオペラの舞台を作り上げるというワークショップを開催しているんですよ。今年の題材は、モーツァルトのオペラ《魔笛》です。」

びわ子「ふーん、よくわらないけど、そのオペラ演出家ってどんな人なんですか?」

おおつ「20年以上前から伝統的な演出を覆して世界のオペラ演出に革命を起こし、現在に至るまでその先端を走っている人です。こんな超一流の大御所が日本のびわ湖ホールに来て、オペラ演出をじっくり指導してくれるっていうのは、信じられないほどすごいことなんですよ。」

びわ子「へー、そんなにすごいことなんですか?よくわかんないけど。

おおつ「まあ聴講してみましょう。ちなみに、その辺のクラオタおやじを捕まえて、フランツ・コンヴィチュニーって知っている?って聞くと、知っていると答える人が多いと思いますが、その人の息子さんです。」


(地下一階へ)


びわ子「ここが会場のリハーサル室ですか???何ですかここは!いつも来ている小ホールの横じゃないですか。こんなところに入り口がある。ん!『コンヴィチュニー・オペラ・アカデミー in びわ湖会場、お入りください←』って書いてる。ここにはいればいいのかな?うわ、何ここ、明るくて広ーい。こんなところに別世界があったんだ。知らなかった。」

おおつ「私も初めてリハーサル室に入ります。大ホールの舞台をイメージしているんでしょうか?床は木で歩くと音がよく響きますし、天上は照明機器が一杯。壁際には音響や光、映像、字幕のスタッフが並んでますね。」

びわ子「わー、周りの人がはなやかー、ハグなんかしてるし。知り合いが多いのかな。」

おおつ「なんかまぶしいですね。みんな若いし、雰囲気が華やか。華やかなのは照明のせいもあるでしょうけどね。なんか来てはいけないところに来た感じがします。」

びわ子「私は若いからいいけど、おっさんは似合わないですね~」

おおつ「それには同意します・・・」

びわ子「あ、怪しい人おっさんが来た。ごっつい体に白髪を後ろで束ねちゃって。クロックス履いてる。」

おおつ「あれがコンビチュニーですよ。写真ではよく見ました。さて始まりです。何か言ってますよ。」


『私はありのままの《魔笛》を作りたいと思っています。夜の女王は舞台の隅で椅子に座って飲んだくれています。従来からある三日月に乗って現れるメルヘンチックな物語の中の女王ではなく、夫を失い、娘をさらわれた一人の母親です。そんな人は酒を浸りになってもおかしくありません。』



びわ子「へ?夜の女王が酒浸り?威厳も何もないですよね?」

おおつ「これがコンヴィチュニーの真髄ですよ。『これまでの解釈にとらわれす、物語の本質にそって設定を一から見直す』と言われますが、よく考えると夜の女王は人間関係的に恵まれてません。そして、ここでは3人の侍女にも見限られているようです。このような状況では酒浸りの夜の女王は説得力があります。」


『まずは受講者の皆さん、聴講者の皆さん、舞台へ来てください』



びわ子「は?聴講しに来ただけなんですけど」

おおつ「早速来ました。コンヴィチュニーは見学するだけの聴講者も容赦なくオペラに巻き込むようですね」

びわ子「歌手と一緒に大蛇となってタミーノを舞台客席側に追い詰めるんだ。なんか照明があたっていて、本当に舞台に立っている気がする~」

おおつ「この場面、一幕の通し稽古で見たら、両側からタミーノを中央に追い詰めるようになってましたね。どんどん変わっていくようです」

びわ子「次は何があるんだろ?また何か言ってる。」


『ここで、フェルマータ。さてなぜフェルマータがあるんでしょう?ここで場面が変わるから、そこをつなぐ何かを挿入してほしいとモーツァルトは思っていたのではないでしょうか?』


びわ子「フェルマータ???フェルマータって音楽記号じゃないの!」

おおつ「つっこみどころととらえているんでしょう。音楽記号といえば、フェルマータだけでなく、フォルテや3連符にも言及してましたね。コンヴィチュニーは『演出でやることは楽譜の中に全部書いてある』と言ったという話を読んだことがありますが、こういうことなんだなと思いました。」

