先日、芦花公園の世田谷文学館で開催中の企画展『やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ』に行ってきました。
今回はこの展覧会の見どころや、実際に行ってみての感想をご紹介します。
「アンパンマン」の作者として有名なやなせさんの展覧会なので、「子供向けかな?」と思いきや、絵だけではなく詩や文章などの読み物も多く展示されていました。
むしろ小さいお子さんには少し難しいかもしれないくらい、大人がしっかり楽しめる内容でした。
■ 展覧会の基本情報
まずは展覧会の概要をまとめておきます。
お出かけの予定を立てる際のご参考にしてみてください。
- 展覧会名:やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ ※東京会場
- 会場:世田谷文学館 2階展示室
- 会期:2026年6月30日(火)~ 9月6日(日)
- 休館日:毎週月曜日
- 開館時間:10:00~18:00
- 観覧料:一般 1,500円、大学生・高校生 900円(※中学生以下は無料/※1階の宇野千代展も観覧可能)
- アクセス:京王線「芦花公園駅」徒歩5分/京王線「千歳烏山駅」徒歩13分
- 公式サイト:https://www.nhk-fdn.or.jp/yanasetakashi-ten/
- 会場公式サイト:https://setabun.or.jp/
■ 『やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ』ってどんな展覧会?
国民的キャラクター「アンパンマン」の生みの親としてお馴染みの、やなせたかしさん(1919~2013)初の大規模巡回展です。
2025年に熊本会場からスタートし、京都、鹿児島、山口、愛知、福岡で開催され、現在は東京の世田谷文学館で開催されています。
やなせさんは、昨年放送されたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」のモデルにもなっていますよね。
ドラマになるほど魅力的で紆余曲折の人生を歩んだやなせさんの半生や人柄、そして多様な創作活動をたっぷりと紹介しているのがこの展覧会です。
学生時代に美術を学んだやなせさんは、新聞社での編集・執筆・漫画などを経て、三越に転職。
グラフィックデザイナーとして働きながら、漫画家としても活動を始めました。
30代で漫画家として独立するも、40代では仕事が減少。しかしそこで腐らず、デザイナー、放送作家、舞台美術製作、作詞など、幅広い分野で才能を発揮します。
50代で絵本作家・詩人としての活動を本格化させ、雑誌の編集長(自ら表紙や編集も担当)を務める傍ら、初めて「あんぱんまん」を絵本として発表しました。
そして60代後半の1988年、ついに「アンパンマン」がテレビアニメ化されて大ヒット。
その後も後進の育成や美術館の開館、無償での仕事や資金提供などの慈善事業に尽力。
さらには歌手やミュージカル俳優としてデビューし、ご自身を「オイドル(老いドル)」と称して精力的に活動を続け、2013年に94歳で永眠されました。
このような多種多様なやなせさんの創作活動を、原画や実際の出版物、写真や映像、ご本人の発言やインタビュー記事とともに振り返ることができる、非常に中身の濃い展覧会となっています。
■ 展覧会の見どころと各コーナーの紹介
会場は以下の5つのメインコーナーとエピローグに分かれており、それぞれのテーマに沿った展示が楽しめます。
① やなせたかし大解剖
やなせさんの94年間の人生年表とともに、若い頃の作品が展示されています。
新聞社時代の文章や漫画、三越時代のデザインなど、貴重な資料が盛りだくさんです。
- 三越の包装紙や紙袋に描かれているアルファベットのロゴは、実はやなせさんのデザイン!
- 童謡「手のひらを太陽に」の作詞もやなせさんによるもので、自筆の歌詞やテーマ絵画も展示されています。
「手のひらを太陽に」は、漫画家時代に仕事がなく、デスクライトに手をかざしていた時に思いついたそうです。
苦境でも前向きなお人柄が伝わってきますね。
② 漫画 人とのつながり
漫画家時代の作品がメインのコーナーです。
漫画のサザエさんや、新聞の4コマ漫画のような軽いタッチの作品が多く展示されています。
特に、やなせさんが「パントマイム漫画」と名付けたセリフのない漫画作品は、絵だけで内容が伝わり、クスッと笑えて癒される名作揃いです。
③ 詩 うたうように生まれる
このコーナーを見ると、やなせさんが詩の活動にどれほど力を入れていたかがよく分かります。
1963年に自費出版で詩集を発行した後、サンリオの協力で雑誌「詩とメルヘン」を創刊し、なんと30年にもわたり編集長を務めました。
自身の詩を掲載するだけでなく、表紙のイラストも担当。
創刊号や最終号に寄せられた、やなせさんの熱く切実な思いが綴られた文章は必見です。やなせさんとサンリオの熱い信頼関係についての説明もありますのでぜひ見てみてください。
また、後進のイラストレーターを育成するために創刊したイラスト雑誌「イラストレ」や、子供向け雑誌「いちごえほん」の表紙イラストも展示されており、どの作品も目を奪われる美しさでした。
④ 絵本とやなせメルヘン
やなせさんのライフワークとも言える、絵本作品の原画が展示されています。
中でも「やさしいライオン」は、その可愛らしくて優しい絵柄とストーリーに、思わず涙が出そうになりました。
「子供向けだから」と決して妥協しない、本気の仕事ぶりが原画からビシビシと伝わってきます。本当に温かくて綺麗な絵ばかりです。
⑤ アンパンマンの誕生
最後はお待ちかねのアンパンマンコーナー。
やなせさんの晩年の作品でもあるので、最後の配置にも納得ですね。
