行為のあと、私は再び風呂場でエリーに体を洗われたわけだが、私が出たあともかなりの長い時間、彼女は風呂場から出てこなかった。
体に残った男性の痕跡を長い時間かけて洗い流さないと気が済まない潔癖症なのか、と私は不安になったが、そうではないようだった。
風呂場から出てきた彼女は、私に、
「アナタ、タバコ吸うか?」
と聞いた。私が吸わないと答えると、
「エリー、タバコの匂い嫌いなぁ。宴会、オキャクサンのタバコの匂い、髪につく。だから宴会のあと、髪洗うの、時間かかるよ」
エリーは今夜、私を迎えに来る前まで宴会のコンパニオンの仕事(おそらく、私と同じ旅館に泊まっていた例の男性一組の宴会であろう)もやっていたため、男性客の吸う煙草の匂いが髪についてしまい、それを洗い落とすのに時間がかかっていたようだ。
「どう?いい匂いか?」
彼女は煙草の匂いが落ちたか確認したいのか、私を自身のロングヘアーの方に誘った。私が髪の匂いを嗅ぎ、
「うん、いい匂い」
と言ってやると、
「いい匂いかー。ヨカッタ…」
と満足そうであった。
エリーは鏡台の前に座り、洗った髪をまた長い時間かけてドライヤーで乾かしていた。キティちゃんのグッズに囲まれた部屋の中、濡れ髪を乾かしている彼女の後ろ姿を、私はベッドの上からながめながら、痛いくらいの愛おしさを感じていた。「タバコの匂いが嫌い」と言いながら、ハローキティだらけの部屋で男性客をとっている彼女の境遇が、私の心の何かを刺激したようだった。