今回はプラモを筆塗りで全塗装するときに、どの水性塗料が良いのか分析、比較してみた記事です。
エアブラシが使えなかったり、溶剤の臭いが気になる作業環境でも使えるプラモデル用の水性塗料ですが、今は色々なメーカーからいくつも発売されていて迷っちゃいますよね。
それらの特徴、メリデメ、そして筆塗りに適した塗料を整理しました。
模型用「水性塗料」は大きく分けて2種類
一口に「水性」と言っても、成分の違いによって「溶剤系アクリル」と「エマルジョン系水性アクリル」の2つに分かれます。
この違いが筆塗りには大きく影響します。
①溶剤系アクリル(タミヤアクリル、水性ホビーカラーなど)
昔から模型店によく並んでいる馴染み深いタイプです。
- 特徴: 水だけでなくアルコールなどの弱い溶剤が混ざっている。
- メリット: 溶剤が入っているためプラスチックへの食いつきが良く、エアブラシでも比較的吹きやすい。
- 筆塗りの弱点: ここが一番のネックなのですが、「上から重ね塗りをすると、塗料に含まれる溶剤が下地を溶かしてしまう」という性質があります。そのため、筆で何度も撫でると色が混ざったり、せっかく塗った下地がズルッと剥がれて筆ムラになりやすいです。また、ラッカーほどではないにせよ特有のアルコール臭がします。
② エマルジョン系水性アクリル(アクリジョン、ファレホ、シタデルカラーなど)
海外製塗料に多いタイプです。
- 特徴: 溶剤を使わず、水の中にアクリル樹脂の微粒子が分散(エマルジョン化)して浮いている状態の塗料です。木工用ボンドが乾くのと同じような仕組みですね。
- メリット: 水分が蒸発して樹脂が結合すると、強靭な耐水性のビニールのような膜になります。そのため、「完全に乾いた後は、上から水や塗料を重ねても下地が絶対に溶けない」という筆塗りにとって最強の恩恵があります。さらに溶剤が入っていないので完全無臭です。水で薄めたり、水で筆洗いが出来る(溶剤系アクリルでも水を使えなくもないが、専用溶剤を使った方が使いやすい)。
- 弱点: 溶剤でプラスチックを溶かして食いつくわけではないので、そのまま塗ると爪で引っ掻いた時などに剥がれやすい。(そのため、最初に食いつきを良くするプライマーを塗るのが基本)
つまり、「筆塗りで綺麗に重ね塗り(グラデーションなど)をしたい」「リビングで臭いを気にせず作業したい」なら、圧倒的に②のエマルジョン系水性アクリルが適している、というわけです!
これを踏まえた上で、代表的な水性塗料の特徴とメリデメを見ていきましょう。
タミヤカラー アクリル塗料ミニ(タミヤ)
昔からあるスケールモデル塗装の定番塗料。自分も一通りの色を持っていて、筆塗りでの部分塗装にはよく使っていました。
- 特徴:タミヤのキットの指定色になっている為、スケールモデラーには色選びがしやすい。戦車や飛行機などのミリタリー系カラーのラインナップが圧倒的。
- 種別:溶剤系アクリル塗料
- 容量:10ml
- 価格:220円
- 色数:約100色
- 公式サイト
- メリット: タミヤのキットの指定色の為、タミヤのキットを作る場合は使いやすい。どこの模型店や家電量販店、ネットショップでもほぼ確実に手に入り、価格も安い。そして「つや消しカラー」を塗った時の、光沢がスッと消える上品な仕上がりはラッカー塗料に引けを取らない美しさ。
- デメリット: 「ツヤあり(Xシリーズ)」は完全に乾燥してベタつきが消えるまでに、かなり時間がかかることがある。また、筆塗りの場合、塗料の伸びが少し重たく感じるため、広い面積を塗ると筆ムラが残りやすい傾向がある。強くはないが独特の臭いあり。
- 筆塗り適正:△〜◯(角のドライブラシや小さな部分塗装には最高だが、広い面積を均一に塗るには、専用のリターダー(遅乾剤)を混ぜて乾燥を遅らせるなどの工夫が必要。重ね塗りはしにくい。)
水性ホビーカラー(GSIクレオス)
日本のキャラクターモデル塗装における定番。2019年からの大幅リニューアルで大きく改良されました。
- 特徴:ガンプラなどのインストの指定色と塗料の名称や色味がリンクしていることが多く、キャラクターモデラーにとっては最も色選びがしやすい。特定のMS用等の特色も色々出ている。
- 種別:溶剤系アクリル塗料
- 容量:10ml
- 価格:220円~
- 色数:約200色
- 公式サイト
- メリット: 2019年の大リニューアルによって、乾燥スピードと塗膜の強さが劇的に向上しました。一昔前の「いつまでもベタベタして乾かない」という弱点が見事に克服され、特に「ツヤありカラー」の光沢感が非常に美しく出るのが大きな強み。タミヤアクリルと同様に手に入りやすく、1本の値段も安い。色数の多さもメリットの一つ。
- デメリット: 性能が上がって筆伸びも良くなったとはいえ、「溶剤系」であることには変わりはない。何度も筆で撫でてグラデーションを作ろうとすると下地が溶け出してしまうリスクは健在。
- 筆塗り適正:◯(リニューアル版は格段に塗りやすくなったが、「サッと一筆で決める」という溶剤系特有の筆さばきが求められる)
アクリジョン(GSIクレオス)
国産の「エマルジョン系」代表。水性ホビーカラーの次世代版として開発された新塗料です。一時期やけに推されていましたが、最近はリニューアルされた水性ホビーカラーに人気を奪われ気味?
