Talk'n Blues -3ページ目

纏

彼は醜悪と言っていい容姿をしていた。
天性的に不治の疾患を抱えていた。
彼は自分を殺して生きていた。
目を合わさず
口を開かず
周りの会話を聞くだけ
求められなければ動かない。

そんな彼は他人から迫害された。
様々な誹謗嘲笑嫌悪を平均的なその身体に背負わされ続けた。
追い詰められた彼は死をも考えていた。
彼は自らが迫害される理由を探した。醜い容貌だけ。

彼は狂っていった。
美しいものを憎んだ。
全てのものを妬んだ。
そして
それらを壊せる力を求めた。
神が彼に与えたたった一つの才能。それは人体の破壊だった。それは異能と呼べるものだった。

彼は壊していった。
彼は壊れていった。

全てを憎み、恨み、壊した。
彼は今夜もその姿と同じように醜い嫉妬に身を焦がし狂い、壊す。

狂っていく。

今夜。

BGM:THE SKATLITES
『SHOT IN THE DARK』

怒

私の心は信用していた者からの裏切りで傷付いた。
君は自分自身で己の誇りを粉々に踏みにじった。

許してはいけない事がある。
許してはおけない事がある。

隠し事も嘘も私は許そう。
だけど、それでも許せはしない事が存在する。

隠し事は隠し通してくれ。
嘘は吐き通してくれ。

私が気付かぬように。
気付いてもソッとしておけるような隠し事や嘘にしてくれ。
君にその嘘をもたらした者は私の怒りを望んでいるのか。

君が、仮初めの幸せを維持する為に吐いた嘘は確実に君自身を蝕んでいる。
君の吐いた嘘・起こした行動は他者に対する尊敬が無いものだった。
どんなに自分が幸せになる為であっても、身近な他者への尊敬を忘れる事は許さない。


君がその事に気付くのはいつになるだろう。
明日か?
一年後か?
もう気付いているのか?

いずれにせよ手遅れだ。
せいぜい幸せに生きてくれ。
どうぞ、ご自由に。

さよなら。

BGM:SION
『最初の鳴き声が聞きたい』

書

黒く長い髪を振り乱しながら一字一句振り絞る。

頭の中では騒がしい鳥が鳴いて、痛みとなって表に立つ。
出ていけ
そう叫んでみても彼は鼻で笑ってまた騒ぎだす。
そんな痛む頭を抱えながらただひたすらに書く。
原稿用紙の升目一つ一つから出てきた針が眼を狙っている。早く升目を埋めなくちゃ。

レゲエが緩やかなリズムで私を机から引き剥がそうと躍起になっている。
隣では煙草とライターが肉体的依存でもって休憩を勧めてくる。
携帯電話は精神的解放の為に愛車で走ろうと誘っている。
本棚が圧倒的な魅力で私を呼んでいる。

皆しばらく黙っててくれ。
今やらなきゃいけない事だ。
しなきゃならないんだ。
原稿用紙を潰さなくちゃならないんだよ。
待っていてくれ。
もうすぐだ。

黒く長い髪を振り乱しながら一字一句振り絞る。

BGM:OSCAR PETERSON TRIO
『NIGHT TRAIN』