びわ子「演出も楽譜に書いてあると?」

おおつ「楽譜を読み込んで、どんな音楽記号があって、その意味を自分に問いかけているんでしょう。3つのフェルマータで、三人の侍女がタミーノを巡って口論になったり、タミーノを誘惑して身だしなみを整えて客席に笑いかけたり、大蛇を抱えてタミーノのそばにそっと置いたり。物語がどんどん生き生きとしてきたように思います。」

びわ子「今度はタミーノの出番だ。あれ『僕は王子様だ』だって、笑っちゃうわ。」

おおつ「『能天気だからこんなことを言い笑い誘う』らしいです。『能天気だから肖像画を見ただけでパミーナに恋してしまう』と言うことになるみたいですね。今度は歌手に何か言ってますね。」


『死んでいると思っていた人が生きていると知った時、どれだけうれしいと思うのか?周りの人と抱き合って喜びあいたいと思うだろ。サッカーも一緒だ。ギリギリのところで点が入ったら、知らない隣の席の人と抱き合って喜ぶだろう。真剣な気持ちだからこそ喜ぶ。それは人間の本能。』


びわ子「わ、タミーノの人の動きがむっちゃ変わった!客席の女の二人に抱き着いてる!パミーナ肖像画代わりのプロジェクター画像に飛び込んでる!客席にいるもう一人のタミーノ役の人と肩を組んで歌ってるー!うわっ、なんかこっちまでうれしくなっちゃう感じ!」

おおつ「タミーノの人と客席とが一緒になって、舞台を作っているような感じですね。他にもいろいろキーワードがありました。三人の侍女がタミーノに迫るときも、客席に『私がふさわしいとアピールして味方につける』とか、『客席に隠れてタミーノといちゃいちゃする』とか。」

びわ子「え、なになに!、パパゲーノがピアノの下にもぐったり、大蛇を見た時に客席に逃げて、客席の人に『死んでいるよね』と確認したり、指揮者やピアニストにも絡んでる!」

おおつ「おもしろいですね。多分、コンヴィチュニーは、演じる側と演奏する側、客席とすべての垣根を取り払おうとしているんじゃないかと思います。」

びわ子「怪しいおっさんが一言いうと歌手の人の表情が変わっていくような気が、」

おおつ「いい加減名前を憶えてくださいね。確かに最初は固かった歌手の顔がどんどん、生き生きとした人間らしいはつらつとした表情になってきましたね。ほんと面白いです。」

びわ子「面白いのは確かだけど、すぐに止めて何度も同じところを繰り返してる。なんか退屈になってきた。」

おおつ「時間をかけて徹底的に自分の思ったことを実現しようとしてますよね。また止まった、とは思いますが、エネルギーに満ちてます。コンヴィチュニーも、楽しんでいるんじゃないでしょうか。こんなにじっくりと好きなようにオペラを作って、若い人の成長がはっきりわかる。実際のオペラ演出では、こんなに詳細に演技指導できないでしょうから。」

びわ子「でもさ、一つのアリアやセリフでどんだけ時間かかってんの!ホントに最後までできるの?」

おおつ「それは最後のお楽しみ。確かに1日半で一幕の夜の女王のアリアの最後まで行かないって、ちょっとすごいですね。夜の女王のアリアは最後まで見たかったです。」



(8月10日~8月12日前半休憩時)

おおつ「仕事があったので、五日開けて再度聴講です。」

びわ子「言い訳から始まりましたねー。今日はパパゲーノと弁者のやりとりからかあ。最後まで行くのかな。え?パパゲーノはエンターテナー?どんな設定なのよ?弁者と合わせて2人二役?なんかもうさっぱりじゃん。」

おおつ「間が空くとわからなくなりますね。詳しくはここに中央大学の森岡先生が経過を書いてくれてますよ。 どうやら、試練に不合格だったパパゲーノはエンターテナーとしての道を歩むことになるそうです。でもそれも長く続かず、恋人も見つからず、自殺をしようと思うわけです。人生に疲れたのでしょう。」

