法律用語の基礎知識 | 『Go ahead,Make my day ! 』

『Go ahead,Make my day ! 』

【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

以前にも、テクニカルタームの難しさについては何度か書いたことがあるのですが。

 

またしても、「砕ける月」にてダウトをかましてしまいました。おそらく、読者の大半は気付かないこと間違いなし(こっそり書き直してもまず気付かれないことも間違いなし)の、そのクセにとんでもない大物ダウトなのです。

それは、第2幕第17回でのことなのですが――、

 

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「いいんですか、アタシにそんなコト教えて」
「あれだけ当人たちが君の前で喋ってしまってるんだ。今更、否定しても始まらないさ。それと断っておくが、もしもこの件が明るみに出れば、由真も恐喝罪に問われかねないことを頭に入れておいてくれ」
「恐喝罪?」

 熊谷は頷いた。

 
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このシーンで、実は徳永由真の犯した犯罪のことを、私は「脅迫罪」と表記していたのです。

この二つの犯罪がどう違うのかというと、


恐喝きょうかつ)とは、暴力や相手の公表できない弱みを握るなどして脅迫すること等で、相手を畏怖困惑させて金銭その他を脅し取ること。日本の刑法では第249条に定められている犯罪である。未遂も処罰される(刑法第250条)。


脅迫(きょうはく)とは目的の如何を問わず、相手を脅し威嚇する行為をいう。日本の刑法では第222条に定められている犯罪で、未遂罪は存在しない。金品を略取する目的で行う場合は特に恐喝と呼ぶ。

(ともにウィキペディアより引用)


ということで、平たく言えば「金銭(に類するもの)を目的として行われる脅迫行為」のことを恐喝と呼ぶのだそうです。

この後の展開で、由真は明らかに金銭を要求する内容の動画メールを送りつけていますので、彼女の行為は間違いなく恐喝罪になるのですね。

というか、そんな法律論議はどうでもいい(?)のですが。

何でこう……日本の法律用語とか条文というのは、似たような紛らわしいものが多かったり、読解力テスト級の難解な文章のものが多いんでしょうね~。

ずいぶん昔、司法書士の資格を取ろうと勉強していたことがあるのですが(えー、もちろん合格はしませんでしたが。合格率2~3%という超難関資格なのですよ)、その際にも民法の漢字カタカナ混じりの文章に悪戦苦闘した覚えがあります。民法とか刑法はかなりトラディショナルな法律なんで、仕方がないと言ってしまえばそこまでなのですがねー。

 

ま、今回のは難解とか紛らわしいとかいうような問題ではなく、私が無知だったというだけの話ですけど(泣)。

一般の方で、この二つの単語(脅迫と恐喝)を混同せずに、正確に認識されている方はそれほど多くないと思われますので、使ったのが真奈だったり、他の人物ならまだ言い逃れも出来るのですけど、この台詞は元警官である熊谷氏のものなので、これはもう明らかなダウトなわけです。

  

犯罪というものは、「それは罪だよ!!」という法律があるからこそ、文字通り「犯罪」なのですが、ミステリという犯罪を扱うジャンルの書き手としては、もう少し法律に対する感覚を磨かなくてはならないなと、深く反省しつつ、この辺りでダウトの言い訳を終わりたいと思います。では、また。

 
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上でけなしておいて何ですけど、六法全書(特に民法と刑法)は百科事典を眺めるような感覚で読むと、意外と面白い読み物だったりします。

さすがに寝転がって読むようなものではありませんが(広辞苑級のヤツを顔に落とすと命に関わるので)、「ほお、こんな規定があるのか」とか、「この罪の刑罰ってたったコレだけ?」とか、ネタになりそうな発見は多いものです。

ま、本来の用途とはかけ離れているのでしょうけどね(苦笑)。