”労働集約型の発展途上国と化していった日本” | よくいうかいえ ( Cahier)

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古布リメイク作家のつれづれ日記

今日も三橋貴明氏のブログで政治・経済を学びます。

労働集約型の発展途上国と化していった日本

 何か、未だに、
「安倍政権で就業者数が増えたから、実質賃金が減って当たり前だ!」
 と、名目賃金や平均賃金と混同(わざと?)した安倍政権の経済政策擁護論がありますが、何度も何度も書いていますが、実質賃金は二つの要因でしか決まりません。
 すなわち、「生産性」と「労働分配率」です。


 実質賃金は、金額の絶対値ではなく「指数の動き」を見る指標です。実質賃金を見れば、生産性と労働分配率の状況が分かります。
 また、生産性は「生産量」で考えると分かりやすいです。

 

 以下の例では、実質賃金については「金額」で示していますが、重要なのは「動き」です。賃金水準を金額のみで見ると、物価の影響を受けてしまうため、「実質」賃金にはなりません。
 
【企業A】
 売上 1000万円
 売上原価 300万円
 粗利益(付加価値) 700万円
 労働分配率 50%
 給与総計 350万円
 従業員数 10人
 実質賃金 35万円

 の企業があったとします。この状況で、従業員数が変わらず、投資により生産性が向上し、生産量が二倍になった。物価が変動していないと仮定すると、売上2000万円。
 さらに、労働分配率が60%に高まった。

【企業A】
 売上 2000万円
 売上原価 600万円
 粗利益(付加価値) 1400万円
 労働分配率 60%
 給与総計 840万円
 従業員数 10人
 実質賃金 84万円

 となります。上記は、実質賃金が2.4倍になっています。従業員が、以前よりも2.4倍の「量」の財・サービスを買えるようになったという話です。まさに「豊かになる」でしょ?

 

 しつこいですが、実質賃金は生産性と労働分配率で決まります。


 つまりは、実質賃金の下落は、「従業員一人当たりの生産量が減った」ことを意味するのです。(労働分配率が余程下がっていない限り)

 

そして、生産性向上のための投資が行われない中、女性や高齢者が労働市場に投入された。

まさに、女性活躍社会! 一億総活躍社会! でございまして、第二次安倍政権以降、日本は労働集約型の発展途上国と化していったわけです。

 

 結局のところ、問題の本質は、
「将来のために投資をするのか、否か?」
 なのでございますよ。


 そして、少なくとも民間企業の投資は「将来が良くなる」という期待なしでは実行されません。デフレという経済環境は、将来が「悪くなる」という期待をもたらします。となると、投資がなされず、生産性が上がらない。


 生産性が伸びない状況で、少子高齢化により生産年齢人口比率が下がるとなると、当然ながら「女性活躍社会」「一億総活躍社会」にならざるを得ない。それでも、「労奴」が足りないとなると「移民受入」というわけでございます。


 安倍政権の経済政策は、国民の実質賃金を「上げない」という点では、実に首尾一貫していたのですよ。実質賃金とは、国民の購買力そのものです。国民の購買力を押さえつけ、デフレ脱却などできるはずがない。


 そして、国民の所得を引き上げたくない理由は、もちろん、
「人件費が上昇すると、株主に支払う配当金の原資(純利益)が減るじゃないか!」
 という話です。同時に、投資抑制も、
「投資を増やしたら、減価償却費が大きくなり、株主に支払う配当金の原資が減るじゃないか!」
 でございますよ。


 つまりは、日本は株主資本主義に基づく「政策」によって「労働集約型の発展途上国」になっている。政策が変わらない限り、この流れは止まらないのです。