もう20年以上筋トレしてますが、筋トレを始めた時と比べて、変わった事は沢山ありますが、そのうちの中で基本的な重要事項のと考えているのが重力と物理学の重要性です。他は姿勢と呼吸。

 

人間生まれてから死ぬまで、重力に対して生活をしています。寝る時も立つ時も座る時も、どんな状態になろうとも避けては通れない道ですよね。特にフリーウェイト(バーベルやダンベル)という鉄の塊は重力の働く方向(垂直)にしか働かないわけですから、ウェイトを使って筋トレを行う時にフォームチェックを行う上で重要視しているのが、「物体に対して垂直に動かせる位置に来ている事を、本人が理解しているか?」です。その結果として、○○の筋肉を優先的に使用したり、この人は広い足幅(又は狭い足幅)が向いているというのは色々あるでしょう。

 

結構、殆どの人が単純に「この筋肉は、こういう動きをするから、この種目で鍛える」っていう安直な考えが多いのですが、筋肉を鍛える前に動きそのものを鍛える必要が大前提としてあると考えていますし、筋肉vs重力〈地球〉と考え時に、地球というとんでもないデカイ影響力を持つ物を優先的に考えた方が大事なのでは無いでしょうか?

 

それを理解するために、基礎的な物理を勉強する事は非常に大事ですし、難しいですが理解できると中身に深みが増しますよね。高校の時は大嫌いな科目でしたが、筋トレに転化してから好きな科目になりました。

 

ここからは、私の教科書の一つであるStarting Strengthに基づいて、種目の判断基準を幾つか紹介します。

 

スクワットに関しては、

 

横から見た時に、足の真ん中の延長線上にバーベルが維持され続けるようにするのが基本です。そこが重心の延長線上ですから。

 

 

そこより前後にずれたりすると(写真の右の人)、重心の延長線上に戻させる為に一部の筋肉に過剰な負担がかかるようになってしまいます。

だから基本として、骨の長さを考慮すると、上の状態を作れる足幅が、その人にとって無理の無い位置の基準と言えるでしょう。胴の長さや脚の長さなので、前傾姿勢が強くなったり、その逆になったりという多少の差は人それぞれありますし、それの結果ナロースタンスが向いている人は四頭筋が優位に発達したり、ワイドスタンスが向いている人は内転筋や殿筋が発達しやすかったりという個人差は出るでしょうね。

 

 

オーバーヘッドプレス(又はプレス)に関しても、同様の事が言えます。

 

足の真ん中の上をバーが通るようにする。

 

写真のBさんのように、これが崩れたりして顔からバーベルが極端に離れた位置に来てしまうと、それを戻すために過剰な負担と疲れが身体に来てしまいますね。

 

 

デッドリフトに関しては、

 

スタートポジションを取ったときにバーの真上に肩甲骨が来ており、広背筋と腕の角度が90度に近い位置(上の写真のI)になっている状況の方が、レンチでボルトを締めるように(下の写真の左上)広背筋に力が安定してかかりやすくなり、引きやすくなります。

 

バーベルは写真の上の絵のように垂直で動かせるのが、一番効率よい引きになりますね。

 

ちなみにこっちはルーマニアンデッドリフトの方の動きです。デッドリフトとの違いは、脛が常にほぼ垂直を維持し続けるので、デッドリフトより前傾が強くなります。

 

 

 

ベンチプレスは、ベンチ台に寝る関係上、少し他の種目とは違いますが、物理学が働く事には変わりありません。

 

肩から真っ直ぐに上に来ているスタートポジションが、一番楽な位置(初心者は慣れて無いので、首の上に保持したりする事が多い)であり、下げた時に胸の一番高い位置(乳首の辺り)に降ろした時に、横から見た距離が、写真の右のように短い人の方が有利です。その為にワイドグリップにして距離を短くしたり、胸の張りを強くして、距離を短くして高重量を使う人が多いですね。でもそれイコール筋肉の発達とはちょっと違いますし、そこの部分は向き不向きがあると思います。

 

私は他の人より胸が縦に長いので、胸の下につけようとすると写真の左の人のようになるので、ベンチプレスは苦手でいつも困ります。

 

もちろん、これには各種目とも個人差(手足の長さ等)がありますし、理想的と言える位置に身体を持ってきても、そこで十分に力を発揮する為に筋肉が無かったり柔軟性が無かったら、逆にやりにくくなるでしょうね。基本的な位置から極端にずれている人は、一気に変えずに、一月に1,2cm変える程度で、数ヶ月から数年かけて適応させていく方が良いと思います。

 

筋肉を発達させる為には、単純に使用重量を安全に効率よく上げていくのがシンプルで最も効果的な方法の一つだと思うので、その為の動きを作る為に重力を意識してみては如何でしょうか?

 

 

参考文献

Rippetoe, M. & Bradford, S. (2013) Starting Strength: Basic Barbell Training 3rd Edition. The Aasgaard Company, Wichita Falls, TX 76308, USA