フィリップ・ジャルスキーのリサイタル in 大阪(いずみホール) |   kinuzabuの日々・・・

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今日はジャルスキーとアンサンブル・アルタセルセのリサイタル。

開演前に会場を見渡すと、ほとんど一杯。客が入らないんじゃないかという心配は杞憂だった。

プログラムはオール・ヴィヴァルディで、前半はジャルスキーは宗教曲、後半はオペラアリアを歌う。それぞれ間にオケだけの演奏が入る。

前半の宗教曲はモテト《闇の恐れのあまりにも長く》と《ニシ・ドミニス》の2曲。どちらも長く、歌い続けるのは大変だけれど、あるときは力強く、あるときは優しく柔らかに歌う。そして、ノンビブラートで同じ音を長く伸ばす。音程が乱れず、震えの全くない極めてまっすぐで美しい声。うっとりするしかない。でも、いずみホールの残響の長さにより、残響の震えが声に重なってしまい、音を不明確にする。これが少し残念だった。

後半のオペラアリアは4曲で、1曲目と4曲目は激しい歌、2曲目と3曲目にしっとりした歌を歌った。1曲目は少し疲れが見えたが、それ以降は美しい声を会場に響かせて十二分に楽しませてくれた。

そして、プログラム最後は《勝利のユディタ》の「松明と舵で身を守り」のアリア。これを歌ってくれるのを知らなかったので、プログラムを見たときにガッツポーズ。彼はこの早いパッセージが続く力強いアリアを完璧に歌いきった。最初からもうめろめろ。終わってからブラボー!もう最高の気分。


一方、オケはもう少し何とかならないか。ジャルスキーが歌っているときは気にならないけれど、オケだけのときは、5人いるバイオリンのピッチがばらばらだし、ボウイングが強引なのか、ギシギシした不快な音を出す。2曲ともコンマスがソリストだったが、やはりピッチが合わない。後半のバイオリン協奏曲にいたっては、ソリストがボロボロで、特に第3楽章の長大な独奏では、ビッチの合わない不快な音が永遠に続くのかと思うほどだった。もう拷問である。

これにブラボーが出るから不思議だ。テクニックは認めるが。


とまあ、オケとコンマスで悲惨な思いをしたが、ジャルスキーの歌はすばらしかった。甘いようで男臭くもある不思議な声。力強くて、弱音もばっちり。なんといっても音程が全く乱れない。カウンターテナーでこれというのはもう信じられないぐらい凄いことだと思う。

また是非とも来日して、楽しませて欲しいと思ったリサイタルだった。