びわ子「なんかリアリティあるわあ。おおつさんも仕事上手くいってないし、友達もいないし、人生に疲れてしまいますよね。」

おおつ「うるさいわ。他人の人生に重ねるんじゃないよ!まあ、そういうリアリティを出すように考えているんだと思いますよ。

びわ子「あら、また歌手の動きにいちゃもんつけてるわ。童子が掃除婦として掃除機もって現れて、歌う時に掃除機の音がうるさいから、歌う時だけ電源を切ること、でも切り方は自然に、例えば『調子が悪いね、これ』って感じで、って?なんじゃそりゃ。掃除機もって現れる童子っていうのもあれだけど」

おおつ「いやまあ、掃除機を持ってエンターテナー・パパゲーノの客席の掃除をさせて、掃除の最中に客席に伏して倒れているパミーナを見つける、という設定ですからね。観客⇒ゴミ⇒掃除⇒パミーナ発見、とそれぞれつながっているんですよ。

びわ子「童子が掃除婦って、わけわかんない。設定が強引じゃなの?」

おおつ「童子が掃除婦なのは、『自殺は神のおとがめがあります』のセリフはキリスト教的に童子が言う言葉じゃないから、大人の女性に言わせる。それも人生をよく知った達人に言わせたいとなると、掃除婦になるそうです。なるほどと思いますよね。」

びわ子「ふーん、でもなんか騙されている感じがするわ。どこかおかしなところ探してみよ」

おおつ「勝手にしてください。」

びわ子「あ、なんかトラブル発生。ちょんまげおやじが怒ってる『君はどこでこの歌を学んだのか?』だって?」

おおつ「ちょんまげおやじって誰ですか?」

びわ子「あ、でもパミーナの人も楽譜通りです、と返してる。結局楽譜通りでごっついおっさんが小さくなって言い訳してる。こんなこともあるんだ。」

おおつ「無視されちゃいました。でもホントすばらしいですよね。いくらコンヴィチュニーでも間違いはあるし、筋の通らないところもあるでしょう。そこにしっかりくらいついてこそ勉強になるのではないでしょうか。

びわ子「そうですねー、みんな頑張ってね。でも、なんか今日は進行が速いような。」

おおつ「さすがに時間を合わせるように急いでいるんじゃないですか?でも、向こうで通訳を連れて歌手たちと話をしてますから、歌手たちには指示しているようですよ。」

びわ子「あ、やっと終わりだ。最後はあっという間に終わったなあ。でもあと一日半あるけど、どうするんだろう?」


『それではこれから二幕の通し稽古を行います。時間があればその後に一幕の通し稽古も始めます』


びわ子「え、なんか唐突。でも見られなかった部分が見られるならうれしいな。」

おおつ「発表会前に何とか通し稽古をできるようですね。時間を合わせてくるのはさすがプロ。」


(1幕と2幕の通し稽古)


おおつ「通し稽古は見ることができましたが、こちらの都合で発表会を見られませんでした。残念でした。」

びわ子「どこに行ってたんですか?」

おおつ「ええっとですね、ちょっと遊びに、、、夏休みなんで・・・」

びわ子「みんな真剣に受講、聴講しているのに、のんきなことで。

おおつ「ううう、すみません・・・」

びわ子「通し稽古では、おおつさんは特に二幕の童子が食べ物を持ってくる場面に感激して、発表会でもう一度見たかったって悔しそうでしたね。」

おおつ「う、う、そうなんですよぅ、、、3人の童子(女性)がメイド服を着て食事と飲み物をタミーノとパパゲーノに渡すの。3人合わせて踊るようにふりをつけて笑顔満載で歌うんです。舞台がキラキラ輝いて見てるだけで幸せでした。通し稽古で一度見れただけよかったのですが、あれをもう一度見たかったーーー」

