この記事は前回からの続きになっております。

 

 


やったつもりだった筋トレ

当時、私が行なっていたトレーニングプログラムは、実はかなり悲しい内訳で、60分のスケジュールの中、30分はストレッチ、更に10分は筋トレのレクチャー。
実質のトレーニングは20分程度でした。

それでも、極端な運動不足だった私にとっては、神経系統に刺激を与える効果があり、体重の減少に繋がった訳です。

「なんとなくこんな感じか」
私は馴れ合いを感じるにつれて気が緩み、昼酒を煽ってジムに行ったりし始めました。しかしやがて、そんな私の気の緩みを打ち砕く出来事が訪れます。

トレーニングを始めておよそ2ヶ月目、その日、初めて挑戦することになったのは、皆さんご存知の懸垂という種目でした。

しかし実はこの懸垂、極めて難易度が高い筋トレ種目で、自体重で出来る人は男性で10人に1人程度。ちなみに、50代以後では50人に1人、女性では全世代で50人に1人と言われています。
当然、そんなハードな筋トレを100%自力で行うには無理があるので、チンニングマシーンという下から体を持ちあげてくれる機械を使ってチャレンジすることとなりました。

設定は60キロの補助。当時の私の体重は67キロ。
つまり、わずか7キロを背中と腕の力で持ち上げれば良かったのです。

しかし実際は筋肉量が減少していた私にとっては、その7キロでさえ、十分に過酷な重量でした。
開始5分、わずか3回繰り返したところで激しい頭痛に襲われてトレーニングは中止。
肩で息をしながら、私は店長の小林さんの顔をまともに見ることができませんでした。

体重が落ちた事ですっかり筋トレをやったような気になり、昼酒まで飲んでいた(この日は飲んではいませんでしたが)私の生活態度を、20歳以上も下の小林さんは一度も叱ることはありませんでした。
むしろ営業後に私に付き合って飲みに行き、終電を無くしてジムに泊まったりしていることも、私は知っていたのです。
そして、知らず知らずのうち、そんな小林さんの優しさに、私はすっかり甘えていたのでした。

「ごめんなさい…。これからは真面目に筋トレに励みます」
懸垂中止後、残りの50分をストレッチに費やしながら、私は心を入れ替える決心をしたのでした。