- 特徴: 溶剤をほとんど使っていないエマルジョン系なので、ほぼ無臭。
- 種別:エマルジョン系水性アクリル塗料
- 容量:10ml
- 価格:220円
- 色数:約100色
- 公式サイト
- メリット: 模型店や量販店でどこでも買えて安い。そしてエマルジョン系ならではの「乾いた後の塗膜の強さ」がトップクラスで、完全に乾けば上からラッカー塗料を塗っても溶けないほど頑丈。
- デメリット: 筆塗りモデラーにとって最大のネックが「乾燥が早すぎること」。パレットや筆の上でみるみる乾いてダマ(消しゴムのカスのような状態)になりやすく、筆塗りで綺麗に塗るには専用の遅乾剤(リターダー)を混ぜるなど、かなりクセを掴む必要がある。また、乾くと水では落ちなくなるので、筆洗いに専用のツールクリーナーが必要。
- 筆塗り適正:◯(慣れが必要)
ファレホ(ボークス/Acrylicos Vallejo)
スペイン生まれの世界中のモデラーに人気の高性能水性塗料。
- 特徴: 目薬のような「ドロッパーボトル」を採用しており、1滴ずつパレットに出せるため無駄がない。完全無臭。エアブラシ用、メカ物用、メタリック用等々、性質の違う塗料が数多く揃っている。添加剤等の塗料以外の商品も豊富。日本ではボークスが正規代理店の為、ボークス店舗・オンラインショップ以外では小さな模型店でしか手に入らない(大手販売店では基本扱い無し)。
- 種別:エマルジョン系水性アクリル塗料
- 容量: 17ml~
- 価格: 385円〜
- 色数: 約1000色以上(モデル、メカ、ゲームなど全シリーズ合計)
- 公式サイト(※国内代理店のボークスサイト)
- メリット: 完全に無臭でリビング塗装にも最適。筆跡が自然に消える「セルフレベリング機能」が極めて優秀で、グラデーション塗装がしやすい。海外製エマルジョン系水性アクリル塗料の中では価格が安い。ウォーターパレットと組み合わせることで真価を発揮する。圧倒的な色数、商品数も魅力。一度の塗装でコントラスト効果が生まれる時短塗料「エクスプレスカラー」、リアルな金属表現ができる「トゥルーメタリックメタル(TMM)」等、新製品開発にも余念なし。
- デメリット: 取扱店舗が限られる(主にボークス店舗や一部模型店、ネット通販)。Amazonにも公式ショップがあるが、商品が少ない(やっぱボークス公式オンラインショップで売りたいのかな)。塗膜がやや弱いため、食いつきを良くするプライマー(下地)が必須。1本の値段が高め(その代わり容量は多め)。塗料シリーズ、マテリアル、色数が多い為、どれを買ってよいのか迷う。ボークス店舗、オンラインショップでの塗料名(日本語)と、ボトルに書かれた塗料名(英語とスペイン語併記)が違うのでややこしい。
- 筆塗り適正: ◎(筆塗りモデラーにとっての最適解の一つ。調色や重ね塗り、グラデーションをするなら最強)
シタデルカラー(Games Workshop)
イギリスのボードゲーム会社が販売するミニチュアゲーム用塗料。筆塗りモデラーの間で革命を起こしたすごい塗料。
- 特徴:元々はミニチュアゲームのフィギュアや台座等を簡単かつ綺麗に塗る為の塗料。用途に合わせて「ベース」「レイヤー」「シェイド」など種類が細分化されており、システム化されているのが特徴。完全無臭。製品の改良も頻繁に行っている。
- 種別:エマルジョン系水性アクリル塗料
- 容量: 12ml(ベース、レイヤー等) / 18ml(コントラスト、シェイド等)
- 価格: 580円〜
- 色数: 約300色以上
- 公式サイト
- メリット: 隠蔽力(下地を透かさない力)が水性塗料の中で最強クラス。黒下地の上からでも黄色や白が数回で発色する。完全無臭で乾燥も早く、筆塗り初心者でも驚くほど綺麗に塗れる。海外製エマルジョン系水性アクリル塗料の中では一番入手しやすい。
