「Letters」「Change the world」読者の為の福岡案内(第8回) | 『Go ahead,Make my day ! 』

『Go ahead,Make my day ! 』

【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】


『Go ahead,Make my day ! 』-ラウンドワン

 きらめき通りにあるラウンドワン天神店の注意書きには”16歳以上18歳未満の方は午後10時以降ご入場できません”と記してある。
 アタシは十八歳だし、一年留年しているということは向坂は十九歳なのでセーフ――と思っていたら、この十八歳云々には高校生が含まれているらしかった。つまり、アタシたちにはどちらも入場制限が課せられていることになる。
 とは言え、アタシたちはどちらも身分証明書の提示を求められずにスムーズに中に入ることができた。ラウンドワンの店員が仕事をサボっているわけではもちろんない。向坂もアタシもまず高校生には見えないからだ。追い返されなかったのは嬉しいけど内心忸怩たるモノはある。
                                        「Change the world」第29章より


初っ端からインパクト抜群の画像で申し訳ないのですが(笑)、こちらが真奈たちが入ったゲームセンター(いまはアミューズメント施設って言わなきゃならんようですが……)のラウンドワン福岡天神店。さすがに店内画像はありませんでした。
前回の分も含めて、位置関係はこんな感じです。
『Go ahead,Make my day ! 』-MAP(南天神)

『Go ahead,Make my day ! 』-ラウンドワン正面全国レベルでどうなのかは分かりませんが、天神界隈からは遊戯施設と呼ばれるジャンルのものが減りつつあるようです。
一昔前――それこそ、前述の親不孝通りの最盛期――などはあちこちにいわゆるゲーセンの類があったのですが、今はラウンドワンの裏手(サザン通り)にタイトーとセガが一軒ずつ、親不孝通りの脇道にセガがある以外は見ることができません。博多駅の周辺とかキャナルシティ、あるいは香椎や西新、百道などの郊外に出ればまだまだあるようですが、人が集中する天神にこの手の遊び場が少ないというのは、個人的にはいささか奇妙な気がしますね。
『Go ahead,Make my day ! 』-中洲のゲーセン1そういえば中洲編で画像だけ出してた中洲大通り角のゲーセンですが、何とホームページがあることが発覚しましたのでリンク貼っときます。
どーでもいいけどここって支店(佐賀県伊万里市と山口県下関市)があったのね。ちょっとビックリ。
赤玉ゲームセンター

それで2人はここ、ラウンドワンでゲーム対決(笑)をするのですが、永一卓球得意説は本シリーズのでっち上げ後付設定の最たるものですな……。
永一の運動能力については原作(「OVER」)を読む限りでは何とも言えないのですが、おそらく小器用なタイプだと思うので、本作では「見たものを真似するのは得意」とさせて頂きました。
バッティングについても同じように誰かがやってるのを見たり本で得た知識に基づいたものなので、本当に野球をやれば(そんな機会があるとは思えませんが……)付け焼刃だとバレるレベルかと思われます。
一方、真奈がアフリカ人並みの身体能力(日本人離れしていることを示すサッカー界の常套句。笑)なのはこれまで何度も書いてますが、実は彼女は道具を使う競技と水泳があまり得意ではないという設定があります。本作で言ってるバントで無理やり内野安打云々は「ブラジリアン・ハイ・キック」で――俊足を揶揄する目的で、ですが――亮太が触れてますね。
卓球は手に近いところにラケットがあるのでまだ何とかなるようですが、おそらくテニスとかバドミントンは苦手。ちなみに泳げないわけではありませんが、競泳のタイムは由真以下らしいです。

さて、そんなわけで2勝2敗のイーブンでラウンドワンを後にした2人は、出て早々に揉め事に巻き込まれてしまいます。半分以上は自業自得のような気がしますが。(笑)

「――言っとくが、俺はこっちの人間じゃないんで、おまえたちが言ってることは半分くらいしか分からない。でも、一つ訂正しとく。俺は彼女の何者でもない」
「はあ?」
「彼女は六対二の状況を見かねて手を貸してくれただけだ。おまえたちの本当の相手は俺と、俺の連れだ。――まあ、その連れはここにはいないけどな」
「……やけん、なんや?」
「俺が相手をすると言ってるんだ」
 向坂は腰の後ろに回していた手を出した。
 アタシは目を疑った。意外と節くれだった大きな手には街灯の明かりを反射して禍々しく光るバタフライ・ナイフが握られていた。
                                        「Change the world」第29章より


結局、お巡りさんが駆けつけたことで揉め事は回避され、2人は恩人に礼も言わずに逃げ出すのですが……。(笑)
(本当はここも後付設定で「実は永一はケンカが強かった!」としようかと思いましたが、それはあまりにもキャラが違うだろうということでこういう展開になりました。それと――これはとても個人的な解釈ですが――わたしは永一は意外と情け容赦がない人のような気がするので、状況次第ではナイフを振るうことも厭わなかったのではないかと考えてます)

