てなわけで(どんな?)帰ってまいりました。
台風は北部九州直撃コースだったのですが、意外とコース上だった長崎~佐賀~福岡よりも暴風圏の外周だった宮崎とか、中四国地方の方が被害が大きかったようです。九州は基本的に台風慣れしている地方なのでそれなりに準備はしていたと思うのですが、それでも自然の猛威の前では人間は無力ですね……。
さて、そんなこんなで今日。
用事は前日の昼間に済ませておいたので、予定通り(?)福岡へ。雨が降っているので天神周辺をウロウロすることにしました。
まずは地下鉄天神駅へ。帰り(熊本へは博多駅からJR)に備えて駅のコインロッカーに荷物を放り込みに行ったのですが。
あれ? こんなところにドトールあったっけ?
「砕ける」第2幕にて真奈と梅野が地下街のコーヒースタンドで待ち合わせるシーンがあるのですが、そのとき(05年8月)にはあったのかどうか。
非常に気になってしまいました。さすがに店に入って訊いたりはしませんでしたが。
天神地下街を出て、まずは親不孝通りへ。
昼間の盛り場を訪れるのには女性の化粧を落とした顔を覗くような奇妙な後ろめたさがあるのですが、霧のような細かい雨が降りしきっていたせいで、うらぶれた雰囲気は否応にもなく増していました(笑)
最近の北天神は萌えビジネスの先進地域なんだそうで、メイドカフェだとか漫画喫茶だとか、インターネットカフェだとかが集中しているという、私の認識とはちょっと違う街になっておりました。あと、裏通りにずいぶんとマンションが増えてたなぁ。
これが夜になるとどんな様相になるのか。今度は夜の親不孝通りを見に来たいものです。
(あ、あと現在はこの通り、「親富孝通り」と表記するのですが、まったく定着していないので、作中では親不孝と表記してます)
余談ですが、今日は一日だけの牛丼復活の日ということで、親不孝通りの南端にある吉野家にも行列ができておりました。空いてれば食べてもいいな、と思いましたが、わざわざ並んでまで信用できない食材を食うこともないかな、とここはスルー。
そのあと、「チョイ不良~」のホームタウンとなる大名周辺をグルリと歩いてみました。
この辺りはKBC(九州朝日放送)が九州一円をネットしている情報番組で取り上げられることが多いので、街の雰囲気なんかはつかめていたのですが、それでも思っていた以上に道が狭かったり、電線が(表通りは地中埋設が進んでいるのに)街全体に網をかけるように低いところを縦横に走っていたり、雑居ビルとマンションが立ち並ぶ中に忽然と民家(それもかなり築年数がいった、いわゆる古民家)が建っていたり、本当に歩いてみないとわからないことが一杯でした。
これをどの程度まで文中に書き込むかはまだわかりませんが、こういうことを知らずに書いていると、やはりどこかでズレを出してしまうのですよね(「砕ける」でもいくつかやってますが……)
天神西通りと国体道路がぶつかる角に(いつの間にか)オープンしていたアップルストアをちょっと覗いてから、二階のスターバックスで休憩。福岡にはこの手のいわゆるシアトル系カフェがいっぱいあるのですが、軒数といい各店の距離感といい、絶妙に存在しているのはやはりスターバックスですね~。
他の店は場所が偏っていたり、あんまり軒数がなかったりで、贔屓にするにはちょっと不十分なのですね。
「チョイ不良~」の語り手、上社氏も私の主人公の常として珈琲党のようなので(笑)このあたりは影響しそうです。
そのまま国体道路を警固神社まで歩いて、岩田屋方面へ。
岩田屋は旧NTT跡地にある、かつてはZ-SIDEという名前だった本館ときらめき通りというこっ恥ずかしい名前の通りを挟んだ新館からなっているのですが、その斜向かいにあったローラ・アシュレイがなくなって新しいVIOROというビルが建ってました。
実在する街を舞台にするにあたって、開発(再開発を含む)が盛んな街というのは結構難儀なところがあって、それがいつの時点を舞台にしたのかを書く場合はもちろん、書かない場合でも整合性を(この建物があったときにはこの建物はなかった、とか)とっておく必要はあるのですよね。
(「砕ける」第1章の香椎の会社を真奈が張り込みに行く場面で近くのダイエーにバンディットを停めてますけど、この店はそのわずか2ヵ月後にダイエーじゃなくなってます)
それはさておき。
今回はそういう具体的な考証をしにきたわけではなくて、実は普段、あんまり見ないものを見に行くというテーマがあったのです。
それは百貨店の紳士服売り場。それもブランドもののテナントを中心に。
理由は「チョイ不良~」の上社氏の衣装が実際にどんなものなのか、という、普通の書き手はあんまり気にしない(ですよね?)ことが、どうしても気になったからなのです。