ここに展示されているアンパンマンの絵画作品は、シンプルに「芸術」でした。
アンパンマンの原点となった作品や、主要キャラクターの登場秘話、やなせさん自身による解説は読み応え抜群です。40代以下の日本人(その親も含めたらもはや全世代かも)が、誰しも子供の頃に通ってきたアンパンマンの所以がわかるかもしれません。
- 「当初、大人には全く評価されなかったが、子供たちが評価してくれたおかげで大人が手のひらを返した」という、やなせさんの人間味あふれる恨み節(?)コメントも面白かったです。
- アンパンマンとジャムおじさん、バタ子さんとチーズは顔がほぼ一緒(ご本人談の豆知識)
- アニメの登場キャラクター数は2300体以上でギネス記録にも認定されています。
- やなせさんが実際に使っていた画材(ターナーのアクリルガッシュなど)も展示されていて、模型や絵を描く趣味がある方には興味深い内容です。
⑥ Epilogue 人生はよろこばせごっこ
最後はおまけ的なエピローグコーナー。
ステージやパーティーで観客を楽しませるやなせさんの映像が上映されており、周囲には実際のステージ衣装も展示されています。
アンパンマンやばいきんまんの中の人(戸田恵子さんや中尾隆聖さん/フリーザ様)とじゃれ合う姿がとても微笑ましかったです。
ここまで観ると、本展覧会のタイトル「人生はよろこばせごっこ」の意味が解かる気がしました。
■ 会場の様子とアクセス・所要時間
展覧会の内部は、入り口と出口付近以外は写真撮影が禁止されています。
ですので、会場の外観やエントランス周りの様子を写真でご紹介します。
アクセスについて
会場の世田谷文学館は、京王線の「芦花公園駅」が最寄りです。
各駅停車しか停まらない小さな駅で、周辺は閑静な住宅街といったおもむき。
新宿からは各駅列車でも約20分と意外とアクセス良好です。(ラッシュ時以外はほぼ確実に座れるのも嬉しいポイント)。渋谷からも25分前後で着けます。
芦花公園駅の南口を出て、駅前の通りを南へまっすぐ進みます(サミットストアなどがある方です)。
5分ほど歩くと、道路沿いの左側に展覧会の看板が見えてきます。
こちらが世田谷文学館の建物です。
エントランスもすっかり「やなせたかしモード」になっています。
入ってすぐのところにチケット売り場があります。
私が行ったのは8月16日(日)の14時頃でしたが、並ばずにスムーズに購入できました。
会場は2階の展示室になります。
アンパンマンとばいきんまんがお出迎え。
そして、やなせさんのお人形も。
会場入り口前の説明文。
ここから先が展示室です。
こちらは会場の案内図。
かなり入り組んでいて順路が分かりにくい構造になっていますが、これもあえての演出。
やなせさんの遊び心を体現しているかのようです。
1階には、やなせさんの等身大パネルと一緒に写真が撮れるフォトスポットもありました。
その他、ベビーカーを預けられるスペースや休憩スペース、カフェ、図書館等も館内にあります。
グッズ販売と混雑状況・所要時間
1階のグッズコーナーはかなり賑わっていました。
我が家では、妻がアンパンマンサブレや巾着などを購入。かわいいですね。
客層は本当に老若男女さまざまでした。
意外にも小さいお子さん連れはそれほど多くなく、女性客が多めな印象。
子供の頃にアンパンマンを見て育った、10代~40代くらいがメイン層かもしれません。
年配の方も意外と多かったです(NHKの朝ドラの影響?)。
所要時間は、休憩なしでじっくり見て約1時間半といったところです。
会場自体はそれほど広くありませんが(その割に展示数は豊富!)、歩き疲れるような広さではないので気楽に楽しめます。
最初のコーナー等、入り口付近の狭い箇所はそれなりに混雑していましたが、後半に行くにつれて人混みがばらけて観やすかったです。お盆の日曜日に行きましたが、全体的にそれほど混雑している感じではありませんでした。
ちなみに、今回のチケット(一般1,500円)で1階で開催されているコレクション展「宇野千代展」もそのまま観覧可能です。
やなせたかし展(2階)とはまた違った文学館らしい落ち着いた展示空間になっており、時間がある方はぜひ1階も立ち寄ってみるのをおすすめします(所要時間は+20分ほど見ておくとスムーズです)。
■ 感想・まとめ
セクション分けを見ても分かる通り、アンパンマンについての展示は全体の5分の1程度。
行く前は「アンパンマンメインの展覧会なのかな?」と思っていたのですが、いい意味で予想を裏切られました。
今まで詳しく知らなかったやなせさんの多彩な才能や、幅広い創作活動の歴史を知ることができ、非常に面白く新鮮な体験でした。
限られたスペースの中に素晴らしい展示物がギュッと詰め込まれており、特にメインの絵画作品は、どれも鮮やかで優しい画風で見入ってしまいます。特に色彩の鮮やかさと綺麗なグラデーションが個人的に目を奪われ、創作意欲を掻き立てられました。
作品の素晴らしさに加え、やなせさんの率直でウィットに富んだコメントがあちこちに散りばめられており、見終わった後はとても前向きで幸せな気持ちになれる展覧会でした。
「若い頃は不遇でも前向きに生き、歳をとってから大成功を収めた」というやなせさんの人生。
これからの人生に不安を感じている方も、やなせさんの足跡をたどることで、きっと元気をもらえるはずです。
まさに、大人にこそ深く刺さる展覧会だと思います。
東京(世田谷文学館)での開催は2026年9月6日(日)までとなっており、残りの会期もあとわずか。気になっている方はぜひ足を運んでみてください!
東京の後は、兵庫県の姫路文学館にて2026年9月19日(土)~11月23日(月・祝)の会期で開催予定です。
ではまた!








































