『Go ahead,Make my day ! 』-天神警部交番まあ、それはともかく。
天神というところは治安の良い街なのですが、博多っ子は基本的に気が短くて喧嘩っ早いので揉め事そのものは少なくありません。そういう事情からか、ソラリアターミナルビルの1階には天神警部交番が設置されています。
警部交番というのはその名の通り「警部が交番所長を務める交番」のことなのですが、これは都道府県によってあったりなかったりするようですね。現在、警部交番を設置しているのは北海道、秋田県、山形県、福島県、栃木県、長野県、福井県、岐阜県、福岡県の1道8県で福岡以外はすべて東日本という不思議。(ただし、他の県では警部が交番所長に就いていても「警部交番」と呼称してないケースもあるようです)
ちなみに数は福岡県警が突出してまして県下で16交番、福岡市内にはそのうちの8交番(天神、中洲、麦野、香椎、八田、七隈、姪の浜、大橋)もあります。そうである理由は不明。福岡県警が警部クラスの人員を持て余しているとかいう理由でないことを祈る次第です。
警部がいるからといって交番としての機能が通常のものより秀でているわけではなさそうですが、配置人員は通常の交番より多いし、警察署と同じように各種申請・届出事務が可能になっているようです。
 
さて、恩人のはずの中年警官を尻目に逃げ出した2人はしばらくの間、きらめき通りから見ると西通りを隔てた大名と赤坂の裏路地を走り回るのですが、大名の詳細は次回のお楽しみということでここからはまた少し脱線を。

『Go ahead,Make my day ! 』-新天町(入口)夜遅くということもあって「Change the world」では訪れていませんが、天神界隈を舞台にするときに名前だけ頻繁に登場するのが新天町商店街
旧福岡駅ビルの真裏に広がるアーケード商店街で、本作でもバス移動中の真奈のトークに登場してますし、他の作品でも「砕ける月」の真奈・由真のデートシーン(笑)と「パートタイム・ラヴァー」のエピローグで真奈と由真が待ち合わせた場面(真奈は村上と立ち話をしていた)、「ブラジリアン・ハイ・キック ~ 天使の縦蹴り ~」の序盤の真奈と亮太のお買い物シーンに登場してます。あと、曖昧な描写ですが「Left Alone」序盤の真奈が村上へのプレゼント用のスーツを買った後に藤田警部補とお茶をするプロントがここ、新天町にありますね。(同じプロントは「シャル・ウィ・ダンス!?」の序盤、由真が友人たちと待ち合わせる場面でも再登場)
『Go ahead,Make my day ! 』-新天町(屋根)『Go ahead,Make my day ! 』-新天町(駅裏)
戦後すぐに復興策の一環として整備されたといいますから、その歴史はかなりのものです。おかげで居並ぶテナントは流行から取り残された感のある店ばかりですが、それが逆に若者向けに先鋭化された他との差別化になっていて、新天町は年配の買い物客でいつもごった返しています。また、駅から西通り方面への通り道でもあるので通行人の多さも際立っています。

『Go ahead,Make my day ! 』-新天町(メルヘンチャイム)そんな新天町商店街の名物がこちら。駅ビル裏の2ブロックを占める新天町の中通り、通称メルヘン広場にあるからくり時計。
正式名称は「メルヘンチャイム」といいまして、新天町のシンボルとして1981年に設置されたものです。見ての通りの威容で、時計塔としての大きさは日本一(高さ17メートル、幅25メートル)なんだとか。福岡での待ち合わせのメッカの1つでもあり、上記「パートタイム・ラヴァー」の真奈と由真の待ち合わせはこの時計の下でした。
朝9時から夕方8時までの正時ごとに時計のチャイムが曲を奏でるのですが、「聖者の行進」や「ラバーズ・コンチェルト」、「ホーム・スイートホーム」などの曲目が並ぶ中に「博多どんたく囃子」とか「黒田節」があるのはどうにかならんかなといつも思います。気持ちは理解できますけど。(笑)

新天町関連で他に登場させたと言えば、真奈の行きつけのスポーツ用品店(店名は出してませんが実在)と新天町倶楽部でしょうか。
『Go ahead,Make my day ! 』-新天町倶楽部
アーケードの中ほどにあるのですが、看板が微妙なところにあるので捜すのは結構大変かも。わたしは新天町を2周しました。(笑)
位置づけは新天町で働く人向けの社員食堂なのですが、一般の方も利用できます(但し、混雑時は社員優先になるらしいです)。安くて味もなかなか、しかもボリューム満点と評判の店ではありますが、女子高生が出入りするようなところではありません。真奈がこんな穴場を知っていたのはグランマのお供をしていた(させられていた?)ことの副産物なのでしょう。
ところで真奈の何でもできるスーパーヒロインっぷり(真名さん解説より)の中でも一番微妙なのが「茶道の心得がある」「着物の着付ができる」だと思うんですが、実はこれ、後付設定ではないのですよね~。祖母のお供をしていたことには「砕ける月」の早い段階(上記のデートシーン)で触れてますので。
まあ、どーでもいいといえばいいんですが。
『Go ahead,Make my day ! 』-オムライス550円『Go ahead,Make my day ! 』-ハンバーグコロッケ定食600円
オムライス(550円)は定番のメニュー。トロトロの半熟卵は絶品です。ハンバーグコロッケ定食は600円。他にもチキンカツ定食などが人気メニューだそうです。
(でもなー、美味しいけど観光客向けの店では絶対にないので、この情報が役に立つ人っていないんじゃないかな……?)

そんなわけで第9回、いよいよ大名編へ続く。