私も36歳で、40歳の設定の上社氏とはそれほど違わないはずなのですが、さすがにブランド物のスーツはほとんど買ったことがなく、ましてや今は仕事でもスーツを着る機会がほとんどないので、まったく何が何やらわからないという……。
インターネットでずいぶんファッション系のサイトを巡ってはみたのですが、ブランドのオフィシャルサイトは金髪碧眼の細いオニイチャンばっかりなので、あんまりイメージが湧かないんですよねぇ。
そんなわけでVIORO、岩田屋を始めとして、ソラリアプラザ、三越、大丸と紳士服売り場を覗いてみたのですが。
国産の五大陸やタケオキクチ、アメリカンブランドのブルックスブラザース、ラルフローレンはともかくとして、意外と多かったのがバーバリーやアクアスキュータム、ダンヒルといったかっちりイギリス系のブランドでした。
狙い(?)のイタリアンブランドは定番のプラダやフェラガモ、アルマーニ(ジョルジオに非ず)とかでしたが、これが意外なことにあんまりくだけてなくて、思っていたよりもトラッドな感じでした。
……いや、これはチョイ不良オヤジのイメージではないな。
そんなことを思いながら、グルリと天神界隈の百貨店を一周して、あるブランドがないことに気づいたのです。
それはドルチェ・アンド・ガッバーナ。
パイロット版で上社が着ているスーツがこれなのですが、実はこの段階では私もブランド名のイメージだけで書いていて、実際にどんなスーツかはよく分かってなかったのです。
結局、女性もののフロアにあったので、あんまり期待せずにブランドのイメージがつかめればいいかな、くらいに思って覗いたところ、意外なことに男物のスーツも置いてありました。
ありました。が……。
やばいです。イメージぴったり。
ワ ル す ぎ で す (内心爆笑)
ということで、これも自信をもってドルチェ・アンド・ガッバーナに決定です。
でもこれ、現実にはどんなヤツが着るんだろう……。
さて、福岡取材旅行の最大の目的(?)を果たし、あとは何か美味しいものでも食べて帰ろうか、と思ったのですが、実は前日のテレビで意外なことを聞きつけておりまして。
それはうどんの発祥の地は福岡である、という説。
なんでも中国からうどんと饅頭の製法が最初に伝えられたのが福岡なのだそうで、それを伝える石碑もあるのだそうです。
ちょっと意外。
昨今の讃岐うどんブームのせいで、うどんの本場は香川県のようなイメージを私も持っていたのですが、そうと聞いてはやはり福岡のうどんを食べて帰らねばなるまい。
そう思って寄ったのが博多祇園山笠で有名な櫛田神社の参道脇にある「かろのうろん」
うろんといっても胡乱なわけではありません。
ネイティブな博多弁の発音では「ど」は「ろ」になるそうで(江戸っ子の「ひ」が「し」になるのと同じですね)置き換えると「かどのうどん」になります。
確かに参道から大通りに出る角にありました(笑)
そこでごぼ天うろん(ちゃんとこう発音されてました)とかしわおにぎりを注文。
博多の(と敢えて言う)うどんはコシというものがまったくなくて、年寄りの歯ぐきでも噛み切れるほど柔らかいのが特徴です。だしは意外としっかりとってあって、関西の澄んだ感じの薄味ではありません。結構醤油が強くて全部は飲めませんでした。
ちなみにごぼ天というのはごぼうの笹がき(店によっては短冊やかき揚げの場合もある)を天ぷらにしたものです。山口くらいまではあるそうですが、広島から東ではあまり見ないとのこと。日本の食文化というのは本当に多様だなと思いますね。(ちなみに九州人の多くは全国区のものだと思ってます)
そんなこんなでダラダラと書いてみましたがいかがだったでしょうか。
こういう取材(と言えるかどうかはともかく)をしてみると、意外な発見があって楽しいものです。まあ、ブログ連載のためにこんなことをやるヤツもそういないと思うのですが。
これをどうやって作品に反映させるか、いまからちょっとワクワクしております。
ついでに言うと、パソコンに2日も触らないことも滅多になくて、ちょっとリフレッシュにもなりました。
これでまた、創作活動に勤しめるというものですね(笑) (← というか、仕事しろよ……)
追伸。
電車の中のお楽しみのはずだった「マイク・ハマーへ伝言」を持っていくのを忘れて、代わりに駅の書店で村上春樹氏の「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」を買いました。小説では内省的な文章が多くてちょっとつらいことがあるのですが、エッセイだとわりと客観的な記述がメインになるのでスイスイと読み進むことができました。
ああ、シングル・モルトが飲みたくなってきた……。