びわ子「一番の感想がそれかよ?違うだろ!メイド萌えかよ!だからおやじは・・・」

おおつ「・・・」

びわ子「それで今回の《魔笛》の演出はどういう内容だったんですか?」

おおつ「コンヴィチュニーの説明で大体分かったんですが、夜の女王軍団とザラストロ教団の戦いじゃないでしょうか。どちらもタミーノを取り合います。そしてどちらも解体寸前です。解体寸前の2つの教団がタミーノを救世主として団体の存続を計ろうという話だと思います。」

びわ子「タミーノは引っ張りだこですね。だから3人の侍女は色仕掛けで迫るんだ。」

おおつ「能天気なタミーノは簡単に夜の女王軍団に取り込まれますが、ザラストロ教団にもすぐ教化されます。でもザラストロ教団は簡単に入信を認めず、試練を経て入団を認められる。一緒にいたパミーナは入信を拒否し、解体寸前だったザラストロ教団を解体するということでしょう。」

びわ子「タミーノは能天気かあ。駅前で誰かにつかまっている兄ちゃんをよく見ますよね。あんな感じ?」

おおつ「そんな人は能天気じゃなくて素直なんです!そして、夜の女王も求心力を失い解体。最後に夜の女王とザラストロが残されて終わりです。勝つのは夜の女王でもなくザラストロでもなく、人間そのものなんです。」

びわ子「パミーナはどういう役割だったんですか?」

おおつ「パミーナは、コンヴィチュニーも言ってましたが、革命者であり解放者だったんですよ。パミーナは強い意志を持った女性として描かれ、二つの団体に翻弄されるタミーノを救ったのではないでしょうか。そしてザラストロ教団員を教団の呪縛から解放し、1人の人間として生きる道に導いた。」

びわ子「この演出の中心人物ってことですか?で、パパゲーノはどこに行ったんですか?」

おおつ「彼は、最初から最後まで普通の人間として出演していたんです。夜の女王軍団でもない、ザラストロ教団でもない、試練にはたえられない、酒とご飯と女の子が好き。」

びわ子「おおつさんと一緒ですね」

おおつ「もう少し持ち上げてくれてもいいんじゃないかな・・・で、コンヴィチュニーも言ってましたが、普通の人間として普通に幸せになるんです。仕事に行き詰ったりするけれど、パパゲーナと結ばれて、子宝に恵まれる。そういう普通の人の人生を、タミーノの成長にからませているのだと思います。試練を経たタミーノや知性あるザラストロとは道は違うけれど、普通の幸せも一緒にある、そういう人生も素晴らしいということでしょう。」

びわ子「確かにそんな感じでしたね。あれ、モノスタストスは?」

おおつ「モノスタトスはタミーノの正反対の存在ではないでしょうか?出自は悪いし、ザラストロ教団から追い出され、夜の女王軍団へ行く。それも見返りを求めるためです。タミーノは王子様で夜の女王軍団からザラストロ軍団へ行く。修行をしてまで自ら行くんです。そしてどちらも最後は一人の人間としての道に進む。人間として生きる道は誰にも閉ざされてないんです。」

びわ子「ほんとかな?まあいいか。演出で特に印象に残ったところはありますか?童子以外で」

おおつ「童子以外かあ、、、えっと、まずは、夜の女王の登場で三人の侍女が『女王様のお出ましです』ではなくて、『きったー!!こわいー!』と逃げ惑うところですね。こんな展開になるとは想像すらしてなかったのでびっくりしました。」

びわ子「ホントに逃げ惑ってましたね。酔っぱらった夜の女王もなんか怖かった。存在感ありあり。」

おおつ「次に、一幕のパミーナとパパゲーノがはじめて出会った場面で、パミーナが『ならどうして(タミーノは)来ないのよ!』って言ったところでしょうか。そりゃそうですよね。パパゲーノは来れるのにタミーノが来れない理由がわかりません。」

びわ子「合コンであの人が来るというから行ったのに、いざ行くと欠席だっていう、あの残念感みたいな。」

おおつ「よくわかりませんが、、、他には、2幕最初のザラストロの日本語通訳付き英語演説ですね。ぶったまげました。知性ある世界でしょうか?そして、パパゲーノとパパゲーナの二重唱。子供が次々生まれるのをパミーナの股から童子がくぐって出てくるって楽しくてよかった。びわ子さんはどうですか?」