- デメリット: 1本あたりの価格が高い(容量比でも高い。初期投資がかさむ)。独自のポット型容器のため、フタの裏に塗料が固まりやすく、パレットに出す時に少し手間がかかる。
- 筆塗り適正: ◎(隠蔽力の高さは本当に魔法のよう。単色ベタ塗りならこれ一択レベル)
アーミーペインター(The Army Painter)
デンマーク発のミニチュア用塗料。シタデルとファレホの良さを掛け合わせたような使い勝手で人気上昇中です。
- 特徴:ファレホと同じく使いやすいドロッパーボトルを採用。完全無臭。
- 種別:エマルジョン系水性アクリル塗料
- 容量: 18ml
- 価格: 約450円〜
- 色数: 約200色以上
- 公式サイト
- メリット: 1回塗るだけで勝手に影とハイライトができる「スピードペイント」や、バシャバシャ塗るだけでスミ入れとシャドウができる「クイックシェイド」など、独自の時短・特殊塗料が非常に優秀。シタデルより安価でドロッパーボトルなのも嬉しいポイント。
- デメリット: 値段が高め。ファレホやシタデルと比べると、日本国内での取扱店がまだ少ない。
- 筆塗り適正: ◎(特殊塗料を駆使した時短ペイントには最強)
AKインタラクティブ 第3世代アクリル(AK Interactive 3rd Gen)
スペイン発の塗料で、ここ数年で日本のモデラーの間でもシェアを伸ばしている最新の水性塗料です。
- 特徴: ドロッパーボトルのキャップ上部にくぼみがあり、そこに塗料を1滴垂らして色見本にできるという"ニクイ"工夫がされている。
- 種別:エマルジョン系水性アクリル塗料
- 容量: 17ml
- 価格: 約500円〜
- 色数: 約300色以上
- 公式サイト
- メリット: とにかく「強烈な隠蔽力」と「極上のつや消し感」が凄まじい。ファレホの使い勝手の良さをそのままに、シタデルに迫る隠蔽力を持たせたような高性能っぷりで、筆塗りモデラーから熱狂的な支持を集めている。
- デメリット: 値段が高め。ファレホやシタデルと比べると、日本国内での取扱店がまだ少ない。
- 筆塗り適正: ◎(最新世代だけあって、筆塗りのしやすさはトップクラス)
なぜ「ファレホ」を選んだのか?
国内メーカーの塗料の方が値段も安く欲しい時にいつでもすぐ手に入るので、出来ればそっちを使いたいのですが、筆塗りのしやすさという点においては海外メーカー製の塗料に軍配が上がります。
やはり環境や健康被害への規制が厳しく、ラッカー系塗料を売りにくい海外メーカーの方が、水性塗料に関しては性能が高いです。
その中でもAKインタラクティブの第3世代アクリルは高性能なのですが、まだ入手しにくいのでメインの塗料にするのは難しいところ。
そうなるとファレホかシタデルの2択になります。
シタデルの方が入手はしやすいのですが、1本の価格が高いので色数を揃えるには結構お金がかかる(今まで使っていた塗料のようには気軽に買えないお値段)。
自分の場合は割りと近くにボークスの店舗があるので、ファレホの入手しにくさはそこまで気にならない(ボークスのオンラインショップでも買える。送料が固定で800円かかるけど)。値段も比較的安く、色をそろえやすい。
そしてファレホの方が筆塗りでのグラデーションを始め、色々な塗り方がしやすいので筆塗りを楽しめる。
カラーバリエーションの豊富さ、色々な性質の塗料、塗装を補助する添加剤等が出ているのも面白いし、奥が深い。
という事で筆塗りにはファレホを選択することにしました。
そんなこんなで皆さまの水性塗料選びの参考になれば幸いです。
ではまた!


























































