ロス・マクドナルド | 『Go ahead,Make my day ! 』

『Go ahead,Make my day ! 』

【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

――どのページを開けても抑制された筆致で、人が生きていくことのせつなさが、ぴしっと描いてある。登場人物はみんな暗い帽子をかぶったみたいなかんじで、それぞれに不幸の道をたどりつづける。誰も幸せにはなれない。でも、それでも、人は歩きつづけるし、そうしなければならぬのだとロス・マクドナルドは叫びつづけているように見える。


村上春樹著 象工場のハッピーエンド(1999、講談社文庫)『マイ・ネーム・イズ・アーチャー』より引用


プロフにも書いてますが、わたしが今現在、もっとも好きな作家です。ただし、日本における知名度は(マニアの間は除く)かなり低く、話の中でこの方の名前を出しても、同名の超有名ハンバーガー店とゴッチャにされること間違いなしですが(涙)

まぁ、はっきり言って暗いです。最近流行りの「泣けるシーン」なんか間違っても出てきません。訳者にもよりますが、正直読むのがツライ作品もあります。おまけに絶版だの在庫が無いだのといった理由で本屋に並んでない事もしばしばです。イイカゲンニシテヨ、ハヤカワショボウサン。

今回「ロス・マクの面白さってなんだろう」と再考してみたのですが、悲しく、愚かしく、時に醜悪な登場人物たちの振る舞いから垣間見える人間の本性のようなものを、ミステリというジャンルの中で見事に表現しきっている点ではないかと思います。実際、ロス・マクドナルドにはシリアス・ノヴェルへの強い上昇志向があったと言われていますし、いくつかの作品は「悲劇」として充分に通用するレベルに達しています。反面、そういったものにこだわりすぎて(特に後期の作品は)ミステリとしてはワンパターンに陥った面もあるのですが。

正直、現在の日本で一般受けすることはまず考えられない作家ですが、もしお時間とお金(最近の文庫本は高い!!)と忍耐力に余裕のある方は、是非読んで見て戴きたいと思います。とりあえず比較的入手しやすいものと個人的に好きな1冊を挙げておきます。

 
著者: ロス・マクドナルド, 小笠原 豊樹
タイトル: ウィチャリー家の女
著者: ロス・マクドナルド, 小笠原 豊樹
タイトル: さむけ
著者: ロス マクドナルド, 小鷹 信光
タイトル: 一瞬の敵

略歴・著作リスト、その他はこちら を参照。