びわ子「私も三人の侍女みたいにイケメンといちゃいちゃしたいですー!」

おおつ「そうきましたか、じゃあ、キャビンアテンダントになるとか。三人の侍女がセリフに合わせて非常経路案内の動作をするところなんて爆笑でしたよね。」

びわ子「むつかしー、それで、怪しいおっさんのコンヴィチュニーについてはどう思いましたか?」

おおつ「名前が出たと思ったら枕詞付ですか?で、まず、楽譜やセリフを読み込んでそれに合わせて演技をつける、徹底ぶりが凄かったです。フェルマータとか、フォルテとか、三連符とか。」

びわ子「フェルマータが来たら楽しそうでしたね。『さておなじみのフェルマータです』なんて」

おおつ「次は、リアルな演技を求めること。時間があるときに動きがないことを徹底的に嫌う。動きがわざとらしいとダメを出す。何故その動きになるのかを追求する。『動きには必ず理由がある』みたいな」

びわ子「TVドラマの見すぎですよ。やっぱり福山雅治ってかっこいいですぅ!」

おおつ「そして、舞台と演奏者と客席との距離を縮める。客席に向かってアピールする、客席に隠れる、客席の人と抱き合う。指揮者やピアニストに絡む。客席が舞台に反応する。女性蔑視のせりふに対して客席がブーイングするとか。」

びわ子「中央前列に座っている女性が歌手の標的になってましたね。」

おおつ「私はその辺にいたんですがね。何もありませんでしたよ。」

びわ子「何かやってほしかったんですか?」

おおつ「ぼそっ(女の人に絡んでもらってもよかったかも)」

びわ子「なんか言いました?」

おおつ「そして、一番すごいなと思ったのが、歌手に出す指示の比喩の巧みさです。

タミーノがパミーナの肖像がを見たときの喜び方には 
『サッカーで点が入った時に他人でも周りの人と喜ぶだろ』


三人の童子が出てくるときの飛び出し方では
『映画館で痴漢に遭ったように子供らしくやんちゃに飛び出す』

パパゲーノとパパゲーノが仲良くするときに、子供も喜ぶ。なぜなら、
『子供がうれしいのはお父さんとお母さんが喧嘩を止めて仲良くしてくれること』

一人取り残されたザラストロに対し周りの人の思いは、
『人の不幸は蜜の味』と思う感じ。

など。他に公開できないような比喩も出ましたけれどね」

びわ子「キラーパスを通す感じですね。あの怪しいおっさんは演出以外にいろいろ言ってましたよね。」

おおつ「
オペラ公演の95%はばかげてる。でもオペラはばかげてない。ばかげたものにならないようにするのが演出、説得力』
説得力はホントに大事ですよね。このワークショップで痛いほど実感しました。」

びわ子「わたしも説得力を磨いて、あのかっこいい人を洗脳しなきゃ。私を好きになる~、好きになる~」

おおつ「2幕の終曲について

『音楽はバッハのオペラのよう。バッハはオペラを書いてないが、バッハのオペラからの引用と言っても誰も疑わない』

音楽については他にも
『モーツァルトの笑い声が聞こえる』
なんて言ってましたね」

びわ子「受講していた方々についてはどうですか?」

おおつ「ソリストのみなさんの歌は本当に素晴らしかった。今の若手の歌手って力むことなく自然に声を出しているんですね。演技もコンヴィチュニーの一言でどんどん良くなり、最後は生き生きはつらつとしていてびっくりです。オペラを作るってこういうことなんだと少しわかった気がしました。」

びわ子「スタンドから転げ落ちるように言われた人なんか、本当にやりましたよね。」

おおつ「客席も沸きましたね。」

びわ子「最後にこのワークショップについてどう思いましたか?」

おおつ「オペラ演出で世界の最先端を行く人がオペラを作る過程をしっかり体験、実践できるという、まずお目にかかれないすごい勉強会ですね。発信される情報量も極めて多く、若い歌手や演出家にとってはこれ以上の体験はなかなかできないんじゃないでしょうか。オペラを作る過程がここまで緻密なこと、言葉ごとフレーズごとに、こういうことだからこうするんだと信念、それを実現する説得力の必要性を強く感じました」

