『ファウスト』ゲーテ:著 粂川麻里生:訳   (戯曲) | 夜間飛行のオススメ読書

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小説や体験記や自己啓発本や、大人も楽しめるマンガなどを読み、紹介しています。ネタバレなし!です。本を選ぶ時の参考になれば、と思っています。たまに映画も観ます。

有名なゲーテの『ファウスト』を未だに読んだことがなく、ブログ仲間さんの影響で読みました。

ギリシャ神話の神々が沢山登場し、一つ一つ注釈がついており、見開きページの左下にその都度載せてあります。

これは、「巻末と作中とをとめどなく往復する手間」を省いてくれて、良いです。

それでも、500個弱の注釈がついていて、目の往復がすごくて、少し読むのに手間取りました。

 

ゲーテは詩人でもあるとのことで、作中の人物に唐突に詩を詠ませています。

詩あり、ギリシャ神話あり、聖書あり、自然科学あり、様々な知識教養を織り込んで500ページ弱。

ゲーテが20代から亡くなる直前の82才までラーフワークとして制作してきただけあって、ド迫力です。

 

内容は、一部は、老学者ファウストは学問に生きてきたけれど、「何もわからないことがわかった」と嘆いていました。

そこに、メフィストフェレス(悪魔)が現れてファウストと「ファウストが生きている間はメフィストフェレスが言うことを聞くが、ファウストが死んだら逆にファウストがメフィストフェレスのしもべになる」「ファウストが素晴らしい経験をしたあまりに「時間よとまれ。お前は美しい」ともし言ったら、ファウストの魂はメフィストフェレスのものになる」という契約をする。若返ったファウストは町娘マルガレーテ

 

 

と恋愛をし、シェイクスピア3大悲劇風な悲劇に終わる。

 

二部は、さらにファウストは欲望を追求し、絶世の美女ヘレナをメフィストフェレスの力を借りて、召喚し、子供も生まれ育ったが、またしても悲劇で終わり・・。ファウストはそれでも欲望を追求し、海岸に干拓事業をしていく。そんな中で善良な老夫婦をまた犠牲にしてしまう。「憂い」に息を吹きかけられ失明したファウストは、自分の墓穴が掘られている音を、干拓事業の成功だと誤解して「時よとまれ。お前は美しい」と口にしてしまう・・・。

 

じっくりと解説本とともに、繰り返し考えながら読まないと、なかなか、作品の深いところまでは到達できないように思いました。

巻末の解説だけでも、あって助かりました。「「世界」は、それぞれの生命体の意識の中にしか存在しない。したがって、互いに関係し合いつつも、完全に独立した原理で構成されている複数の世界が劇中で交錯していく。『ファウスト』は「ウニバース(一つの宇宙)ではなく、「マルチヴァース(多重宇宙)」の世界観」という解説に納得しました。たしかに、人は、自分が「こうだ」と感じられる世界を、世界だと思っていると思います。

 

 

 

 

 

 

*********ここからネタバレあり。読みたくない方は読まないでください***********

 

 

第一部のファウストと恋愛して未婚の母になり、兄も母も子供も、マルガレーテのために亡くなってしまいました。ファウストは悪魔と契約しているため、神の契約の結婚ができませんでした。マルガレーテはあくまで純粋な娘で、恋をしただけで悪くないのに、あまりにもひどい運命に思えます。

第二部最後に、ファウストは魂を悪魔にとられるまえに、天使に救われて、天使になったマルガレーテに導かれて天に逝きます。これは、「高齢男性の夢」ではないかと、思えました。女性からしたら、ちょっとどうかと思います。勧善懲悪が、日本人にはしっくりくるのではないでしょうか?私からしたら、ファウストは悪事に手を染めてグングン突き進みすぎです。解説に、「「「善」も「悪」も本当はない」とゲーテが言いたかった」という風にありますが、私は「人間自分が亡くなる直前ともなれば、自分のライフワークとして生涯関わってきた「自分の分身のような主人公」が地獄に落ちたら、ゲーテ本人も地獄に落ちるような気がして、地獄におとせなかったのではないか?」と邪推してしまいます。

 

 

 

 

 

一読の価値はありました。長文お付き合い、ありがとうございました。