びわ子「でも、いろいろ状況によって動きを変えてましたよね」

おおつ「そういう柔軟性も必要なんでしょう。ある限られた場で、どうすれば最善のものができるか、常に考えているのでしょう。」

びわ子「通訳の方がとてもわかりやすく日本語訳してくれて助かりましたー

おおつ「すごかったですよね。あの通訳があるから、このワークショップを何倍も楽しめたんじゃないかと思います。」

びわ子「客席からドイツ語がポンポンでてくるのもすごい世界でしたねー」

おおつ「ホントこれも私にとっては別世界です・・・」

びわ子「いいことばかり言ってますが、何かぶつぶつ言ってませんでしたか?言い残したことがあるんじゃないの?」

おおつ「ううう、じゃあ言っちゃうけど、まず、歌手のソリストの半分がびわ湖ホール声楽アンサンブルの人っていうのはどうなんでしょう?どうやってソリストを選んでいるのかわからないし、びわ湖ホールが主催だからこれでいいのかもしれませんが、これだけのワークショップを開いているんだから、もっと門戸を開いてもいいんじゃないかと思いました。」

びわ子「夜の女王と童子のソリストでオーディションの人が多かったですね。」

おおつ「次ですが、ソリストの人はもっと自分を主張してもいいように思いました。コンヴィチュニーの指示に任せているかのよう。いろいろ自分からやっていた人もいましたが、コンヴィチュニーともっともっと議論してはどうか。時間が十分あるし、非公開なのでそれができる場だと思います。」

びわ子「パミーナの人が楽譜通りに歌っていることを主張したのが印象に残りました。」

おおつ「最後に、もっとこのアカデミーのことを宣伝して受講者、聴講者を増やしてほしい。オペラ公演にかかわりたい若い人材はもっともっといるのではないでしょうか?ホントは私みたいなただのオペラファンが聴講するようなものではないと思うんです。もちろん私もすごく衝撃を受けて勉強になりましたが、日本のオペラ界の役には立ちません。日本のオペラをしょって立つ、そういう気概のある人にどんどん受講、聴講してほしいと思いました。」

びわ子「ありがとうございます。息が上がっていますから落ち着いてくださいね。」

おおつ「ぜいぜい、びわ子さんは何かありませんでしたか?」

びわ子「私はお尻が痛かったです。」

おおつ「あの椅子はちょっとね。よく知っている人はクッション持参でした。それにしても情報量が多かったです。見直すのに相当時間がかかりました。ここに書いているのもほんの一部です。こんなに長いブログなのに」

びわ子「でも私らは10日のうち4日も受講してないですよ。」

おおつ「だから、真剣に10日受講、聴講している人は大変だと思いますよ。昼に集中して、昼休みや終了後もさらって、夜に復習なんてしていたら、身が持ちませんよ。

びわ子「東京からきてたらホテル暮らしですからね。おうちが恋しくなると思うな。」

おおつ「それでも、勉強の場としては最高じゃないでしょうか。この経験を活かしてこれからもいいオペラを制作してほしいですね。」

びわ子「私たちもとても楽しめましたよね。」

おおつ「ほんと面白かった。もっと深くオペラ公演を楽しみたいと思いました。私は今回の聴講のため、読めない楽譜を見たり、なんども音楽を聞いたりしましたが、一つのオペラにこれほどまで向き合ったのは初めての体験でした。それを含めてとても面白かったです。」

びわ子「また来年もあれば聴講を申し込むんですか?」

おおつ「開催されるなら申し込むでしょうね。でも、聴講許可されたらされたでなんか複雑な気分になるかもしれません。」

びわ子「まあいいじゃん。その時はまた楽しめば。んー、もっともっとオペラを観たくなってきたぞー」

おおつ「私もそうです。だから皆さんもまたオペラを観にいきましょーねー」

びわ子「オペラを観に行きましょーねー」